ベルウッド
ベルウッド
クラシック音楽ファン:よい演奏会があると知れば遠征もいといません。オーディオシステムは、音楽そのものを楽しむのが本来というモットーのもとにコストパファーマンス重視で小ぶりな装置を目指します。正統オーデ…

マイルーム

メインシステム
メインシステム
持ち家(戸建) / リビング兼用 / オーディオルーム / 16畳~ / 防音なし / スクリーンなし / ~2ch
スピーカー:    PSD T4 Limited Special-ネットワークレス・マルチアンプ駆動 調音パネル:    Escart Ventoスクエア パワーアンプ:   金田式DCアンプ…
所有製品

レビュー/コメント

レビュー/コメントはありません

カレンダー

          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

最新のレス

お気に入り製品

お気に入り製品はありません

日記

ヴァイオリンの音色 (佐藤俊介ヴァイオリンリサイタル)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年01月29日

町田市成瀬のアートスペース・オー。その小さなサロンでのリサイタル。

小さなサロンで聴く音楽は、ちょっと特別の音楽体験です。間近な生音の持つ裸の音が聞こえてきて楽器の音がむき出しのままに迫ってきます。そういう楽器の性格や気質にかける演奏者のこだわりのようなものも直接伝わってきます。

今回は、モダンとヒストリカルの両刀遣いの佐藤俊介さんのリサイタルがここであるということで、佐藤さんに浅からぬ個人的な縁があるというパグ太郎さんと、もはやここの常連である横浜のvafanさんにもお声がけしました。とても楽しみにしていましたが、期待以上の面白さでした。

最初は、ベートーヴェンのとても珍しい曲。

初期の作品で、いかにも裕福な家庭の音楽という風の優美な音楽。楽しいけれど、はしゃぎすぎない。それが、ガット弦のしっとりとした音調によく合っています。

二曲目は、バッハの無伴奏ソナタ。期待に違わず、佐藤さんが手にしたのはバロック・ヴァイオリン。先に弾いたモダンとを両手に持って、その違いを事細かに説明してくれました。目と鼻の先に見ての比較は初めて。結局、ヴァイオリン本体はさほど大きな違いはないということ。一番の違いは「弓」なのだそうです。

そう言いながら、開演前からピアノの前にさりげなく置かれていたバロック・ボーを取り上げて弾き始めます。弓のしなりが逆方向というのは言われるまで気がつきませんでした。そのためにバロック・ボーは、弦に押し当てる力が優しく、弓先が細いこともあって音の持続が短いというのが最大の特徴。やや細身で、それだけ軽いこともあって、速く細かい動きが得意。

ともすれば荘重で厳粛なバッハというイメージが刷り込まれている私たちにとって、そういうオリジナルの楽器の演奏を聴くと、もっと軽やかな踊りのイメージに気がついて、はっとさせられます。ソナタでは、緩急の楽章交代とその対比がとても鮮やか。フーガでは細かい糸の織り目が顕微鏡でのぞくようにはっきりと見えて鮮烈でした。このサロンは残響はほとんどないので、かえってそういう触感が直接的に感じられます。

三曲目は、再びモダン・ヴァイオリンに持ち替えての演奏。生真面目な形式感覚のなかにも一曲目に通ずる優美さがあります。リースというのはベートーヴェンのお弟子さんなのだそうですから、なるほどです。

モダンと言っても、張られているのはガット弦。そのこともあってモダン楽器なのに優美で穏やかな感覚があるのでしょう。ピアノのスーアン・チャイさんも、実は、モダンとヒストリカルの両刀遣い。今回は、鈴木秀美さんのチェロとのトリオでの公演ツアーの合間を縫っての出演。ヴァイオリンはその公演の仕様のままなのだそうです。前日の公演では1916年製のベヒシュタインを使用したようですが、さすがに、ピアノは持ち込んで弾き分けることができないので、サロン備え付けのYAMAHAのCモデルでヴァイオリンとのバランスを取るのが大変そうです。

そういうこともあったのか、佐藤さんは後半は、弦をモダンに張り替えて弾いてみましょうと言い出しました。おそらく、状況をみてのアドリブなのでしょう。



休憩後の後半。当然、楽屋で弦を張り替え、入念にチューニングをしてから登場するのだと思っていたら、佐藤さんは、「せっかくだから、皆さんの前で張り替えてみることにしました」と、目の前で作業を始めました。

一番細く高い音のE弦は外して掲げて見せてくれます。テール側に金具をつけてスチール弦に張り替えます。スチールの場合は、この金具がないと止め板が痛んでしまうそうです。その金具のネジで最終的なチューニングをするとあっと言う間に出来上がりです。



そのまま、その場で弾き始めたのがシューマンの幻想曲集。もともとはクラリネットのために作曲されたものですが、音色がぐっと多彩で豊かになります。たった1本の弦を張り替えただけで音の色彩や輝きが大きく変わります。交換した弦だけではなく、そのほかのガット弦の音色も変わってしまうのは、弦同士の共鳴や胴を伝わる響きのせいでしょうか。そのことを目の当たりにして驚いてしまいました。

前半とは雰囲気が一変。ブラームスのソナタでは、ひそやかに秘めていた情愛がやがて愛の炎となって燃え上がるように、熱い熱い情念を歌い上げます。佐藤さんによると「地獄に堕ちるような」なブラームス。チャイさんのピアノも激しく熱を帯び、たった1本で変わるのは単に音量というだけではなく音楽そのものの表現さえも変えてしまうのだという驚きと興奮と感動で、思わず顔面が火照ってくるような思いさえしてきます。



演奏会が終わって、駅前の居酒屋で感想戦。いつもはオーディオ談義へと脱線しがちな懇親会ですが、リサイタルの興奮がまだ尾を引いていて、酒が進むにつれ、ますます、音楽談義ばかりに話が盛り上がりました。何がどうなってお互いの学生時代の話にまで発展したのかは定かではありませんが、そんなこんなで楽しい楽しいお酒でした。






アートスペース・オー 第229回コンサート
佐藤俊介 ヴァイオリンリサイタル

2020年1月25日(土) 16:00
東京・町田 アートスペース・オー

佐藤俊介(ヴァイオリン)
スーアン・チャイ(ピアノ)

ベートーヴェン:モーツァルトの『フィガロの結婚』の「伯爵様が踊るなら」
          の主題による12の変奏曲(WoO 40)
J.S. バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番ト短調BWV1001
                          (バロック・ヴァイオリン)
F.リース:ピアノとヴァイオリンの為のソナタ 作品38-3

R.シューマン:幻想曲集 作品73
ブラームス:ピアノとヴァイオリンの為のソナタ 第3番 作品108

次回の日記→

←前回の日記

レス一覧

  1. ベルウッドさん

    お早うございます。

    バロック、ガット弦のモダン、一部スティール弦のモダンの3パターンでの弾き分けを目の前で聴いたのは初めてで、本当に面白かったです。

    バッハ無伴奏が舞曲集だったということを分からせてくれる軽やかで歯切れの良い演奏が、バロックヴァイオリンの弓の構造と弦の素材とどう関係しているのか、やはり聴いてみて初めて実感できたと思いました。

    一方、ガット弦のモダン楽器と現代のピアノの組み合わせはは、やはりバランスをとるのが難しかった様ですね。後半、最高音のE線一本替えただけで、ヴァイオリンの強さ、輝かしさが「激変」しましたが、それ以上に低減の厚みまで増したこと、さらにはピアノの響き、特に低音の見通しまで良くなったのには、本当に驚かされました。これは正しいのかどうかわかりませんが、スパーツィター入れると低域が充実すると言われていることにも通じるなんて、柄にもないオーディオ的想像をしてしまいました。

    貴重な経験をさせていただきありがとうございました。

    byパグ太郎 at2020-01-29 08:46

  2. ベルウッドさん おはようございます。

    なんか勉強になる演奏会を体験されていいですね。
    いなかにいるとそういう情報も疎く一世代遅れなことを
    してます感が、
    やはり演奏の情報が頭に入ってますと聴く感動が倍増
    しますよね。

    オーディオを聞くのでなくの音楽を聴くべし、
    自問自答です。(笑)

    by田舎のクラング at2020-01-29 09:50

  3. パグ太郎さん

    バッハは旧約聖書でベートーヴェンは新約聖書だ…とか、私たちは宗教的、哲学的に過剰に刷り込まれているのでしょうね。

    ヒストリカル奏法が切り拓いてきたのは、そういうステレオタイプの束縛から解き放ち、音楽のもともと持っている根源にある魅力を引き出すことだったのでしょうね。今回は、そのことを目の当たりにした思いです。

    それにしても、E線一本をスチール弦に換えるだけで、あんなに全体の音が変わるとはほんとうに驚きました。G線ですらも情熱的ロマンの世界になっちゃいました。佐藤さんが、あんなに熱いブラームスを弾くとは、初体験だったし、これまた感動でした。

    超高域の帯域を伸ばし、位相を正確に再現することは、音色や実在感の表現のためにはとても重要ですね。特に室内楽のような世界では大事です。…でも、これはけっこう難しい(笑)。

    byベルウッド at2020-01-29 10:16

  4. いなかのクラングさん

    今の日本はほんとうに豊かになりました。満席でしたが、おそらく80席ほどだったと思います。こんなに間近な距離で、こういう希有な体験をさせてもらうなんてシアワセでした。

    町田市は私のところからは東京をまるまる横断することになるのでけっこう遠くて大変です。でも、時間をかけて出かけるだけの価値がありました。

    かつて栃木市でも、蔵の町音楽祭というのがあって、そこで、鈴木雅明さんのチェンバロ演奏を間近に聴くという貴重な体験をさせてもらいました。人数が少ないので、鈴木さんの機転でステージ上に折りたたみ椅子で臨時の席を作り、全員が同じステージで鈴木さんを取り囲むように聴かせてもらったのです。私は、これで俄然、チェンバロの音の鬼になってしまいました(笑)。

    都会の大ホールよりも、地方の小さな演奏会のほうがかえって貴重な体験が出来るようです。

    演奏者も聴き手との距離が縮まるので音楽的に充実するということも聞きました。若いころのポリーニは10年ぐらいドサ回りをしていたそうですし、ハープの吉野直子さんも楽器をバンに積んで自分で運転して、ヨーロッパの町から町へとツアーをしていたことを楽しそうに話してくれました。

    byベルウッド at2020-01-29 10:29

  5. ベルウッドさん、こんばんは。

    先日は、お誘いいただき、ありがとうございました。中国からの帰国してすぐのリサイタルを出張中から楽しみにしていました。

    バロックヴァイオリンが意外にモダンのそれと違いがないこと、初めて知りました。ピアノとチェンバロくらい違うのかと思っていたので・・・(汗)。弓の違いだっったのですね。佐藤さんみずからの弦張替えもそうでしたが、毎度、何が起こるわからない楽しみがあります。

    演奏された曲はバッハ以外は馴染みが無かったのですが、感想戦含めて、出張疲れを癒す週末となりました。

    by横浜のvafan at2020-01-29 22:09

  6. 横浜のvafanさん

    中国出張の帰国直後でお疲れではなかったでしょうか。もうちょっと帰国が遅ければ、大変だったかもしれません。災難(サイナン)だった…では済まされなかったかも(こんなダジャレ、ニッキーさんでもわからないでしょうね-笑)。

    冗談はさておき、弓の違いの効果もとてもナットクでしたが、1本のスチール弦への効果で、4本の弦のすべての音色が違ったことには驚きました。

    いつも以上に、このサロンコンサートの面目躍如でした。

    また、ご一緒しましょう。

    byベルウッド at2020-01-31 00:04

レスを書く

レスを書くにはログインする必要があります
ログインする