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日記

マキシミリアン・ホルヌング(チェロ)& 河村尚子(ピアノ)

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2014年04月12日



翌朝、目が醒めても、まだ心に火照りのようなものが残るほど。

それほどに若々しい情熱とロマンに満ちたすばらしいデュオ・リサイタルだった。



冒頭のシューマンにやられた。ホルヌングのチェロの、真っ直ぐで引き締まった強い、情熱的な音色がいきなり胸に飛び込んできた。デュオに積極的な挑戦を続けてきた河村も、この日は、ソリストに合わせるというような遠慮がなく、思い切り相手に打ち込み、時に激しい駆け引きを仕掛ける。

特に三曲目のベートーヴェンが稀に見る名演だったと思う。

聴き始めは、ベートーヴェンにしては雄渾さに欠けると思ったのもつかの間、ふたりの躍動的な音楽にたちまちにして魅了された。中期の傑作と呼ばれるこの曲につきまといがちの英雄的イメージを払拭する新しいベートーヴェン。その造形の確かさを保ちながら実に叙情的で、チェロは伸びやかに歌い、ピアノはそのチェロと手に手を取ってともに自由を求めて一心に駆け抜けていく。

二曲目のファリャが、プログラムとしてはやや異質だった。以前、河村がヴァイオリニストの佐藤俊介と組んだときにアンコール・ピースとして効果を上げていた曲だが、チェロとピアノとが互いに火花を散らすはずがついに不発だった。

休憩後の後半、まず一曲目のウェーベルンも斬新。



河村は、前半一曲目のシューマンも、このウェーベルンも、昨年のトッパンホールでベテランのクレメンス・ハーゲンと共演していた。あの時は濃厚な後期ロマン派的「習作」のみだったが、今回は無調になってからの代表作・作品11も休みなくつなげて演奏し、一見対照的な作風の深層に共通して内在する、高度の集中と緊張によって極限にまで凝縮された情感が峻烈。河村とホルヌングが、この音楽への深い共感で強く響き合い、緊迫した渡り合いを聴かせた。

最後のブラームスもまた、新世代的ブラームス。

とかく「枯淡」「諦観」という型枠にはめて受け止められがちなブラームス。晩年の作品ほどそうだ。仄暗い第1番のソナタに較べると、むしろ明るく華やかに一途な愛を歌う第2番は、高い音楽性にもかかわらずブラームス愛好家から受ける愛情がどちらかといえば薄い。

そういう型枠を吹き飛ばすようなふたりの演奏が爽快だった。河村のブラームスは、以前、「間奏曲」を聴いたことがあるがとても若々しくリリカル。つい先日、彼女の実家のある西宮ではコンチェルトの第2番を披露したばかりと聞くが、河村はレパートリーとしてのブラームスを深化させつつあるのだと思う。そのリリカルなブラームス像は、やはり新しいもので、いかにも女性らしい。そういうブラームスへのアプローチはグリモーと共通するが、河村のはもっとずっとドイツ的。

一方のホルヌングのチェロは、いきなり雄壮とも言える情熱で開始するが、ヘ長調という弦楽器にとっては響きにくい調性のせいで喜びや明るさにもどこか内省的な翳りもともなう。さらには緩徐楽章では♯六つの嬰ヘ長調となって開放弦がひとつもないくすんだ階調となる。一方で、曲後半はしばしば最低弦のC音の開放弦の気迫に満ちた響きが現れる。そういう響きの織りなす綾がホルヌングはことに巧みで、かつ、楽器のただならぬ素性が伺われる。後で聞くと、ダヴィット・テクラーによる1700年代の名器で、彼は7年前に出会って一目惚れしたそうだ。

シューマンもブラームスもいずれも〈一途な愛〉だけれど、シューマンは「遠距離恋愛」型でひたすらラブレターを書き続ける。現代ならしきりにメールを送りつけるタイプか。一方のブラームスのほうは「叶わぬ恋」型。自分の恋心に気づいてくれない女性への純情に夜な夜なもだえ苦しむ。現代なら、年上の上司や人妻への密かな恋情に苦しむ不倫型なのだろうか。そういう内面が、ホルヌングと河村のデュオの若々しい華やかな技巧とともに、その豊かな響きの変化のなかに存分に託されていた。

マキシミリアン・ホルヌング。1986年アウグスブルク生まれとのことだからまだ二十代。大変な逸材と見た。この名前はきっと忘れまい。





マキシミリアン・ホルヌング(チェロ)& 河村尚子(ピアノ)
~バイエルン放響の元・首席奏者と人気ピアニスト、期待のデュオ誕生

2014年4月8日(火) 19:00
東京上野 東京文化会館小ホール

チェロ:マキシミリアン・ホルヌング
ピアノ:河村尚子

シューマン:アダージョとアレグロ 変イ長調 作品70
ファリャ:スペイン民謡組曲
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第3番 イ長調 作品69
ヴェーベルン:
 チェロとピアノのための2つの小品 (1899)
 チェロとピアノのための3つの小品 作品11
ブラームス:チェロ・ソナタ 第2番 ヘ長調 作品99

(アンコール)
フランク・ブリッジ:「セレナード」
ドビュッシー:「美しい夕べ」

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