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日記

ダウランドの「涙(ラクリメ)」

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2021年05月30日

ゲオルグさんの日記に触発されてしまいました。

ダウランドの「涙(ラクリメ)」は、ほんとうにメガヒット曲で、様々な派生曲を生んでいて、そのそれぞれが名曲となっているというのも希有のこと。そして、それをフィーチャーしたアルバムがこれまた名盤・名録音の誉れが高いのです。

ダウランドは、この曲をたびたび取り上げていて、主なもので3通りあります。

最初は、リュートのために作曲された「涙のパヴァーヌ("Lachrimae pavan")」(1596年)です。さらにはダウランド自ら作詞して歌曲を作ります。これが「流れよ、わが涙("Flow, my tears")」。これがまさにルネサンス期のグレーテスト・ヒットになるわけですね。

当時の大作曲家がこぞって様々な楽器に編曲しているのはゲオルグさんの仰る通り。そういう編曲版のひとつにオランダのヤコブ・ファン・エイクのリコーダー独奏曲があります。



フランス・ブリュッヘンの「ブロック・フレーテ名曲集」(Warner Classics)が日本で発売されたのは1972年。このLPのA面最後にそのファン・エイクの曲が収録され、日本盤のアルバムタイトル「涙のパヴァーヌ」になりました。日本のブロック・フレーテ・ブームの火付け役となり古楽ブームを次の段階へと飛躍させた記念すべきLPです。録音は今聴いてもほんとうに素晴らしいと思います。

この曲が魅力的なのは、冒頭の♪ラ~ソファミー♪という哀愁に満ちた4度の下行音型です。これは通称「ラクリメモティーフ」と呼ばれ、当時のヨーロッパの人々の死生観の琴線に触れたのだと思います。



大塚直哉さんらによる「うつろな瞳("Eyes Look No More")」(WAON Records)には、歌は唄っていませんが、リーフレットには波多野睦美さんが、「流れよ、わが涙」の対訳を寄せいます。なお、「うつろな瞳」は、ダウランドの弟子ション・ダニエルの歌曲で、師の遺した「流れよ、わが涙」へのオマージュともいうべき作品のこと。日本のハイレゾ録音をリードしたワオンレコードの傑作アルバムのひとつだと思います。

「ラクリメモティーフ」については、このCDのリーフレット解説が詳しいのですが、このモティーフはさらに様々な作曲家によって取り上げられています。その代表曲のひとつが、ゲオルグさんも触れられているベンジャミン・ブリテンの「ラクリメ("Lachrymae")」です。ヴィオラ独奏のための曲ですが、ピアノ伴奏版とオーケストラ版のふたつがあります。



オーケストラ版を収録しているものとしてヨーロッパ室内管弦楽団によるブリテン追悼コンサート(ライブ盤)があります。文字通り「ラクリメ("Lachrymae")」と題されたアルバム(Warner Classics)で、私の愛聴盤となっています。

収録曲には、アーヴォ・ペルトがブリテンの死を悼んで作曲した「カントゥス―ベンジャミン・ブリテンの思い出に("Cantus in Memoriam Benjamin Britten")があります。この曲は、「ラクリメモティーフ」に秘かに刻印されている死者への限りない哀悼という音楽言語を徹底的に繰り返していて、その限りなく下落していく下降感覚には戦慄さえ覚えるほどです。

さて、ダウランドの曲の話しに戻りますが、著作権という概念すらなかった当時、作曲者に断りもない海賊版も横行しダウランドは相当に不満に思ったそうで、1604年、この曲にいっそう磨きをかけた決定版としてヴァイオル合奏(コンソート)のための「ラクリメ―あるいは七つの涙("Lachyraem or Seven Tears")」を作曲しました。



ラクリメモティーフを基に七つの変奏曲と七つの舞曲の連作となっているこの曲は、ペルトの曲以上に徹底したところがあって、延々とCD一枚分の長さで5つのヴァイオルとリュートのハーモニーと対位法が充溢した音楽が続けられます。ヴァイオル・コンソートのファンタズム(Phantasm)とリュート奏者エリザベス・ケニーによる録音(LINN Records)が格別の雰囲気を醸します。

いずれも、オーディオ的にも素晴らしい録音音質で、私はたびたび取り出して聴いています。

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  1. ベルウッドさん

    いつもながら私の拙い日記にふくらみと奥行きを与えるような文章を寄せてくださり、感謝申し上げます!

    さわりだけですが、ご紹介の音源を聞いてきました。リコーダーやヴィオラ・ダ・ガンバが主旋律を奏でると、なんだか憂愁の度合いが高まるな~というのが、第一印象です。空気が濃くなる感じがしました。。。それにくらべるとロンドーのチェンバロやヴァージナルの独奏はどこか空気が薄いというか、あっさり聞こえました。そのへんが逆に同時代的なのかな~と思ったり。。。

    「ラクリメモティーフ」については「うつろな瞳("Eyes Look No More")」を入手して解説を読んでみたくなりました。ロンドーもそのあたりを自分で解説しているのですが、私はまだよく理解できていません。。。

    byゲオルグ at2021-05-30 17:48

  2. ベルウッドさん、こんばんは。なんだか涙が大フィーバーですね。どこぞのトランスが流行るよりも、なんと喜びに溢れていることか。

    ブリュッヘンを取り上げてもらうと無駄に嬉しいです。ええ、我有化するつもりはありません。リコーダーの獅子のリコーダーはあまり馴染みがないことを告白するのもやぶさかではありませんから。(爆) アナログ盤、北関東辺りで聴いてみたいと思います。LINNのは注文しました。ロマン派もお願いします。(あまり好きでないので。(爆))

    byベルイマン at2021-05-31 18:55

  3. ゲオルグさん

    「うつろな瞳」ぜひ聴いてみて下さい。

    実は、こちらもヴァージナルが使われています。山野辺暁彦氏による16世紀イタリア様式のレプリカ(2006年製作)とあります。

    ここでも、「うつろな瞳」「流れよわが涙」「涙のパヴァーヌ」の《涙》の三作がヴァージナルを交えたアンサンブルで演奏されています。

    ロンド―のアルバムもそうですが、チェンバロとヴァージナルとの聴き較べというのもひとつの楽しみ方ですね。

    私は、《音》というものには音量とともに方向性もあるベクトル値なんだと感じています。チェンバロの音は、放射するラディアントな響きと音色で、それに対してヴァージナルは、内向きで沈み込む音だと感じます。まさにメランコリー(哀愁)なんでしょうね。

    演奏家が楽器(製作者)とともに音楽と音を一体的に表現しようとする執念みたいなものを、私たち鑑賞者もよくよく感じとりたいと思います。「音楽性」などと文学的側面ばかりをいう音楽鑑賞も、dBとかHzとかそういう数値スペックばかりに執着するオーディオも、一面的で表面的なことしか見ようとしていないと痛感するこの頃です。

    byベルウッド at2021-06-01 09:39

  4. ベルイマンさん

    コメントありがとうございます。

    当時はブリュッヘンばかりがスターとしてフューチャーされたこのアルバム(ブロックフレーテ作品集だからあたりまえだけど)ですが、アンサンブルには、アンナー・ビルスマ(バロックチェロ)、グスタフ・レオンハルト(チェンバロ)というピリオド楽器による古楽演奏の巨人たちが顔をそろえ、そしてヴィオローネ(ヴィオラダ・ガンバ族のバス)を何気なく弾いているのがニコラス・アーノンクールという(隠れた)オールスターの超豪華盤でもあるのです。

    このアルバムの続編「哀しみのファンタジー」も併せて入手されて、その豪華な顔ぶれの青天を衝く青春時代をご堪能ください。

    byベルウッド at2021-06-01 09:53

  5. ぐはっ。全員ラブの面々の青春の音が込められていたのですか。恥ずかしながら、CDを昔購入してあまり良く再生できず、それっきりでした。「演奏家が楽器(製作者)とともに音楽と音を一体的に表現しようとする執念みたいなもの」を聴き取れるよう精進します。失礼いたしました。

    byベルイマン at2021-06-01 10:20

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