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日記

探求の旅 (ビル・エヴァンス・トリオのハイレゾ比較)

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2015年04月14日

これはいわば「ディープな赤羽交流会」の番外編。

いたちょうさんのお宅で聴かせていただいたビル・エヴァンス・トリオの「イスラエル」が「おや?」ということになって…。



スコット・ラファロのベースが甘いのは、録音のせいだろうということになったのですが、家に帰ってから確かめてみると、どうも、それだけではないような気がした…ということは前回の日記に書きました。いたちょうさんの音源は、実は、HDtrackからダウンロードした88kHz/24Bitのハイレゾなのです。私の方は、単純なCD再生。フォーマットや音源の違いもあるのかもしれないということになって、私もリッピングしていたのでファイルを交換して、お互いに聴き較べようということになりました。



同時に、アマゾンをチェックしてみるとハイブリッドSACD輸入盤が音がよいとのレビューがあったのでこのSACDも購入してみました。

ビル・エヴァンスというと「ワルツ・フォー・デビー」が傑作アルバムといわれ、特にオーディオファイルには一種のレファランスのような存在としてしばしば引用されるようです。ベースのスコット・ラファロ、ポール・モチアンのリズム・セクションと組んだトリオには、三者対等の対位法的な即興の絡みやラベルやドビュッシー的な和声の響き、意表をつく非和声的コード進行、斬新なインプロビゼーション、ピアノのペダルワークなどクラシック音楽の技法がふんだんに使われていて、それまでの場末のサロンに置かれたアップライトピアノで弾く黒人音楽とは一線を画した都会的な洗練と斬新な響きがあります。そのことは、「ワルツ・フォー・デビー」よりもこの「エクスプロレイションズ」のほうがより鮮明に現れているような気がします。例えば「イスラエル」では、ラファロがソロをとっている時に、エヴァンスがドビュッシー的な刹那的和声で即興の装飾を入れるところなど、その瞬間、ぞくぞくっと鳥肌が立ってしまいます。

さて、聴き較べてみた3つのバージョンを整理してみると以下の通りです。

 A)米国初版盤(OJCCD-037-2, 発売1987/01/01, Remaster - David Luke)
 B)HDtrack 24bit-88kHz-9351-2, Original Jazz Classics, 発売2011)
 C)米国Hybrid (Fantasy:025218733465, 発売:2004/08/17, Remaster - Joe Tarantino)


ただし、私のA)は数年前に新品で購入したもので、米国盤と思ったもののよく見るとフランス・プレスの再版もので、もちろんオリジナル盤ではありません。A)とB)は、HAP-Z1ESでのファイル再生、C)はSACDプレーヤーに切り換えての再生となります。



聴いてみると、けっこう、顕著な違いがあります。

確かに、弦が緩く胴が大きいと感じさせるラファロのベースはやや茫洋とふくらみ気味で、にらさんの例のリッキー・リー・ジョーンズ「POP☆POP☆」のチャーリー・ヘイデンと共通した再生しにくさがあります。けれども、A)→B)→C)といくに従って、音像の輪郭や弦を弾く音色と胴のふくらみがよりリアルになっていく気がします。それは裏返せば音のクセのようなもので、A)が、一番、それが強い。クセといっても、歪みとかフラットネスといった電気工学的なものというより音響工学的なクセで、クセのはまり方によっては印象がぐんと変わる。アナログ時代の機器ならばA)のような音にラファロの一歩引いた包みこむような暖かみや抒情、いったんソロを取ったときの力強い迫力…といったことを感じやすかったのかも知れません。



もっとも顕著な違いは音像定位で、A)→B)→C)といくに従って、定位がはっきりしてより外側へと分離していきます。ピアノが右、ベースが左、リズムセクションは左右に拡がりますがモチアン独特のブラシワークは左寄りの奥に聞こえます。B)とC)はほとんど同じような定位感なのですが、C)になるとピアノは右スピーカーの外側にまで拡がっていきます。逆にA)では、きちんと左右のスピーカー内に収まっていてある意味では納まりがよい。モチアンのキレの良さとか微妙なブラシワークとハイハットの奥行きや、上で述べたラファロのソロに挿入されるエヴァンスのピアノの高域和音の生々しさなどからすると、C)のリマスタリングの良さが画然としているように私には思えます。

ところが、いたちょうさんは、A)とB)の違いを逆に受け止められるようです。スピーカー内に収まっているのが正しく、左右に泣き別れしてスピーカーに貼り付いてしまうと感じるB)はちょっと違うのではないかというご意見のようです。HDtrackのハイフォーマットについ惹かれて飛びついてしまったとしきりに反省されるのです。



確かに、A)はCD初版であり、発売された87年はまだまだアナログLPが盛んに再生されていた時代ですから、その再生音質との整合性は十分に意識してリマスターされていたと思います。こういう音味は、例えばマッキンのC40とMC402でJBL4344を豪快にドライブすれば、いかにもそういう音楽として鳴ってくれるに違いありません。

私のようなクラシック派にとっては、あくまでも音がよいかどうかの判断であって、それが「やっぱりオリジナル盤は音がよい」という結論になることが多いとしても、あくまでも対等に比較しての良し悪しの判断です。ところが、ジャズ・ファンにとっては、ベテランの方であればあるほど、自分が昔聴いた音が基準であって、究極的にはオリジナル初版がベストということになります。それ以外のバージョンは、いかにそのオリジナル盤に近い音がするかどうかということで判断されるのかもしれません。むしろ、そのオリジナル盤の音のイメージに合わせてシステムの音味まで選んでいるというようなことがあるのではないでしょうか。

そのことが、アナログに対するデジタル否定、最新ハイエンドに対するビンテージ・システム偏愛…、果てはハイレゾは音楽性不在だといったハイフォーマット否定論にまで論理が飛躍してしまっているような気もします。

そんな感想を今回持ちましたが、果たして、LPの音はどういう音がしていたのでしょうか。A)が「正しい」のであってB)は音がよくないということなのかどうか。ジャズファンの方のご意見はいかがでしょうか。

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レス一覧

  1. ベルウッドさん

    たいへん興味深く読ませて頂きました。
    わたしも、アナログからの復刻版CDやSACDを聴いて、「結局は、リマスターを作ったエンジニアがどういう思いで復刻したかがもろに音に現れてしまうんだよな」という結論になりつつあります。そのエンジニアの思いやこだわりと聴き手の思いが一致していれば、それはフォーマットに関わらず「良盤」になり得るんですよね。受け手の側の体験や記憶も重要な要素になるというご指摘は、本当にその通りだと思います。フォーマット論や昨今のハイレゾ礼賛は不毛な議論が多すぎる気もします。マーキュリーを聴いていると、CDもまだ捨てたもんじゃないな、とも思います。

    byOrisuke at2015-04-14 12:43

  2. >CDもまだ捨てたもんじゃないな、

    全然捨てられませんね。私には、殆ど人が、まだCDの音を聞いていないとしか思えないのです。私の家では、SACDとCDの差は、どの様に音場を捉えるかであって、音の差とは思えません。殆どの場合は、CD盤の方が良いことが多いです。

    byGRF at2015-04-14 13:49

  3. ベルウッドさん、こんばんは。

    こういう比較は面白いですよね。私も大変興味がありますので、5月GWの拙宅でのオフ会に是非お持ちください。

    byHarubaru at2015-04-14 23:27

  4. orisukeさん レスありがとうございます


    >フォーマット論や昨今のハイレゾ礼賛は不毛な議論が多すぎる

    私が言いたかったのは、まさにこのことです。

    特に、アナログ音源の復刻は、デジタルリマスターの技術とエンジニアの「思い」が一段階加わるので、そちらのほうがフォーマットの違いよりもはるかに影響が大きいと思っています。

    byベルウッド at2015-04-15 09:34

  5. GRFさん

    >殆どの人が、まだCDの(本当の)音を聞いていないとしか思えない

    そうなんでしょうね。いろいろ自分の再生システムを詰めていくとCDの音は驚くほど向上していきます。

    どうしてもデジタル系は、並列差動処理とかクロック精度、アップコンバートなど、デジタルドメインでのスペック面ばかり追究しがちですが、ピックアップなどの機械的精度、サーボ回路、I/V変換などのアナログ技術のほうが音質には影響が大きいと感じています。それにデジタル系というのは、高周波技術なのでノイズとの闘いです。耳には感知できないノイズの質やレベルでも、いわゆる「音味」の世界に影響してきます。

    メーカー側にしても、オーディオファイル側にしても、まだまだやることは多いですね。でも、メーカーはコストがかかることはやりたがらないし、マニアは得てしてカネで解決しようとする。これではいつまでたっても報われません。

    byベルウッド at2015-04-15 09:50

  6. ストラさん

    「ホンモノ」には(もとの生音は別として)、①マザーマスター②(編集・マスタリング後の)スタジオマスター③オリジナル盤、と3段階あるような気がします。ジャズマニアはことさら③を大事にするようです。

    さて、もし仮に、①までさかのぼってデジタルリマスタリングしたところ、③はもちろん②よりも《よい音》のものが出来たとします。

    どうもクラシック派は、そういう《よい音》のリマスターCDを歓迎・評価するひとのほうが多いような気がしますが、ジャズ派は、《よい音》であっても③オリジナル盤との違いがあること自体を問題にするようで、「アナログオリジナル」の「サムシング」が、失われた、削られた、という風に、その「違い」をネガティブに受け止める傾向があるようだ…というのが、私の言いたかったことです。

    ところで、ストラさんのオリジナルアナログ盤では、ラファロのベースとか三人の定位とかはどういう風に聞こえますか?

    byベルウッド at2015-04-15 10:09

  7. ベルウッドさん

    >ピックアップなどの機械的精度、サーボ回路、I/V変換などのアナログ技術のほうが音質には影響が大きいと感じています。

    その通りですね。家のCD34改はその点を徹底した機械です。デジタル関係は、14ビットのままだし、勿論クロックもそのままです。そして一番大事なのは、ノイズバスターですね。アナログ的ではないと言う感覚は本能的な物です。自然と違う音を耳は、簡単に感知するのでしょう。何しろ本能ですから。

    スペック的には14bit/44.1KHzで充分なのです。

    byGRF at2015-04-15 10:19

  8. ベルウッドさん、こんにちは。

    「リマスタリングの違い」をここまで明確に体験できたのは、お恥ずかしながら、初めてです。

    それと、定位の好みもそれぞれですね。

    私もストラさんのオリジナルアナログ盤に興味深深です。
    何となくですが、中央やや右に1票です。

    byいたちょう at2015-04-16 12:25

  9. いたちょうさん

    オリジナルアナログ盤のピアノの定位が「中央やや右」ではないかという予想は当たっているのではないでしょうか。私もそう思うのです。

    実は、先日、池袋のジャズバーでこのCD(A)をかけていただきました。まさにマッキン+JBLシステムなんですが、ほんとうにジャズっぽく鳴りました。ラファロのベースは最初からもうブイブイ飛ばしてます。モチアンのシンバルもバシーンととても華やか。ほんとうに楽しい。その迫力にほとほと感心してしまいました。

    たぶん(A)がオリジナルアナログ盤に一番近いという点から見れば『正』なんでしょうね。でも、このことは主にリマスタリングの違いであって、フォーマットとは別の問題だと思うのです。

    一方で、再生システムによる雰囲気の違いの大きさにも驚かされます。リマスタリングやフォーマットの違いは、編集時のモニターシステムにどのように影響され、あるいはリスナー側の再生システムの違いをどの程度意識しているのでしょうか。興味は尽きません。

    byベルウッド at2015-04-17 09:03

  10. ベルウッドさん

    Jazz のCDを製作したとき、編集で、東京の有名な録音や、編集スタジオを訪れました。彼らはおおきなモニターSPで大音量で掛けています。やはり目的は瑕疵を見付けることで、良い音で聴いているのでは無いと感じました。

    マスターテープとそこから出来てきたレコーその音の差も大きいです。レコード愛好家としては、最初のレコードの音を基準にするしか無いと思います。音楽愛好家だと、収録したときの音(マスターテープ)が基本ですね。どちらを基準にするかは、その方の歴史と経験から個人的な基準ですね。

    byGRF at2015-04-17 09:20

  11. GRFさん

    ある録音エンジニアのかたから直接伺ったお話しですが、マスタリングの最終仕上げでは、小さなモニタースピーカーで比較的一般リスナーに近い音量で全体バランスをチェックすることが多いそうです。これに重宝するのがヤマハNS10Mです。業界ではこれをいささか自嘲気味に「ラジカセ」と俗称しています。そういえばあの白いコーンのミニモニターはいまだに録音スタジオでよく見かけますね。

    それを一般のリスナーが「名器」と思うのは、大いなる勘違いだと思うのです。NS10Mは私のスピーカー遍歴としては最も短命で、あのスピーカーへの不満がN805を購入したきっかけです。

    BBCモニターLS3/5aとか伝説の「ロクハン」(三菱P-610)ユニットも同じようなところがあって「皆さまの○○○」という風な小市民的中庸とわかりやすさがありますね。

    byベルウッド at2015-04-17 10:29

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