日記
スピーカーを育てる
2013年11月29日
新規に導入したT4のエージング中。
細かいセッティングの修正をし、エージングの進行を確かめつつ、いろいろなジャンルのソフトを聴いています。

セッティングについては、内振りゼロ(=平行法)、仰角ゼロ(=水平設置)ということで終息。その後は、修正の必要性を感じることもありませんし、まったくいじっていません。左右のバランスについても、ソフトによって左右の定位感がばらつくものの、結果的には前後位置をきっちりとそろえた完全平行になっています。
この状態で、いまのところは焦点があっていると思っています。ちょっとしたルームチューニング・グッズを導入してみたところ、響きがよくなり音場も拡がったという気がしています。とはいえ、まだまだ大きな課題はあります。とにかくお茶の間オーディオというのは現実との折り合いが難しいのです。
さて、エージングは着実に進行しているようで、特に、室内楽、なかでもピアノの音にはB&W805でも感じなかったような深い響きと鮮やかな余韻を感じてぞくっとする瞬間がしばしば訪れます。

ポゴレリチの「スカルラッティ:ソナタ集」は、とびきりの美音。
サロン空間を想わせるような凛とした空気感のなかで、ひとつひとつの打音が際立っていて明快。ピアノの周囲は漆黒の闇で、そこから明晰な音が浮かび上がり、その音のなかにも細やかな陰影を感じさせます。
スクリャービンの左手のための小品Op.9。
先日の河村尚子さんのリサイタルでアンコールとして弾かれ、とても印象深かった曲。

2002年に脳溢血で倒れ右半身に麻痺が残った舘野泉さんが左手のみで復活を遂げた最初のCD。

ETV特集「左手のピアニスト~もうひとつのピアノ・レッスン~」で紹介されたフランスの気鋭の若手マキシム・ゼッキーニのCD。
舘野さんのCDは、復帰最初のアルバムということで幾分たどたどしさが感じられますが、それだけにピアノを弾きたいという執念と、弾けるという喜びにあふれていて感動的。
ゼッキーニ盤は、さすがという演奏。「左手のために」という作品の魅力を堪能。楽器も、シュタイングレーバー&ゼーネというドイツの名器を使用していて、その音色も楽しめる。
左手のためのピアノ曲は、当然ながら左手の低域が命。その響きを長く持続させながら高音へと手を飛躍させる。再生上、低域の響きのバランスが豊かでないとその魅力が伝わらない。そこがオーディオとしての聴きどころになります。
中低域の充実ということでチェロや、弦楽合奏も魅力がアップできたのがうれしい。

ハインリッヒ・シフのラフマニノフのソナタ。
先日、池袋のディスクユ○オンで発見。高かったけれど思わず買ってしまいました。410番台の欧州オリジナル盤。これがいかにもフィリップスらしい特上の録音。シフの深々とした音色と情感が素晴らしい。ピアニストがエリザベート・レオンスカヤというのもうれしい。

ラ・ストラヴァガンツァ東京のヴィヴァルディ。
日本のインディーズには優秀録音が多い。特に弦楽合奏にはなかなかメジャーではかけられない手間ひまをかけた素晴らしい録音が少なくない。弦楽奏者の層が厚く、音がよくて貸し料が安価な小ホールがたくさんあるということもあるのではないでしょうか。
ひとつひとつの楽器の音が際立っていて、透明感のあるクリスプな残響もややドライだがとても鮮やかにとらえられている。合奏であっても個々の楽器の線が艶やか。T4の両ユニットのつながりがよく、しかも解像度と柔らかさが両立したソフトドームの実力が次第に目覚めてたという気がしてうれしい。

長岡京室内アンサンブルの「ブリテンとラテン」。
現代音楽の緻密で先鋭的な弦楽合奏は、ヴィヴァルディのようなバロックとは違った厳しさがあります。複雑な和声はしばしばとげとげしくなりがちですし、多用されるパルシブな音をたてる特殊奏法の効果は、スピーカーの解像度とスピードが試されます。T4が目ざめるにつれて音楽としての密度が上がってきました。
T4の熟成が進むに従って、ソフトの音量レベルにとても鋭敏に反応するようになってきました。ボリュームの設定がとても難しいという感覚があります。レベルの高い室内楽などは、いままでのボリューム位置でも音が大き過ぎて、逆にレベルの低いオーケストラなどはどんどんボリュームを上げないと音楽の躍動感が不足してしまいます。これはジャズなどの非クラシック系でも同じ。レーベルやアルバム毎のカッティングレベルによってボリュームをうまく合わせる必要があります。結果として、ふだん聴くボリュームの範囲がずいぶんと広くなっています。
今後の課題は、大編成の管弦楽曲。大音量でのユニットの可動領域がまだ狭いという感じがします。なかなか大音量で鳴らす機会がないし、ボリュームを上げるのも、まだまだ、おっかなびっくりです。大オーケストラ曲では少し音の鮮度が落ちて、低域でのもたつきを感じてしまいます。805のほうが弾けるような伸びやかさがあったのですが、何年も鳴らし込んだ成果だったのでしょうか。何とか大音量で鳴らせる時間を確保して、さらに伸び伸びと鳴るようにしつけたいものです。
レス一覧
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ベルウッドさん、T4順調に育っているようでこの先が楽しみです。
大編成オケものもそうですが、ピアノの左手音域の綺麗な響きを引き出すにも、大事なポイントですね。
by椀方 at2013-11-29 12:52
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ベルウッドさん こんにちはw
順調にエージングも進んでいるようでなによりですw
907Limitedのゆったりした低音と煌びやかな高音、805SDの性能に引っ張られて、最近オーケストラをよく聴くようになったのですが、始めは録音レベルが低いかと思って音量を上げていたら、クライマックスのところでビックリするくらい大音量になってしまい、慌ててボリュームを下げることがよくあります(汗
オーケストラでド迫力の演奏が終わった後の余韻が癖になってしまいました。
なんというか部屋全体が揺れているようなホールの残響音を聴くと、全身が痺れます(笑
ベルウッドさんのT4のエージングが更に進めば、きっと今まで見せていなかった潜在能力を存分に発揮してくれるはずです。
尻上がりに良くなっていくスピーカーを日々感じて行く喜びを噛み締める時期ですねw
byケニティー at2013-11-29 14:49
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椀方さん コメントありがとうございます。
>ピアノの左手音域の綺麗な響きを引き出す…
そうなんです。この左手のピアノ曲集は、左手の5本の指だけでいかに多くの音数にして両手と同じような豊かな響きと色彩の音楽にするかとういうことで、左低域の響きを長く響かせしかも右にジャンプして高域を鳴らし、絶妙なペダルのタイミングや微妙な踏み分けで演奏しています。ですからピアノ再生としても絶好のソフトですね。特に、左手1本でオーケストラ部分も弾き分けるラベルの「左手のためのピアノ協奏曲」の左手のための編曲版は聞きものですよ。
byベルウッド at2013-12-02 08:42
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ケニティーさん 亀レスで失礼いたしました。
ほんとうに尻上がりに良くなっていきます。その喜びもひとしおです。耳の慣れみたいなものもあるのかもしれませんが、エージングが進むとどんどんと音が静かになっていくのでますますボリュームを上げたくなります。
クライマックス部で、シンバルがパーンと鳴ってトランペットが咆哮する、その大音響がスカっと伸びやかに鳴ってくれるともう随喜の涙です。
サンスイのあの頃のアンプは、地に足がついた分厚い響きも加えてくれるのでB&Wにはいいですね。
byベルウッド at2013-12-02 08:48