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日記

東京春祭「ワルキューレ」

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2015年04月09日



東京・春・音楽祭の最大のクライマックスとなる演奏会形式での「ワーグナー・シリーズ」も今年で6回目。昨年から開始されたマレク・ヤノフスキを迎えての『指輪』も昨年を上回る絶好調の快進撃となった。



昨年も同じことを言ったが、歌手陣の充実振り、N響のレベルの高い熱演ぶりは相変わらずだが、今年はさらにそれを上回ったのは『指輪』のなかでもひときわ人気の高い演目である『ワルキューレ』だからだろうか。コンマスが昨年に引き続きライナー・キュッヒルというのもうれしいが、ジークリンデ役が当初の予定が変更されワルトラウト・マイヤーとなったのはベテランによる手堅い代役というよりは、むしろ東京の聴衆にとっては思わぬ天恵だった。



そのマイヤーが歳を感じさせない奇跡のように若々しい歌声を聞かせ、随所にベテランらしい味わい深い演技力を見せてくれた。不幸の境遇におずおずとしていた内気なジークリンデが生き別れた双子の兄に出会い、真実の愛に目ざめて高揚していく過程を演じて見事だったし、第三幕ではその最愛のジークムントを失い、愛不在の略奪婚に穢れた自身の身体を厭うという複雑な心情を実に感性豊かに歌い上げ、しかも、大オーケストラに声が負けない。



ジークムントのロバート・ディーン・スミスは直情と鬱屈がない交ぜになった不運の英雄を演じていて役になりきっていたし、ブリュンヒルデのキャサリン・フォスターは堂々たるヒロインぶり。フンディング役のシム・インスンは、際立って大きなスケールの声量でいかにも悪役らしい威圧感がある。ひときわ光彩を放ったのはフリッカ役のエリーザベト・クールマンで、優柔不断な心を射抜くような声には、『正妻』という正統性によって神々の世界の地軸を大きく揺るがしてしまうような存在感があった。それに対してエギルス・シリンスのヴォータン像は、やや単調なところがあるが、それを吹き飛ばすような力強さがあって立派。



N響は、昨年の「黄金」をしのぐ熱演。特に、8台のホルンを含む金管群は一段と精度向上と充実した響きを聴かせた。トロンボーンやバスチューバの織りなす厚みと、ホルンのppのソロなどはついに日本のオーケストラの壁を破ったかとの感さえあった。昨年に引き続いてキュッヒルの率いる弦楽群は、さらに高域の強靱なまでの熱い表現力と中低域の艶やかさと厚みにおいて各段の向上ぶりをみせた。反面、割りを喰ったのが昨年と同じ8台で壇に上がったコントラバスで、第一幕の前奏では初めから斉奏で望んだにもかかわらず迫力不足。この辺りは重量感よりも機動性を重んずるヤノフスキーなりの音響バランスがあるのかもしれない。

ふだんはなかなか通して聴くこともなく、細部が身についていない「指輪」ということもあって、今回は多少の予習をした。それも、一幕ずつ違った演奏をCDで聴いてみた。


第一幕は、カイルベルトのバイロイト音楽祭での歴史的録音。

これを聴いたこともあって、前奏曲のコントラバスに不足を感じてしまったのかも知れない。第一ヴァイオリンが右から聞こえるというバイロイトのピットから湧き上がる壮大な音楽には本当に心奪われる。ジークムントとジークリンデのふたりの愛が救済へと向かって昂揚していく様が見事。一方で、第一幕だけならこうしたロマンチシズムでよいが、続く物語の展開を考えればもっと現代性もほしい。ワルトラウト・マイヤーの歌唱と演技に感動したのもそこのところだった。


第二幕は、カラヤンとベルリン・フィルのスタジオ録音。

カラヤンのすみずみまで行き渡ったコントロールと瑞々しいまでの心理描写と緊迫した対話劇が印象深い。フリッカに言い負かされ自らの権威がほころびていくことに強い自責の念を持つヴォータン。強欲と虚栄に心を乱し高潔なる権力という自らの尊厳を乱した咎めがいよいよ顕在化してきたという「指輪」の物語の核心がその悔恨に満ちた長大な独白によく現れている。ヴォータンの権威が揺らぎその意志と行動との矛盾が顕わになっていく。ここでのヴォータンはむしろ痛々しいほど。対照的にフリッカという「正論」がヴォータンをますます追いつめることになり、神々の秩序崩壊のきっかけとなっていく。そのことがいかにもカラヤンらしい美学で語られている。これを事前に聴いていたことは、今回の公演の理解につながった。だから、私は、フリッカを演ずるエリーザベト・クールマンにノックアウトされたのだ。


第三幕は、ショルティとウィーン・フィル。後年の歴史的全曲初録音ではなく、フラグスタットを起用した第三幕だけのいわゆるパイロット版。

この楽劇の立体的構成を、当時、最先端技術だったステレオフォニックで見事にとらえている。デッカのカルショーは、『ワルキューレ』を先行させたいと構想していたのも、人気の高さばかりではなく新技術のステレオの効果が最も発揮しやすいと見抜いたからなのだろう。この1957年の録音のハイファイと立体効果は今の時代にも通用すると思う。特に、ワルキューレたちが四方八方から声を掛け合う様は見事。今回の公演では、ワルキューレを舞台下手に一列に並べただけだったのは残念。ばらばらに配置された時に歌いきるだけの実力が不足していたのかもしれない。公演では、ミスユニヴァース元日本代表の小川里美のゲルヒルデが背丈と歌唱ともに抜きんでいたが、彼女クラスをそろえることは難しいのだろう。


いささか泥縄の予習だったが、大いにこの楽劇への理解が深まった気がする。来年の「ジークフリート」が今から楽しみで仕方がない。






東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.6
『ニーベルングの指環』第1日《ワルキューレ》
2015年4月4日(土) 15:00
東京・上野 東京文化会館大ホール

指揮:マレク・ヤノフスキ
ジークムント:ロバート・ディーン・スミス
フンディング:シム・インスン
ヴォ―タン:エギルス・シリンス
ジークリンデ:ワルトラウト・マイヤー*
ブリュンヒルデ:キャサリン・フォスター
フリッカ:エリーザベト・クールマン
ヘルムヴィーゲ:佐藤路子
ゲルヒルデ:小川里美
オルトリンデ:藤谷佳奈枝
ヴァルトラウテ:秋本悠希
ジークルーネ:小林紗季子
ロスヴァイセ:山下未紗
グリムゲルデ:塩崎めぐみ
シュヴェルトライテ:金子美香
管弦楽:NHK交響楽団 (ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル)
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
映像:田尾下 哲

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  1. ベルウッドさん

    同じ演奏会の感想記が並ぶ、とても珍しいことではないでしょうか。

    マイヤーはローエングリンのオルトルートやパルジファルのクンドリーで名をはせましたが、2018年にそのオルトルートで引退するそうです。
    この日のクールマンを聴くと、彼女こそマイヤーの後継に相応しいと思います。

    bykesera at2015-04-10 18:23

  2. 昨年はFMで生中継されましたが今回の演奏会は生中継されなかったので、たくさんの日記を読んで羨ましいこ指をくわえるだけですね(苦笑)

    by椀方 at2015-04-10 23:27

  3. keseraさん ありがとうございます。

    例年、この演奏会はご一緒のようですね。来年はぜひ会場でお目にかかりご挨拶申し上げたいと思いますのでよろしくお願いします。

    byベルウッド at2015-04-12 10:32

  4. 椀方さん

    FMで生中継されていたのですね。

    今年は、他の演奏会ですがDSDで生配信されていたようです。私はPCオーディオをやらないので見送りましたが、来年はどのような発展があるのでしょう。本当は、公開ダウンロードなどの試みも期待したいところです。SONYが積極的に関与しているようですし。

    byベルウッド at2015-04-12 10:35

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