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日記

「オペラ 楽園紀行」(小宮正安著)読了

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2021年01月07日

オペラと「楽園」とは、切っても切れない関係にあるという。そういう切り口から近代オペラを考えようという一書。

「楽園」(Arcadia)というのは、古代ギリシアに源を発する牧人の楽園のことで、キリスト教のエデンの園にも通じ合う理想の楽土のこと。古代ギリシア文化復興を掲げたルネサンス期から、領主たちはその所有地にそのイメージに合わせた趣向を凝らした庭園を造り威勢を競った。オペラは、そこで上演された歌舞、音曲をつけたギリシア神話劇が源流であり、そのイメージは脈々と近代オペラにまで流れているという。

正直に言ってしまえば、つまらなかった。

確かにイタリア・バロック期までのやフランス古典期までのオペラはその通りだが、ロマン派以降の近代オペラにその枠組みをどこまでも当てはめようというのは無理がある。ロマン主義というのは、国民国家や民族主義の高揚、自我の覚醒、エキゾチシズムあるいは中世への憧憬など、大なり小なり古典主義へのアンチテーゼを含んでいるからだ。

だから、その想定は荒唐無稽で強引な説明に流れがちで、紹介されたオペラの要約としては散漫だし魅力の紹介になりきれていない。「アフリカの女」などに至っては、なぜこのようなマイナーなオペラを取り上げるのか不明だ。要は、思いつきのこじつけばかりで読み手を少しも楽しませてくれない。

ただ、「ヴォツェック」の冒頭にベートーヴェンの「田園」の主題のパロディ断片が登場するとの指摘はなるほどと膝を打った。確かにここには産業革命が最終的にもたらした工業社会の歪んだ都市郊外の自然、すなわち、物質的にも精神的にも汚染され破壊された抑圧的な環境問題がある。

都市と郊外との対比という文脈からすれば、「椿姫」のヴィラ(別荘)というものの表象性もうなずけるし、あるいはもっとジオメトリックな中欧と辺境、異境という対比という文脈からすれば「タンホイザー」も「アラベラ」ももっと示唆に富んだアナリーゼも可能だったのではないか。その遠い背景として、バロック期に開花したオペラに色濃く内在した「楽園」「田園」からの投射という程度にもっと距離を置いて見れば、もっと面白いオペラ鑑賞のヒントになり得たのではないかと感じた。

いずれにせよ、音楽史論はおろか、オペラ鑑賞の手引きにも入門にも、いずれからもほど遠い本だ。




オペラ 楽園紀行
小宮 正安 著
集英社新書

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