ベルウッド
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日記

踊らない舞踏 (宇田川貞夫 ヴィオラ・ダ・ガンバ リサイタル)

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2020年11月12日

新宿・初台の東京オペラシティの片隅にとても小さなコンサートスペースがあります。その近江楽堂に久しぶりに出かけてみました。

音のよいことで気に入っているレーベルWAONからCDがリリースされる、その記念特別演奏会。WAONは古楽器による古楽のアルバムが多いのですが、このリサイタルもヴィオラ・ダ・ガンバの無伴奏ソロによるバッハ。



近江楽堂は、平土間の小さな空間で120席ほどで満席。しばらくは60席に制限してのイベント開催でした。その後、その制約は緩和されましたが、この日も見たところは50席ほどが間隔を空けて配置されていました。

満席でも、演奏者とはごく近い距離で、音量の小さな古楽器やギター独奏などの演奏には最適の空間となっています。ここでヴィオラ・ダ・ガンバの独奏を聴けるのは貴重な機会だと思い足を運んでみたのです。

曲は、あのバッハの無伴奏チェロ組曲。

もともとチェロとヴィオラ・ダ・ガンバは違う楽器です。

「ガンバ」というのはサッカーチームの名前にもある通り「脚」という意味。両脚で挟んで演奏する楽器を意味します。チェロは、同じように両脚で挟んで演奏しますが、腕に抱えるヴァイオリン属の楽器で調弦も弓の持ち方も違います。同じヴァイオリン属でもコントラバスだけはヴィオラ・ダ・ガンバ属(ヴィオール)の名残りをとどめています。弓の持ち方(ジャーマン式)や5弦だったりというのはその名残りです。コントラバスの外形が、ヴァイオリンなどと違って《なで肩》のものが多いのもその先祖に由来します。




会場に入ると、楽器が飾ってありました。

見るとふつうのヴィオラ・ダ・ガンバとは違っていて、むしろ、ヴァイオリン属のチェロに近い。


(参考)左:チェロ、右:ヴィオラ・ダ・ガンバ

肩は《なで肩》ではなくて丸い形ですし、響孔もはっきりした "f" 字をしています。ペグ(糸巻き)先端も人頭などのレリーフではなく普通に渦巻き状です。クレジットによれば製作はAndrea Castagneriという18世紀中頃にパリで活躍したイタリア・トリノ出身のヴァイオリン製作者によるもの。この時代にはヴィオラ・ダ・ガンバはほとんど衰退してしまっていたのでヴァイオリン製作者が片手間で製作したものなのでしょうか。



演奏スタイルも、両脚で挟んで固定するのではなく、楽器本体に短いエンドピンがあって、それを両脚の間に置いた少し高めの台の上に立てて支えて演奏していました。

聴き始めると、とても胴の響きが豊かで長いことにはっとさせられました。

とても優雅で緩やか。そういう胴の長い響きや重音の豊かな和音がとても心地よい。反面、原曲本来のチェロのような艶やかさや沈み込む深みのある低音、そして何よりも運動能力に不足します。ルソーは「ヴァイオリンは人を活気づけ、ヴィオルは人の心を落ち着かせる」と言ったそうですが、まさにその通りの音がします。

そのせいか、とても音楽が単調に感じられて少々退屈します。

組曲第5番は、第一弦をA音からG音に下げて調弦するよう指定された「不調弦(スコルダトゥーラ)の組曲」。この日のヴィオラ・ダ・ガンバはそうした変則調弦ではなかったように思います。この日は、第5番も第3番も、奏者によって原譜面より一音上げて演奏されましたが、これはチェロとヴィオラ・ダ・ガンバとの調弦の違いから来るのでしょう。調弦音高が、現代標準(A=442Hz)よりほぼ1音低いので差し引きゼロというところでしょうか。それでも響きは緩やかでぼんやりしています。

曲と曲とのコントラストもあいまいです。曲間の間合いを取らずに次の曲に行ったり、長いプレリュードなどでは曲想の変わり目でひと呼吸置いたりするので区別がつきにくく、「今、どこ?」状態に陥ることしばしばでした。そのせいで、よけいに冗長に感じられてしまったのです。

チェロ組曲第3番では、プレリュード冒頭、音階を駆け下りて、いきなり第4弦の開放弦による最低音C2を鳴らして、誇らしげにこの曲がハ長調であることを宣言するのですが、そういう見栄を切るような演劇性に欠けていて、この日の演奏ではすべてがぼんやりと流れてしまいます。

16分音符がぎっしりと詰まったドイツ風のアルマンドや、駆け抜けるようなクーラント、軽やかで跳躍的なガヴォットなど、もともと「組曲」とは様々な舞踏のリズムを組み合わせた曲集なのです。そういうリズムのコントラストと起伏があって、そのことで様々に気持ちが揺すぶられ、深い瞑想と覚醒とのあいだを往還する。そういう心の旅路こそがバッハの組曲なのですが、ヴィオラ・ダ・ガンバからは、そういうことが喚起されません。それがとても残念に思えました。


余談ですが、この録音はDSD128録音/192kHz 24bit編集のハイフォーマット音源。ところがリリースされるのはCDのみでハイレゾは販売されないとのことです。早くからハイレゾフォーマットでの供給に熱心に取り組んできたWAONですが、もはや新譜ではハイレゾを提供しないのでしょうか。そのことにも、何ともいえない物足りない思いがつのりました。






宇田川貞夫 ヴィオラ・ダ・ガンバ リサイタル
新CDリリース記念特別演奏会 語り合うバッハ Ⅲ
2020年11月8日(日) 14:00~
東京・初台 東京オペラシティ 近江楽堂

バッハ:
 無伴奏ヴィオラ・ダ・ガンバのための組曲
   ニ短調 BWV1011 (無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調 宇田川貞夫編曲)

 無伴奏ヴィオラ・ダ・ガンバのための組曲
   ニ長調 BWV1009 (無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 宇田川貞夫編曲)
   
 ヴィオラ・ダ・ガンバ:Andrea Castagneri 1720年頃 パリ
 弓:Nicolas Pierre Tourte? 1760年頃 パリ
 A=392Hz, Vallotti & Young

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  1.  ベルウッドさん、今晩は。

    何時も何時も素晴らしい演奏会で音楽を鑑賞され羨ましい限りです。

     私も演奏会で音楽を鑑賞したいのですが、機会が有りません。

     当日の演奏会会場はビオラガンバ演奏に最適な空間だったのしょうね。
     
     バッハの無伴奏チェロソナタをビオラダガンバデで演奏するというのも興味深いですね。

     そもそもバッハは本作品をチェロでの演奏を目的な作曲したのでしょうかね。

     バッハはケーテン時代にヴィオラガンバとオブリガートチェンバロのための3つのソナタを作曲していますが、果たしてチェロとビオラダガンバを使い分けますかね。

     当日の演奏で宇田川氏編曲となっていますが、そもそもがビオラガンガでの演奏ではなかったのでしょうかね。

     ところで写真を拝見して4番目の写真ですが、小さな足置き台的な物が写っています。丁度何かを置いたであろう位置の塗装が剥げています。もしかしてビオラガンバをこの台に置かれて演奏されたのでしょうか。?

     そもそも共鳴胴を膝ではさめば音振動が制約を受けると思っています。台に置き膝で挟まれなければ音は遥かに伸び伸びと出るのではないかと。?

     少々飲んでいます。戯言と読み流して下さい。

     yhh

     

     

    byyhh at2020-11-13 20:37

  2.  ベルウッドさん、すみません。本文をよく読んでいませんでした。

     yhh

    byyhh at2020-11-13 20:49

  3. ベルウッドさん おはようございます。

    無伴奏のヴィオールでのソナタですか
    またまたマニアっぽい演奏会にでかけられましたね。
    でも一度は体験したいような気がします。

    近江楽堂、こじんまりした良い響きに満たされてそうなホール
    ですね、知りませんでした。

    演奏なんとなく想像できますが、バロック時代の楽器ですよね
    300年前とかヴァイオリンが無い時代方が聴いたらどう評価されますかね(笑)、

    by田舎のクラング at2020-11-14 08:39

  4. yhhさん

    酔眼でお読みになったのに、私がくどくどと言っているポイントをことごとくひと言で突いておられるのがお見事ですね。もしかして、おとぼけのフリでしょうか(笑)。


    ちなみに今日ではヴィオラで演奏されることの多い、バッハのヴィオラダガンバソナタ(BWV1027-1029)は、無伴奏チェロ組曲とともにケーテンの宮廷音楽家だったクリスティアン・フェルディナント・アーベルのために書かれたと言われています。アーベルは、ヴィオラ・ダ・ガンバとチェロの奏者を兼ねていた、いわば両刀遣いだったのです。

    バッハの時代は、ぎりぎり、ヴァイオリン族とガンバ族が両立していて場と雰囲気に合わせて曲が弾き分けられていたのでしょうね。ちょうど宮内庁の楽師が、雅楽も洋楽も演奏できるのと同じようなものです。

    byベルウッド at2020-11-15 08:49

  5. いなかのクラングさん

    ヴィオラ・ダ・ガンバをヴァイオリンやチェロの先祖とするのは誤解です。両者はそれぞれに違った先祖を持ち、18世紀半ばまでは併存していました。ガンバ族は、宮廷など上流階級の優雅な音楽として、それに対して、ヴァイオリン族はもっと下層の庶民的な音楽の楽器として、両者は棲み分けていたそうです。

    最近、新型コロナウィルスでも話題になったネアンデルタール人みたいな話しですね。実際に、ヴァイオリン族のはずのコントラバスにはガンバ族のヴィオールのDNAが残っています。アメリカのジャズミュージシャンの使用するベースは、逆に丸い肩のものが多いのは、ヴィオールがアメリカのニューイングランドに伝えられ独自に発達した「チャーチ・バス(教会のバス)」の子孫だからではないかと思っています。


    近江楽堂はとてもユニークで素晴らしい音響のホールです。

    これで私も再び目覚めてしまい、この後もいくつか出かけてみようと思っているところです。機会があればクラングさんも一度お出かけください。この親密な響きは、クラングさんのお好みぴったりだと思います。

    byベルウッド at2020-11-15 09:04

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