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日記

バイロイト音楽祭「ローエングリン」(ドイツ音楽三昧 その4)

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2015年08月26日

怒濤の「ドイツ音楽三昧」もいよいよ前半のクライマックス、バイロイト初詣です。



この日はミュンヘンからの日帰り。バイロイトはチェコ国境に近いバイエルン辺境の地で幹線を外れていて、ミュンヘンからはニュールンベルクでローカル線に乗り換え片道3時間。日帰りといっても往復6時間、劇場がはねてからの深夜の復路はちょっと心配です。

ミュンヘンからは、早めに出発。この日に限っては大きな遅れもなくニュールンベルクでの乗り換えもスムーズ。日和にも恵まれ、森や牧場の広がる車窓はまさにローカル線の旅。バイロイトの小さな駅に着いて見渡すと、市街の中心とは反対の山の手遠くに見覚えのある建物がはっきりと認められます。下見もかねてさっそくそちらに向かいました。



小さな地方都市ですが、裕福な家屋敷が並ぶ郊外別荘地とか大学町といった風情の通りを徒歩で15分ほど。いよいよワーグナーの聖地、バイロイト祝祭劇場。建物のファサードを眺めて感無量でした。劇場そのものはさほど大きくはないのですが、付帯のレストランや裏手の練習場、舞台装置の倉庫や制作場などがたっぷりとした敷地に増設されていて、かなりの規模のコンプレックスを成しています。夏の1ヶ月余りの公演に備えて、一年中活動しているということのようで、とても贅沢な催しがバイロイト音楽祭なのです。

再び駅前にもどり、今度は逆方向の旧市街の中心へと向かいます。



バイロイト観光のひとつも目玉である、バイロイト辺境伯歌劇場。世界遺産にも登録されている18世紀バロックの美しい建築なのですが、あいにく改修工事中で中に入れません。せめて工事中の一部分でも見学できないかと思ったのですがとても残念でした。



次に向かったのはワーグナーの住居「ヴァンフリート館」(ワーグナー博物館)。あいにくこちらもプライベートな催しがあるとのことで中には入れません。実は、後で聞いて知ったのですが、この日は改修が終了し博物館のリオープンの記念式典が行われていたとのこと。現在のバイロイト音楽祭総監督のカタリーナが出席し、記念のスピーチでは幼少の思い出を語っていたそうです。



ということで、バイロイト観光としてはヴァンフリート館が隣接している辺境伯の王宮を見学したり、街を散策してから再び劇場へと向かいました。この頃には、多くの正装の老若男女で劇場周辺は華やかなにぎわいをみせていて、正面バルコニーから開演間近を告げるファンファーレが高らかに鳴らされいよいよ開演です。



劇場内は、ほとんど装飾らしい装飾のない質素な外観で、かなりきついスロープの客席は約2000席とのことですが、通路もなくぎっしりと詰まっているのでそれほどの空間容積を感じさせません。自分の席にたどり着くには指定の扉から入ってひたすら客席の間を縫うようにして横歩きするしかありません。この日は、メルケル首相もご来臨。ギリシャ問題の山を越えたばかりのメルケル首相の姿を生で見かけるのはただでさえびっくりでしたが、そのメルケルさんも私の目前の列を「ダンケシェ~ン」と言いながらすり抜けていくのですからなおびっくり。



楽劇上演の理想を求めたワーグナーにより、この劇場は様々な特異な意匠に満ちていますが、そのひとつが硬い椅子。詰め物のクッションがまったくありません。私たちはこの日のためにせっかく持参した座布団をミュンヘンに忘れてきてしまいましたが、お尻は木編みになっていて思いの外痛くはならず、そのかわりベンチと同じで背中はかなり痛い。この椅子はワーグナー自身の設計で、その意図は観客の居眠り防止だとか。けれども詰め物なしの木椅子は、音響的にもかなりの効果があると感じます。この辺りはオーディオルームの椅子選びの元祖とも言えるでしょう。



もうひとつの特徴は、オーケストラピット。150人規模の巨大編成のオーケストラを収めるピットは逆階段状になっていて舞台の下にまで入り込んでいて奈落まで落ちています。しかも、ピットには蓋がしてあって客席からはオーケストラが全く見えないようになっています。かつてフルトヴェングラーはこの覆いを取り外すことを主張して、ナチズムをめぐって政治的に対立を深めていたトスカニーニから「自己顕示欲のかたまり」との顰蹙を浴びます。



音響的にはよいはずもないと思っていたのですが、「ローエングリン」のあの精妙な前奏曲が鳴り出してみると意外なほどに素晴らしい音響です。しっとりと溶け合いシルキーな高音弦のハーモニーとともに、ひとつひとつの楽器の極細の線も明瞭に聞こえる。これは公演中一貫していて、分厚い総奏の迫力にもかかわらず歌手をマスクすることもないし、オーケストラの弱音やソロ楽器もはっきり聞こえます。事前の知識とはまるで違う素晴らしい音響に酔いしれました。この「蓋」の材質もかつては木の板だったと聞いていますが、今は透過性のあるファブリックに変えられているようです。オーケストラと歌手とのコミュニケーションの全てを指揮者が担うことになりそれだけ指揮者の負担が大きいとは思いますが、各所へのモニター設置もあって現代の指揮者の技量ならば問題はないのでしょう。むしろそれだけ指揮者のリーダーシップに全てが委ねられるわけで、一方ではここでは指揮者の力量が大いに問われるのだと思いました。

この「ローエングリン」は、第100回にあたる2011年に上演された記念すべき新演出で、私も初めてのBS生中継で観たもの。クラウス・フローリアン・フォークトの爆発的成功ともなり世界に広く名を知らしめた公演。

一方、このハンス・ノイエルフェルスの演出は、ネズミが群れなし、最後の世継ぎ王子ゴットフリートの登場などは特に不快感を催すようなもので物議をかもしました。けれども、こうやってじっくりと観てみると暗喩に満ちたメッセージ性の高い演出で、もしかしたらこれも実験的演出として後世語り継がれるようになるかもしれないと思いました。

確かにネズミは、鎧兜に身を固めた兵士たちよりも権力に迎合する無定見な群衆をよく示唆しているし、それが政治的に目ざめることで様々な「色」に分断し、より人間的な様相を帯びて個別の主張を持てば持つほどに権威は揺らぎ混乱していく。舞台となるブラバント公国(現代のベルギーとオランダ地域)は、あの「ドン・カルロ」でも登場するように歴史的には常に王権と封建地主との対立、宗教・民族分断で揺れていた地域。そういう歴史背景ばかりではなく、この歌劇の示唆するものは、かつてのファシズムの脅威や現代の民主主義の矛盾と混迷にも通ずるものがあります。そういうことを肌身に感じさせるのがノイエルフェルスの演出なのだと感じるのです。

今回はこのプロダクション最後の年にあたり、フォークトやエルザのアネッテ・ダッシュ、オルトルートのペトラ・ラングらの理想のキャスティングでした。何よりフォークトは、最高の「白鳥の騎士」として間違いなく歴史に名を残すでしょう。その「バイロイトのローエングリン」を直接体験できたことは至上の音楽経験でした。




さて、深夜のミュンヘンの帰路も、例によって「途中駅打ち切り」の憂き目に遭い、遠回りのローカル線を乗り継ぎ、ようやくホテルに戻ったのは翌日未明の2時過ぎでした。それでも、何とも言えない充実と幸福を感じたのはやはりバイロイト初体験の高揚感のせいだったです。

私たちの音楽三昧の旅、最終日に再びバイロイトを訪れたのでしたが…

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  1. バイロイトの椅子の意匠が居眠り防止とは思わす笑ってしまいますね。
    確かにワグナーの楽劇は長いですね。

    by椀方 at2015-08-26 19:51

  2. うわー、終演後にバイロイトからニュルンベルクまで戻るだけでもかったるそうなのに、ミュンヘンまでとはチャレンジャーですねえ(@_@)。ワタシにはとても無理です(^^ゞ。

    このプロダクションは去年観ることが出来たのですが、去年だけアネッテ・ダッシュが産休で別の人に交代していたのが、返す返すも残念でした。替わりに出たエディット・ハラーの方が実は声楽的には上手だと思うんですが、演劇として観ると、エルザのちょっと危ない女の子としての性格が出なくなっちゃうんですよね。このノイエンフェルツの演出って、他に今かかっている演出がしょうもないものばっかりだから(新しいトリスタンは案外と好評のようではあるものの)、それとの比較であまり悪く言われてないような気が(苦笑)。

    byGEA01171 at2015-08-27 20:42

  3. 椀方さん

    バイロイト本来の「指輪」四部作はあくまでもセット券なんです。さすがに四夜、しかも「神々の黄昏」は6時間ですからね。最高のぜいたくとも言えますが、それだけに大変です。分割して一部での観劇ということもバイロイトのオープン化と盛況のためにさらに検討してもよいような気がしますね。

    byベルウッド at2015-08-30 09:36

  4. GEA01171さん

    すでに去年バイロイトに行かれていたのですか。さすがですね。

    でもあまりよい印象ではなかったようで残念ですね。私などは、もう大感激ですっかり舞い上がってしまいました(笑)。

    バイロイトのチケットは、去年の公演から試験的にネットでの販売が始まって、それまで書面で応募し何年も待ち続けるということが解消されるようになったようですね。来年の公演ではネットによるチケット販売がさらに拡充され個別の席も選べるようになるようです。多くのワグネリアン、特に日本人にとっては夢のまた夢のようだったバイロイト詣でですが、ようやく開かれたシステムになってきましたから、ファンの方はどんどんと出かけてほしいです。

    ノイエフェルツのこの演出をよく言う批評や感想には、少なくとも私は出会ったことがありません(笑)。でも私にはじわじわと浸透してくるものがあります。初めてリアルに接してみて、最初TV生中継で観たときほどの違和感を感じなかったのが不思議です。

    byベルウッド at2015-08-30 09:50

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