上奉書屋
上奉書屋
東京都在住のオーディオマニアです。リビングオーディオです。狭いスペースを与えられてやっています。MPS-5,Marklevinson No32Lなどを愛用中。クラシックはほとんど聞かず、ポップス、ラッ…

マイルーム

マイルームは公開されていません

レビュー/コメント

カレンダー

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29      

お気に入り製品

お気に入り製品はありません

日記

天空と大地:Constellation audio VirgoとTAD C600の私的比較レビュー :その壱

このエントリーをはてなブックマークに追加
2012年02月12日

1.まえがき:

Virgoは黄道十二星宮のひとつである乙女座を意味する単語です。
この星座に生まれつく人は、
清純、潔癖で正邪に敏感な人になるそうですね。

オーディオ界で 既に名を成した技術者たちを集結し、
全く新たにオーディオ開発を始めた
カリフォルニアの新進、Constellation audio。
Constellationとは星座のことですが
宇宙にきらめく天体という
人の生など及びもつかぬ悠久の存在、
手の届かぬほどのあこがれを目指しての命名なのでしょうか。
そのセカンドベストライン、
Performanceシリーズのプリアンプの名前が
このVirgoです。
セカンドベストとはいえ、全ての側面において、
一般的なオーディオメーカーのフラッグシップラインに匹敵、
あるいは凌駕するクォリティを持つと思われます。
なにしろReference シリーズのプリアンプは800万円台ですから、
Performanceシリーズを狙うしかありません。
個人的に、このプリアンプには発表直後から期待が大きかった。
しかし、思いがけず試聴がかなったのは、ごく最近のことです。

ここ半年ほどの4回にわたる試聴で、
好印象を得たプリアンプがもう一つ。
日本産の超弩級アンプ、TAD C600です。

すでに多くの方による優れたレビューもあるわけで、
私が蛇足を付け加えることもなかろうと
レビューしないつもりで来ていました。
そこに、このVirgoの試聴が入ったのです。
試聴中、C600を思い出し、思わず苦笑してしまいました。
C600とVrirgoのデザインやサウンド、価格等が
本当に好対照だったもので。
素人目には基本的に全く同じ機能を持つものが
どうして、こうにも違っているように感じられるのか?
これもオーディオの多様性のひとつでしょう。

これらのアンプについて
聞いて聞いて、考えに考えているうち、
ふと浮かんだ言葉があります。
天空と大地。
Constellation audio Virgoのサウンドは天空。
TAD C600の音は大地に象徴されるようです。
これらの2つの全く異なるキャラクターを持つ
プリアンプの外観と音を比べながら、
冬の夜長、
筆の赴くまま、
あくまで私的なレビューを書き散らしていきます。
(長いので見出しをつけて項目に分けたうえ、
その壱、その弐として分割しました。
その壱はまえがきとVirgoについて、
その弐はC600についてと二機の比較検討、まとめです。
読みたいところだけ読んでください。)


2.Virgoの外観について

① 表面処理と曲線で織り成すハイコストパフォーマンスな筐体:

こんな筐体を与えられたオーディオ機器を初めて見ました。
横幅が小さく、奥行きも控えめで置きやすそうな筐体ですが、
ただの四角いものではなく、
立体的な曲線が多用された繊細な造形です。
文章では全てを言い表すことはできませんので、
実物を見て欲しいのですが、
とても複雑な形の筐体です。
正面からパッとみるかぎりネジの頭は一本も見えません。
つや消しの明るいグレーの仕上げで、
非常に高級感があり、周囲に溶け込むような質感です。
近寄って表面に触れると
細かな四角い模様が
フロント、トップパネルの全面に浮き彫りされています。
日本には、雪平鍋というものがありまして、
打ち出しの打痕が残る金属の地肌を愛でる
美しい道具ですが
あれを連想させませんか。
こういう表面仕上げを持つ
オーディオ機器は私の記憶にありませんし、
その美しさは文句無くナンバーワンです。
この模様はトップパネルからフロントパネルへ向けて、
なんと一部の隙も無く連続しています。
トップパネルとフロントパネルは
別々なアルミの板で出来ていますので、
これらの間で模様を連続させるには
極めて高い工作精度が要求されるはずです。
サイドパネルを見ると、
フロント、トップ、サイドの各々のパネルが
一点で接合する点が見えますが、
そこでは三枚の複雑な形状の板が
まるで寄木細工のようにピタリと一点で合っています。
このレベルの金属工作を欧米でやるとすれば、
莫大な工賃を請求されることになりましょう。
しかし、正規代理店を通した日本でのこのアンプの価格は
いまのところ230万です。(実売はさらに安い?)
米国製の、このクォリティのモノとしてはおそらく安いでしょう。
どこかに部品をアウトソーシングしているのでしょうか?

この筐体はアレックス ラスムッセンのデザインです。
エイプリルミュージックのEXIMUSのデザインも担当した
ケースデザインを得意とする著明なインダストリアルデザイナー。
雪平なべ様の表面の仕上げが彼らしさなんでしょうね。
(同名で自転車選手がおりますが、別人です)

② 見やすく操作しやすいインテリジェントなフロントパネル:

アンプの前面はというと、これは面白い。
切り立ったフロントパネルには中央部にボリュウム、左右バランス、
タッチディスプレイ等が集められた
インナーパネルと呼ぶべき
もう一つのパネルがわずかにせり出しており
この内部でほとんどの操作が済みます。
タッチディスプレイは
初期のマッキントッシュのモニターのようなビジュアルの
水色のモノクロディスプレイであり、
ボリュウム値に使われるフォントは
とても美しく、大きく、見やすいもの。
左右のバランス表示は視覚的に分かりやすく、バーで表示されています。
このディスプレイは操作後一分で消える等の設定も可能です。
ボタンの位置も面白い。
インナーパネルの下縁に透明なボタンが控えめについています。
かなり気をつけて見なければ、
そこにあることが分からないのですが、
ボタンが目立たないせいで
非常にすっきりしたデザインになっています。
右側のボリュウム、左側の左右バランスの
回し味は軽々として気持ちがいいのですが、
ちょっと軽く回りすぎるきらいもあります。
全体の操作感は洗練されたインテリジェンスを感じます。

③ 二重構造のバックパネル:

一方、バックパネルはなんと二重構造になっています。
端子の付いているパネルが左右別々に独立してあり、
周囲のパネルと、
スポンジに似た灰色のダンピング材でアイソレートされています。
私は常々、
多くのオーディオ機器は
筐体でカネをかけるべきところを間違っていると思ってきました。
そんな分厚いフロントパネルを使うくらいなら、
端子がいっぱいついているバックパネルにカネをかけるべきだ。
このアンプはそれを実践しています。

④ 回路基板はフローティング:

このアンプの内部の詳細は不明ですが、
フルバランス、デュアルモノ仕様のようでして、
回路基板は二階建てにしたうえ、
それらを機械的にフローティングして
セットしているとのこと。
バックパネルも回路基板も“浮かせて”、
振動の影響を徹底的に排除しようというのでしょう。

⑤見たことのない平らな4つ足:

足はゴムと思われる四足なのですが、
これも見たことのない形です。
電車の台車についているエアサスのような
平べったくつぶれたモチのような形をしています。
(まさか、中に空気が?)
音質的にどのような意味があるのか、私にはわかりませんが、
いつも、機器の足が気になる者としては興味津々ですね。

⑥ 電源は別筐体:

電源は本体と比べると
切削加工されたフロントパネル以外は
ややチープなアルミの板金加工による長細い別筐体です。
発熱はほとんどない模様。
電源供給はもちろん左右別のラインです。
足はごく普通のゴム足4つですから、
ここら辺は改良の余地があり、
もし、購入したら、
真っ先に自前のインシュレーターをかませるでしょう。
ジェフローランドのコーラスの電源を連想させますが、
あちらの方が、電源部の筐体は立派ですな。

⑦ やや精彩を欠くリモコン:

リモコンはアルミ製の大きなもので、
Constellationの削り出しのマークが
やや大きくはめ込まれています。
(こんなに大きなマークは必要ないと思う)
同社製プレーヤーを含めた
ほとんどの機器の操作がこれ一台で可能であるようですが、
操作の表示にはメリハリがないです。
つまり直感的にどう使ってよいやら、わかりにくい。
一つのリモコンで
多くの機器を集中管理するためにこうなるようですが、
ボリュウム調節ボタンが一目で、
どこにあるか分からないのはよろしくない。


3.Virgoの音質について:

① 試聴条件など:

CHPのD1、Viola Bravo、
JBL DD66000に結線して試聴しました。
どの機器のサウンドも親しんでいるつもりですが、
この組み合わせの中から
Virgoのサウンドを浮き彫りにできるのかどうか、
試聴前は自信がなかった。
ところが、いざ聞き出すと、
プリアンプのキャラクターとしか思えない部分が
次々と浮かび上がります。
思いのほか分かりやすい音でした。

② 天空を感じる音:

天から降ってくる柔らかな光のような、素敵な音です。
軽々と広がって降り注ぐ音のシャワーは
リスナーに部屋の壁を取り払ったような
オープンな三次元的な空間性を提示するもので、
特に高さ方向の音の伸び方は著しいため、
天井が吹き抜けたような心地のする曲もあります。
バッハのオルガン曲をリクエストすると、
大聖堂の天窓から差し込む神々しい光を仰ぎ見るようなイメージで
パイプオルガンの声が高らかに鳴り響いてゆきます。
それは、旧約聖書にある大洪水の後、
厚い雨雲の切れ目から太陽の光が漏れ、
鳩がオリーブの葉を嘴にはさんで箱舟に飛来したという、
あの救いと希望のシーンの情緒に通じるものがあります。
この曲の低域の重量感が、重苦しい重力や
解像度の高さを誇示する硬めの質感としては感じられず、
むしろ、
明るく密度ある空気感として伝わるのが新鮮です。

③ Virgoのエアー感:

さらに耳を澄ましましょう。
このアンプを通すと音楽は、その場の空気そのものであり、
スピーカーから発音されたものであるという気遣いが
ほとんどなくなっているのに気づきませんか?
この無理のない音離れの良さは
Bravoの力だけで達成されたものでないのは明らか。
Bravoのみの仕業なら、
もっとこちらに大きな音のつぶてを飛ばしてくるはずです。
染み出るような奥ゆかしさで、
いつのまにかリスナーを取り囲んでしまう、
空気のようなこの出音。
しかも暖かくも冷たくもないのです。
やはり並みのプリアンプではないようですね。

④ Virgoの音楽性:

聴感上のSN比が極端に高く、
ノイズらしいものが全く感じられない広大な音場に
充分に整理された音像がピタリと定位する様は
なかなか壮観ではありますが、
そのスケール感は威圧的ではありません。
むしろ親しげです。
また、極めて高い解像度であっても音像のエッジを立てず、
スムーズな濃淡のグラデーションで表現し、
色彩感の豊富さにも耳を奪うような強引さがない。
これこそが、一部の現代オーディオ機器のトレンドである
ハッタリのない知性的な高音質というものでしょう。

このプリアンプを加えると
音楽自体がめまぐるしく動いている局面でも、
音で満たされた室内が
その音の波しぶきでかき回されたり、
揺り動かされたりすることがなくなります。
フワリとした柔らかさに包まれながら
音の風景全体が定位を守り、ピタリと静止して見えます。
つまり荒れた音は一切出さないというわけです。
高精度に削り出されたコマを回したときのようです。
回っているのに、
まるで回っていないように静止して見えるでしょう。

超絶テクニックで弾きまくる
オスカーピーターソンのピアノを聴いても
彼が決して弾き過ぎていないように聞こえます。
どこかに節度や道徳、知性があり、
音感やタッチを微妙に補正するような印象です。
伴奏のベースが美しく正確にピッチカットする様にも、
非常に良くコントロールされた印象があり
過剰さは感じられません。
Virego独特の音楽性と呼べそうな、好ましい所作が
音の隅々に発揮されることは
さすが乙女座のアンプというべきでしょうか。
このアンプにはインテリジェンスの高さと
女性的なキャラクターを感じます。

このアンプのパンフレットを開くと驚くべき記述が目に入ります。
「オーディオ機器としての音楽性を語るときに、
信号の純粋性という切り口だけでは全く不十分です。(中略)
信号の純粋性を守りつつ、それに何かを付け加えて
音楽を聞ける音にすること。
充分な経験と豊かな感性が必要な仕事なのです。」
私はいろいろなオーディオ機器のパンフレットを見てきましたが
ここまではっきりと音楽性の重要さに言及したものは初めてです。

⑤ Virgoに期待しにくいこと:

このコントロールアンプにも
多くのプリアンプと同じく得手不得手はありそうです。
過激な主張を声高に叫ぶ音楽も、
録音に瑕疵のある曲も
Constellation流の明るさ、柔らかさ、
重力を感じさせない独自の浮遊感に包んだ、
節度ある音楽性で聞かせてしまいます。
これは逆に言えば、
激しく逸脱した情念を中心に据える音楽や
密度の濃い情熱を内に秘めた音楽を
強烈な低域のインパクトとともに存分に鳴らし、
リスナーに熱い感動を巻き起こす、
というような生生しい所作は
Virgoの行動パターンにはないのではないでしょうか。
マイルスのオンザコーナーのような
荒々しく濃厚なブラックミュージックよりも
カラヤンの整ったオーケストレーションの方が良く合っています。
(その弐に続く)

次回の日記→

←前回の日記

レスを書く

この記事はレスが許可されていません