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ブリテン「夏の夜の夢」 (新国立劇場) 

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2020年10月11日

8ヶ月ぶりの再開となった新国立劇場のオペラ公演。

コロナ禍のためにシーズンチケットは、いったん、すべてキャンセル。再開となって改めてこの9月に再販売となりました。イベントの収容率制限緩和で100%まで収容が可能となり、追加販売がされたので、前後左右を空けることもなくなりました。ただし、最前列3列は感染防止で空けてあります。この日の入りは、両端の席はほとんど空席で、印象としては7割程度でしょうか



「夏の夜の夢」は、もちろん、シェークスピアの原作。

アテネ近郊の森に足を踏み入れた恋人たち。結婚式で祝いの劇を練習しようと集まった職人たち。それはちょうど妖精たちが集う夏至の夜のこと。しかも、妖精の王オーベロンと女王タイターニアは夫婦げんかの真っ最中。そういう人間界と妖精界が入り乱れてのドタバタを演じる。もちろん、それを、ドジなのかわざとなのか、さんざんに引っかき回すのがオーベロンの手下のパック。

第一幕は、夜の闇を思わせるような低弦の精妙な響きに満ちた音楽で始まります。それが打楽器やハープ、金管など、多彩な音色で変転していくのは、妖精の王と女王、恋人たちや職人、妖精の群れ…などが入り乱れて物語が展開することを要約している。

第二幕は、和声の巧妙な仕掛けの音楽。和音の調性融和と不協和音の不調和と混乱が交錯するのは、まさにこの物語のクライマックス。そこにはブリテンの精緻極まりない技巧が潜んでいます。特に幕の終わりの「子守歌」では、何とも言えない心地よい揺らぎと浮遊感に包まれますが、ここは12音音列技法が巧妙の調性のカーテンのなかに隠されている。移行していく三和音の4つのグループは、すべて音高が違っていて12音すべてが使われているという。それぞれの和声はそれぞれに精妙な響きで、それが音列として移行していくことに浮揚するような静謐さと安逸感を覚えるというマジック。

第三幕は、同じ精妙な響きであっても高域中心のハーモニー。メンデルスゾーンの序曲の始まりを思わせるような精霊たちが飛び交う森の闇にほのかに夜明けの兆しがさしてくるかのよう。ドタバタの混沌が、他愛もない職人たちの劇から、人間らしい日々の営みと調和が回復してくるかのように大団円を迎えていきます。

オール日本人キャスト。



オーベロンの藤木はもともと予定されていたオリジナルキャストのひとり。日本人カウンターテナーの第一人者。さすがの美声を聴かせてくれた。



パックの河野鉄平は、長身のバスで見事な歌唱と演技でした。



ひときわ印象的だったのはヘレナを演じた大隅智佳子で、彼女が登場したとたんに、このオペラの多様多彩なハチャメチャの魅力で一気に舞台が活気を増しました。

その他、不測の事態が生んだとはいえ、メイン演目でのオール日本人キャストは、多くの日本人歌手のベテランや新人たちの才能のレビューの観があります。いまや日本の歌手陣はこれほどまでに層の厚みを増しているということの証しにもなったのです。

一方で、藤木の滑り出しはやや物足りないところもありました。中盤まで、妖精の『王』を軽いカウンターテナーが歌う違和感がどうしても拭えなかったのです。カウンターテナーを起用し、その手下で軽薄なおっちょこちょいぶりを発揮するはずのパックがどこか暗冥なバスが歌う。そういう配役のブリテンの意図がどうもわかりにくかったのです。



また、少年合唱団も歌唱面では健闘していましたが、演技とのバランスなどいまひとつとの不足感を覚えました。やはり、コロナ禍での制約下、少なからずトレーニング不足があったのではないでしょうか。

このオペラ初体験だったのでよくわかりませんが、もし、オリジナルキャストのままだったとしたら、それぞれのキャラクターがどのようにバランスしたのでしょうか。例えば藤木のカウンターテナーによるオベロン王には、もっと軽いコロラトゥーラだったらよかったのではないかとか。LBGTの元祖のようなブリテンが社会の固定観念への挑戦を目指したともとれなくはないこのオペラの演出の意図が、大幅なキャストの変更のなかで、果たして実現できていたのかどうかとの思いが残ったことは否めませんでした。

一方でピット内は、弦楽五部6-4-4-3-2の小編成のオーケストラですが、それだけに精妙で個人技にあふれる好演でブリテンの魅力が満開。特に黒木岩寿、菅原政彦のふたりのコントラバスが素晴らしい。代役だった飯森範親の指揮はブリテンの技巧への理解が冴えていて超一級のサウンド。

ブリテンの世界は、晴れ晴れとした華やかさとは違うが、まずは再開を喜びたいと思います。
 
 
 
 
 
 
 
 
新国立劇場
ベンジャミン・ブリテン『夏の夜の夢』
2020年10月6日 14:00
東京・初台 新国立劇場 オペラハウス
(1階7列12番)

出演 
オーベロン :藤木大地
タイターニア :平井香織
パック :河野鉄平
シーシアス :大塚博章
ヒポリタ :小林由佳
ライサンダー :村上公太
ディミートリアス :近藤圭
ハーミア :但馬由香
ヘレナ :大隅智佳子
ボトム :高橋正尚
クインス :妻屋秀和
フルート : 岸浪愛学
スナッグ: 志村文彦
スナウト: 青地英幸
スターヴリング: 吉川健一

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
児童合唱: TOKYO FM少年合唱団

指揮:飯森範親
演出:ムーヴメント:レア・ハウスマン(デイヴィッド・マクヴィカーの演出に基づく)
美術・衣裳:レイ・スミス
照明:ベン・ピッカースギル
演出助手:ロレンツォ・ネンチーニ

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