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日記

春の訪れと喜び  (紀尾井シンフォニエッタ東京 公開リハーサル)

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2015年04月23日



紀尾井シンフォニエッタ東京(KST)の公開リハーサルに行ってきました。

今週末の第99回定期公演後半に演奏されるシューベルトの「ザ・グレート」。ほぼ仕上げの段階といった感じで、休憩をはさんで、1楽章ずつ全4楽章すべてをひとつずつ確かめるように練習していきます。その様子をつぶさに見学できてとても面白かった。



指揮者のサッシャ・ゲッツェルさんは、もともとはウィーン・フィルのヴァイオリン奏者として活躍し、後に指揮者に転向したひと。プロフィールによるとズービン・メータ、リッカルド・ムーティ、小澤征爾らの薫陶を受けたとあります。すでにN響や神奈川フィルなどにも客演しているそうですが私は聴くのは初めてです。

流ちょうな英語を話し、楽員への指示ややりとりもすべて英語でした。

KSTの編成は、いつものように8型の2管編成。2本のホルンとトランペットに3本のトロンボーンが加わった編成は「未完成」と同じです。

まず第一楽章を通しでということで始めます。一聴して感じたことは、KSTの弦楽群がいつもに増して伸びのある引き締まった音で響いていること。やはりヴァイオリン出身の指揮者ということだからなのでしょうか。玉井菜採さんがコンマスをとった時のKSTの音が好きという私の個人的な好みもあるのかもしれません。あるいは、プログラム前半にソリストとして客演するチュマチェンコさんは、その玉井さんにとってもヴァイオリンの大先生なので、そういう影響もあるのかもしれません。

あのホルンのユニゾンで導入されるおだやかな序奏部が高揚して主部に入ったところでいきなりストップ。苦笑いしながらボーイングのアップ・ダウンを逆にするように要請します。これでずいぶんとアクセントとキレが変わります。この後も、アップボウ・ダウンボウの見直しや、弓を瞬時に止めるところ、逆に柔らかく抜くようにするところ、速い弓の引きを要求する箇所など、楽員に実際に弾かせてその効果を納得させがら細かに修正していきます。この辺りはさすがに、元ウィーン・フィルのヴァイオリン奏者です。

修正が終わったところで、主部から再開。いくつか強弱や表情記号の細かな指示をして、もう一度展開部からをくり返し。その後で、矢継ぎ早に小節番号をあげてその修正点を手際よくまとめて指示します。よくあれだけたくさん並べられて楽員も理解できるものだと感心してしまいます。最後に、コーダをくり返し練習していました。ここは第一楽章でもとても大事なところ。「スキーのようにではなく、スノーボードのように、だぁ~んと…」という指示に楽員から笑い声が起こりましたが、一気に高調してから豪快に終結する最終部の雰囲気がこれで一変してしまったのには感心してしまいました。

最後に、冒頭のホルンのユニゾンをおさらい。「とてもよいけれど…音量を半分にしてね」との指示で、やり直し。冒頭でのユニゾンはホルン奏者にとっても緊張の極み。ゲッツェルさんもこれ以上は追究しません。---余談ですが、ショルティのあの伝説的な「指輪」全曲盤の最初の録音となった『ラインの黄金』でも、冒頭「序奏」部は最後の最後にセッションが組まれ、一発だけのテイクだったそうです。ウィーン・フィルのホルン奏者たちでさえそれほどまでに神経質になるものなのです。

第二楽章では、まず最初のオーボエとクラリネットによる主旋律を裁ち切るようなffzの和音を確認。ここは本当に胸のすく音で鳴っていました。それから「ここはノン・マルカートで」とか弦楽器に限らず管楽器群も含めた全体的な強弱やアクセントを指示。

この楽章は、ベートーヴェン的な緩徐楽章でABABAという形になっていますが、最初にBに転換する部分で止めて、「ここは、天国から降りてきた訪問者が地上の春の美しさに感動するところ。美しい春の色のように…」と指示していました。ああ、なるほど、この楽章は地上の春の美しさなんだと思うと聴いていて胸が熱くなりました。

第三楽章を通してから、トリオの部分で「みんなに聞いてほしいことがある」と切り出したのは「ワルツの歴史」とその「拍節感」のことです。指揮台でワルツのステップを見せながら二歩目(二拍目)が少し重くなるそのメカニズムを説明していました。こういうところは身についたウィーンの感覚なのでしょう。第一楽章でも、しきりにアウフタクトのアクセントを直していましたが、こういうところが日本人の弱いところ。弦楽器だけで二度、三度とくり返してその感覚を確かめていましたが聴いていても音楽が活き活きとしてきます。これにうまく木管群がのってくれるといいのですが。

第四楽章では一気に通しでの演奏。1058小節目以降でくり返されるfzの和音が三度刻まれた後のトランペットとヴァイオリンの三連符の音型が交互に呼応する部分。ここをふたつのパートだけでくり返させてその効果の感触を確かめていました。ffの総奏のなかで距離的にも離れたパートでのやり取りなので演奏者にとっては気づきにくいところですが、聴き手にとっては大事なところです。作曲家というのは、こういう心の手触りの工夫を凝らしに凝らして曲を造り上げているのかと感心してしまいました。

完成度も高く、ゲッツェルさんの指示も手短で簡潔、とても密度の高いリハーサルという印象でした。ところが、今回は通常より1日短い3日間のリハーサルスケジュールだそうで、この日は二日目のプローベだったわけです。諸事情があったとはいえ、今回のプログラムは団員にとっても手慣れた楽曲ばかりということもあっての判断のようです。これに、本番当日のゲネラル・プローベがあり、二日目のマチネーはチューニング程度というのが、全体のスケジュールになります。初代の首席指揮者の尾高忠明氏は5日間のプローベを要求したそうで、ここまでやると中ダレを起こしてしまいピークを本番に持ってくるのに苦労した団員には不満がたまったとか。それにしても、レジデントオーケストラとして、実際の演奏会場でそのままリハーサルをくり返し音造りに集中できるというメリットはとても大きいと思います。



金曜日の公演本番がほんとうに楽しみになってきました。

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  1. いや〜!逃した魚は大きかったですね。リハーサル行きたかったな〜

    でも、ベルウッドさんの綿密なレポートで、雰囲気は解ってきました。これは本番も楽しみです。ボーイングを反対にする何てすごい指示ですね。先日のN響のワルキューレでもそういう指示が、キュッヘルさんから有ったのでしょうか?
    玉井さんがコンミスのときは期待が持てます。

    byGRF at2015-04-23 21:22

  2. 本番のレポートも希望します(笑)

    by椀方 at2015-04-24 08:31

  3. GRFさん

    ボーイングというのは、基本的にコンマスの専管事項なんですよね。

    とはいえ指揮者によってはかなり立ち入った指示もあるようです。今回はゲッツェルさんも指揮棒を持った手をアゴの下に添えて「う~ん」と苦笑していましたので、前日のリハとは矛盾する指示を出すことになった照れ隠しもあったのかもしれません。

    コンマスの玉井さんのかたわらにはパート譜とは別にもうひとつ譜面台があってその上にミニスコア(ダークブルーの表紙のベーレンライター版)が置いてあります。それを取り上げながら彼女自身も細かく表情記号などを確認していました。第一楽章でも、ゲッツェルさんの一連の指示が終わると、玉井さんが、チェロやヴィオラパートなどのボーイングと表情記号の細かい最終確認を日本語でに行っていました。この間、ゲッツェルさんも腕組みをしながら笑みを浮かべてじっとながめています。

    一見穏やかな風景ですが、指揮者とコンマスの緊張関係というものを感じました。コンマスの影響力というのは、単なるカリスマ性ではありませんね。

    byベルウッド at2015-04-24 09:12

  4. 椀方さん

    もしかして『天国』からのレポートになるかもしれません(笑)。

    byベルウッド at2015-04-24 09:18

  5. ベルウッドさん

    ボーイングの違いで、どの様に音が変化するのを聴くチャンスなど滅多にありません。その意味では、大変貴重な瞬間に立ち会ったと言えます。行きたかったなぁ〜!

    下に弓を引くときには、弓の太い部分から弾き始めますから、少しだけ弓を斜めにして、音量の変化を少なくするのですが、弓を上げるときには、逆に弾き終わりの音がしっかりと安定してきます。

    そのボーイングを決めるのが、コンサートマスターの専管事項だとすると、今回の指揮者の指示は、かなり異例のことなのでしょうね。

    紀尾井シンフォニエッタ東京は、ウィーンフィルのコンサートマスターとも、長い間一緒に演奏している、いわばウィーン調の演奏になれているオーケストラです。その意味でも、本番での演奏結果が楽しみです。

    ベルウッドさんは、金曜日に替えられたようですが、私は明日の午後の楽しみです。シューベルトの「グレート」は私の一番好きな交響曲です。私の感想も、天国からのレポートになれば良いのですが。

    byGRF at2015-04-24 18:23

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