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日記

「運命」とハ長調ミサ (バッハ・コレギウム・ジャパン演奏会)

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2020年12月04日



鈴木雅明率いるバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)が創設されたのが1990年。以来、その名の通りバッハ演奏の第一人者として世界的に高い評価を得てきましたが、近年は古典派にもレパートリーを広げています。鈴木自身も、モダンオーケストラとの共演を活発化し、紀尾井ホール管のストラヴィンスキーや、今秋のN響でのシューベルトなども話題となっています。



ベートーヴェン生誕250年の今年は、BCJ創立30周年と重なり、毎年恒例の彩の国さいたま芸術劇場公演は、満を持しての初のオール・ベートーヴェン・プログラムでした。

コンサートマスターの寺神戸亮、第二ヴァイオリン若松夏美、オルガン鈴木優人以下、BCJというか、日本の古楽奏者のそうそうたるメンバーが勢ぞろいし、ホルンにはN響の福川伸陽も加わっています。もちろん、すべてピリオド楽器を手にしての演奏で、舞台ににょっきりとそそり立つコントラファゴットがひときわ目をひきます。古典的な二管編成で小さめ弦五部ですが、600余席のこのシューボックスホールにとっては十分で、音が回り込み充満するトゥッティは大迫力。



こういうピリオドスタイルの「運命」でこそ味わえる音楽は、初演当時の衝撃はかくありなんというもの。運命の動機の休止符に裂帛の気合いがこもります。「だだだだーん」ではなくて、「ンっぱぱぱーん」。その「ン」の一瞬の呼吸と「パパパ」のたたき込むような切り込みに気迫がこもります。

案の定、冒頭の提示で繰り返される「運命動機」では、第二ヴァイオリンがわずかにフライング。決して無キズの演奏ではありません。それでも遮二無二突き進む。ただでさえコントロールの難しいピリオド楽器でリスクを怖れず、躊躇なく思い切り気合いを入れていく。次第にアンサンブルがそろってきて、一丸と突き進むフルオーケストラの気迫に、聴いていても興奮と高揚感が抑えられません。まさに、裏拍(うらはく)の狂宴。煽りに煽られ、一気にコーダに突き進み、最後の和音が鳴り終わると思わず大きなため息を吐き出してしまいました。

こうして聴いてみると、「困苦から勝利へ」といったありきたりのドラマではなくて、緻密にプログラムされたリズムのアジテーションこそが、この交響曲の本質だという風に確信されてきます。裏拍の動機が、第二楽章では弱起のアンダンテの旋律に沈潜し、第三楽章は、突然、鳴り出すホルンの「パパパーン」には、もう裏拍も弱起も無い。「運命」動機が巧妙に3拍子の舞曲に変形する。そこから、アタッカで突入する終楽章は壮大な行進曲。コントラファゴットや3本のトロンボーンも加わった大行進は、もはや誰も止められない巨大な重量を運んでいく。まさに、快演でした。



後半は、ハ長調のミサ曲。

ここでも、ベートーヴェンのハ調、というわけです。しかも、このミサ曲は、第5と第6の両交響曲が初演された演奏会でその抜粋が演奏されたという密接な因縁を持つ、中期の「傑作の森」が生み出した作品のひとつ。

もともとは、エステルハージ公の毎年恒例のミサのために委嘱を受けて作曲されたもの。過去にはハイドンなども委嘱を受けており、作曲家にとっては名誉ある委嘱ですが、この曲は、公から「噴飯もの」と酷評され献呈を拒否されるといういわばスキャンダルとなったのだとか。

確かに、「ミサ曲」というものからイメージするものとはちょっと違う一風変わった宗教曲。1曲目の「キリエ」こそ穏やかな曲だけれども、2曲目の「グローリア」はいかにもハ長調といった晴れやかさだし、3曲目「クレド」、4曲目「サンクトゥス」と次第にシンフォニックな音楽の起伏が厚みを増し、最後の「アニュス・デイ」では平和を希求する祝典的な大らかな安息日のような解放感があります。

四人の独唱と四部合唱の厚みも素晴らしい。群唱の深みのあるハーモニーの中から、ひとりひとりの声も生き生きと聞こえてくるのは、シューボックスの中ホールならではのこと。ステージは、小さめの管弦楽と独唱者、合唱で埋め尽くされている。それでも、感染症対策で、当初に計画されていたメンバーの全員がステージに上ることは適わなかったそうです。プログラムには、一声部8人の名前がクレジットされていますが、なるほどステージ上は各6人になっています。

この公演の実現には、関係者の大変なご苦労があったのだろうと思います。それだけに、ステージ上のベートーヴェンにはただならぬ気迫と熱気、そして、演奏を終えた後の晴れ晴れとした安堵感のようなものも感じました。

現下の尋常ならざる状況なのですが、ベートーヴェンのハ長調に、強くあれと鼓舞され、快活な日常であるようにと慰撫され、何とか平安に満ちた新たな春を目指そうというような気持ちを持ちました。






ベートーヴェン「運命」とハ長調ミサ曲
バッハ・コレギウム・ジャパン
20209年11月295日(日) 15:00
さいたま 与野本町 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
(1階 H列7番)

バッハ・コレギウム・ジャパン(合唱・管弦楽)
鈴木雅明(指揮)

中江早希(ソプラノ)
布施奈緒子(アルト)
櫻田 亮(テノール)
加耒 徹(バス)

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