日記
部屋とスピーカーとリスニングポイントの融合 - いなかのクラング邸(後編)
2020年08月12日
アナログ録音時代のクラシック音楽を、まるでホールで聴いているように響き豊かに心地よく味わいたいと言われるクラング邸です。2000枚はあると言われるレコードの中から次々に聴かせてもらいました。
「気になることがあったら言ってくださいね」と、オーディオでの音磨きにも熱心なご様子です。アンクをセンターに3セットに増やしたことでフロントのサウンドステージが整い、オイロダインが奏でる、当時の音楽を楽しんでいました。
ですが、気になる点がなくもなかったです。部屋に入ったときに響きが少ないと感じたことが、音楽を聴いているとあらためて思い起こされます。フロント側は響きを感じるのですが、リスナーより後方では響きが聞えなくなることです。ホールでの響きは全方向に感じます。前側だけに響きを感じるのは違和感がありました。
(写真はクラングさんのマイルームからお借りしたものです)
そんな感想を告げると、クラングさんから「後ろに置いてある古くからのアンクが吸音しているかもしれないです」とのことでした。「気になる点があるなら、皆がいるときにやってみますか?」とお話したところ、少し躊躇された後で、「やってみましょう!」との快諾です。ここから3人で、一旦後方にあるアンクを全て部屋の外に出してみました。
その後に聴きなおしてみると、響きが全身を包みます。Mさんもこの変化に感激しています。「気持ちよく聴けるようになりました」「加えて、空調が部屋全体に回るようになりました」「来たときから冷気が回らないことが気になっていました」とのことです。
少し浮かない顔をされていたのはクラングさんでした。「せっかく作ったのに全部外してしまうのは・・・」「少し入れてみましょう」と。
この話には皆で賛成し、先ずは背の低いものをひとつリスナーの後方に入れてみました。「これはいいですね」入り口の所にいた自分もよい変化を感じます。Mさんもこちらの方がいいと。クラングさんにも笑顔が戻ります。そして、「もうひとつ入れてみますか」と・・・
何パターンか試して、皆でああでもないこうでもないと論議は続きます。
そんな実験の末に、当日の結論として決めた仕様がリスナーの後方に背の低いアンクを2セット置く仕様です。同じ高さのアンクを3つ入れると、音が膨らみぼやけてきます。明瞭さと芳醇さのバランスが取れているのが後方2セット仕様だったと思います。
この状態では、部屋のどこで聴いても音がそれほど変わりません。オイロダインが苦手とすると言われていたヴァイオリンも気持ちよく鳴っています。Mさんもこんな棒のセットでこんなに音が変わるのかと驚いていました。
たったこれだけでこれほどに音が変わるのは、「部屋とスピーカーが調和しているからなんです」と音響マニアの二人で熱く語ってしまいました。
その後に、持込のCDをリッピングした音源を聴かせてもらいました。自作で部屋の音響を整えておられるとのことで、音響的なチェックCDばかりの持ち込みでした。
1)パッヘルベルのカノン
冒頭の通奏低音の沈み込み、続く第1から第3ヴァイオリンの輪唱の定位と分離に文句がありません。これが、1950年代のホーンスピーカーの音かと耳を疑うほどでした。
2)カフェ・パラディソ/スティーブ・アーキアーガ
この音源は、自分が左右のスピーカーの焦点合わせに使っているものです。音を聴きながらmm単位でスピーカーの位置を調整したときと同様に、音の焦点がピタリと合っています。これには思わず唸ってしまいました。
3)カリヨン/幸田浩子
お馴染みのチェック用の音源です。ソプラノと弦楽のソロと合奏も聞けて、チェックにはもってこいです。1曲目のアヴェ・マリアは再生装置での音の変化が大きく、定位がぶれやすいのですが、定位はピタリと決まっていてぶれません。特筆すべきは、コントラバスです。ピッツカートの定位、音量、音質など、拙宅ではこの音源で追い込んでいるのですが、どうしても一打ごとのブレが出てしまうのですが、クラング邸ではブレません。定在波対策の追い込みと、後面開放のよさの賜物だと思いました。素晴らしいです。
4)Timeless/FAKiE
この音源では、7曲目のFantasyのラストの響きの消え方を確認しています。響きが前から後ろに流れるように消えていくように聞えれば、響きの前後、左右のバランス調整が出来ているとしています。響きのバランスもまったく問題ありませんでした。
アナログ録音時代のクラシック音楽を、まるでホールで聴いているように響き豊かに心地よく味わいたいと言われるクラングさんのオーディオについて、納得の機器選びと地道に仕上げてこられた部屋とスピーカーの調整には唸らせるものがあります。実験を交えながらのクラング邸のサウンドと音響体験でしたが、部屋とスピーカーとリスニングポイントの融合について、あらためて学ばせていただいたオフ会でした。
レス一覧
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ヒジヤンさん おはようございます。
ほんとに我が家ながら、劇的な音の変化に驚きです。
ヒジヤンさんの調整完璧で凄いですね
自己流でやってここまで辿りつけたか?
なんて考えてますよ。
今古楽の楽しみ「倫理的、宗教の森」聴いてます。
いなかのクラング
by田舎のクラング at2020-08-12 06:38
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ヒジヤンさん
冷や冷やしながら 訪問日記を 読んでました。
お宅でクリニックを 実行されるんですもの?? まあ クラングさんが 納得してくれて ほっとしました。
しかし あの造作には 驚いたでしょう!! ヒジヤンさんも かなりのつわものですが クラングさんは 上を行ってますものね。
追い出された アンク類は どうなるんでしょう??
私は こじんまりと 重箱の隅をつつくように チューニングしております。
byX1おやじ at2020-08-12 15:46
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ヒジヤンさん
ヒジヤンさんを納得させる、かなり調音された音の様で
ますますクラングさん邸お伺いさせていただきたくなりました!
アンクの件はX1おやじさん、タルガさんに伺いましたが、
以外にも!吸音力が高いようで、響きも失われるそうですね。
私は逆に響きが豊かになると思っていたので、ビックリでした。
リスニングポイントの吸音はそこが大きかったのでしょうね。
byにゃんす at2020-08-12 22:02
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クラングさん、今日は家族サービスで返信が遅くなりました。
それにしても、スピーカーの追い込みは半端ではなかったです。あの追い込みあっての響きの調整ですね。やはりオーディオは土台からきっちりと固めていかないと、との思いを強く持ちました。
その音響もクラングさんの手にかかり、ますます磨きをかけられることだろうと思います。調整が進んだところで、また聴かせて下さい。
今回の訪問は、大変勉強になりました。ありがとうございます。
byヒジヤン at2020-08-12 23:56
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X1おやじさん、レスありがとうございます。
クラング邸の部屋作りは驚きました。家の中に追加する形でオーディオルームを仕立ててしまうとは、初めての体験です。そんなことも可能と言うことを伝えたくて、階段のところからの写真撮影でしたが、「ここで写真を撮る人は初めてです」と言われました。
そんな追加のオーディオルームですが、床や壁がしっかりしていて更に驚きです。ブーミングと言われていたので、軟いのかと思いきや、とてもしっかりしていました。ご自身でやられた室内の造作もすごいですね。
そして何より、スピーカーの追い込みに感服しました。創意工夫のオーディオは楽しいですね。
byヒジヤン at2020-08-13 00:04
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にゃんすさん、レスありがとうございます。
クラング邸にぜひ行ってみて下さい。にゃんすさんの求める方向とは違うと思いますが、地道に仕立てるオーディオの凄みを感じられると思います。
部屋の後方は、自作アンクが前側に見えていますが、その一段後ろ側に工作ブツが沢山あって、その影響が大きかったのだと思います。
調音と一言で言っても、簡単に出来るものではないので色々試してみて作り込んでいくしかないことだと思います。
byヒジヤン at2020-08-13 00:16
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ヒジヤンさん
強者クラング邸の調音まで施すとは、さすが楽友協会ホールの音響を参考にした拘りのヒジヤンさんの成せる技ですね!
拙宅の調音もお願いしたいところですが、スピーカー位置を固定できないハンデはどうにもなりません。
ウルトラCを夢想中ですが、ハードルは高そうです。
byvanilla at2020-08-13 00:19
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vanillaさん、おはようございます。
スピーカーから音が出た後に、リスナーに届けるまでの音の調整ですが、「スペース」「部屋」「スピーカー位置」「リスニングポイント」「ルームチューニング」など多岐に渡るので、やり甲斐があります。
現実的にはスペースや部屋が決まっている中で、スピーカー位置を模索するところから始めますが、スピーカー位置が固定できないのはつらいですね。
スピーカーが部屋と調和すると、(生音のように)どこで聴いてもそれほど変わらないサウンドになりますが、スピーカーを王様扱いしなくてはならないですね。
ウルトラCは建替えでしょうか?
byヒジヤン at2020-08-13 07:56
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