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東京都在住のオーディオマニアです。リビングオーディオです。狭いスペースを与えられてやっています。MPS-5,Marklevinson No32Lなどを愛用中。クラシックはほとんど聞かず、ポップス、ラッ…

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日記

ハイエンドケーブルとヘッドホンオーディオ:ポールの横顔

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2012年02月11日


思えば、
随分、いろいろなインターコネクトケーブルを通して
音楽を聴いてきたもんだ。
今、手元に残っているのは3組。
Jorma ORIGO XLR
Jorma PRIME RCA
Argento audio Flow Master Reference XLR(FMR)。
スゥェーデンとデンマークのケーブルだ。

Jorma ORIGOというケーブルは
価格を考えると最高にいいモノなのだが、
ハイエンドインターコネクトとしての
絶対音質という観点からは
やはりPrimeとFMRには及ばない。
この二人は全く異なるキャラクターを持つモノであり、
使い分けに上奉書屋個人は、
かなり悩まされてきた。
試行錯誤の末、
メインシステムの
SACDプレーヤーとプリアンプの間にPrime、
ヘッドホンシステムの
KLIMAX DSとヘッドホンアンプの間にFMR
という具合に今は落ち着いている。

落ち着くと音楽に没頭できるものだ。
昨夜、久しぶりにヘッドホンでLet it beを聞いた。

この、ビートルズの代表曲は
もう30年以上も前、
映画の主題歌で使われていたのを聞いたのが最初。
その当時、
いい曲だな、と思って、中学生の私が鼻歌で歌っていると、
母親が水色のカセットテープを買ってくれた。
東芝EMIのビートルズのベストアルバムである。
Let it beが特に好きだったので、
その夜は
テープを何度も巻き戻し、
このポールの曲だけを繰り返し聴いたのを思い出す。
Let it be. Let it be. Let it be. Let it be.
すべてなすがままに。
その真の意味は
最善をつくした後は神にまかせよ、ということなのだそうだが。

月日は流れ、
そのテープは擦り切れて聞けなくなってしまったが、
あの遠い夜から昨夜までの間、
何度も何度も、
様々な場所で聞いた。
Let it beを。
不景気をぼやくタクシーのラジオから、
昭和の喫茶店のスピーカーから、
テントに吊るしたレシーバーから、
祖父の店の厨房にかけてある油まみれのラジオから、
友達のオープンリールシステムから・・・・・。
数え切れないほどの多くの場面で
Let it beという言葉を、あのメロディを
ポールの声に乗せて聞いてきた。
しかし、
昨夜ほど、
Let it beを聞いて感心したことがなかった。
そんな気がする。

Klimax DSにハイレゾデータのありかを指してやり、
プレイボタンを押して、
歌が始まった、まさにその刹那。
イギリスにあったであろう、
私の知らぬはずの室内で、
淡々と歌いだす、
ポールの涼しげな横顔と口元が
リアルな映像として目蓋の奥に鮮やかに見えた。
当たり前の事ように。
遠い昔に自分が立ち会った光景のように。

この幻を見せた張本人は
新参のデンマークのXLRケーブルかも。
確かにそういう感もある。

Argento audio Flow Master Referenceを通した
Sennheiser HD800のサウンドは
人の一声の柔らかさが
真に絶妙であることからして、そう思う。
Audio noteのRCAケーブルにも、
それは感じたが、
FMRでは、その柔らかさにさらに磨きがかかる。
微妙な音の起伏が加わり、
また背景空間からの三次元的な浮き彫りが深くなって。
それでいてリアル過ぎない。
リアル過ぎないから一層リアルだ、なんて言うと
また、気持ちが悪い言い方だ、なんて怒られるかも。
でも、フェルメールの絵を眺めれば、そう言う他はないのだが。

あの時、キラリと見えた
平然と歌うポールの横顔が
美しい思い出のように今も脳裏を離れない。

本来、KLIMAX DSの持つ、
並外れた高SNと低歪みによる、
強力な高忠実度再生は容赦ないリアリティを生み出す。
それは、録音の仕掛けやマスターテープのキズをも暴く。
その結果、聴き手が、
音楽に抱く麗しい想像や思いを
正しい音という錦旗の下に蹴散らしてしまうことにもなる。
いいことばかりはありゃしない。

そんな時にも
アルジェントのFMRってヤツは
録音のいたらなさを優しく包むように
カバーしてくれるような気がする。
そして、音楽を聞く者に
奔放で生々しい空想を許してくれそうな気がする。

オーディオというものが、
いままで手が届きそうで届かなかった、
あの横顔に到るための
ヒントやきっかけであってほしい時はあるし。
自分の勝手な空想が生み出す単純なイメージに
ドキドキしながら音楽を聞き始めたいし。
そういうウキウキした気分ままで
聞き終わりたいのも人情だし。
FMRがそうさせてくれるというなら、
ルビコン川を渡るのもやぶさかではない。

ヘッドホンシステムの中に
ハイエンドケーブルを入れるということ。
ハイエンドケーブルを
一般にチープとされる
ヘッドホンオーディオにも用いることは
伝統的なオーディオの概念の中では
邪道と言う人もいるだろう。
なるほどそうかもしれない。
しかし、
邪道もやはり道である。
そこをあえて辿り、
まだ霞んで見えぬ頂上に向かおう。
それが今、私にできる唯一の道なのであれば。
これこそがLet it be?

次はYesterdayでも聞こうか。

追伸:
上奉書屋は2012年度より万策堂として独立しました。ご興味のある方はどうぞ。

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