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日記

日下紗矢子リーダーによる室内合奏団 (読響アンサンブル・シリーズ)

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2021年07月25日

読響のアンサンブル・シリーズ。今回は、日下紗矢子さんがリーダーとなっての室内合奏団。



日下さんは、どちらかといえば口の重いタイプ。重いといっても口ぶりが遅いというわけではないのですが、あまり、滔々と語らないひと。この日のプレトークでも、あまり語らない。あくまでもクールさを保ちます。その分、ナビゲーターの鈴木美潮さん(読売新聞記者)が話しをリードします。

この日のプログラムは、まずは、ピアソラの「ブエノスアイレスの四季」ありき。

それと対置する形で、最初の曲は、ヴィヴァルディの「四季」から「春」。春で始まり、春で終わるという構成。

その中間、二曲目にピアソラへのオマージュということで、ゴリホフの曲。三曲目は、タンゴという舞曲が本来持っている狂気の源流ともいうべきバロック時代にヨーロッパで流行した「ラ・フォリア」の名曲を置く。バロックと二十世紀音楽との対比、通底する舞曲的な執着狂気、弦楽器の持つある種の偏執的な情熱。そういうものの狂宴ともいうべきプログラム。

最初の、ヴィヴァルディの「四季」から、そういう妖気というのか、尖った意匠、原色と強いアクセントが際立ちます。小鳥のさえずりも、とても華やか。日下さんはソリストとしての装飾を際立たせつつ、コンチェルティーノの技巧も存分に引き出して対峙していく。

対話的、対峙的…すべてはピアソラのタンゴへと向かっていきます。

二曲目のゴリホフの「ラスト・ラウンド」も、そういう二極対立。

題名は、ボクシングに由来するそうです。一対一の対決。オーケストラは中央の一台のコントラバスを中心に左右の二群の弦楽器群が対抗対立する。その丁々発止のやり取りは実にスリリング。一対の男女の対峙、絡み合いというタンゴに通ずるのは、つまりは「ラスト・タンゴ」というところでしょうか。

三曲目が、「ラ・フォリア」。これは、日下さんのソロという意味ではこの夜の白眉でした。

日下さんは、クール・ビューティ。印象は、ある意味では強面の女性です。そういうヴァイオリンが激しい扇情的な変奏を繰り返す。その音色は、直線的な切っ先が鋭く、それでいて粘りのある下弦域の妖艶なことといったら…。

「ブエノスアイレスの四季」は、もともとバンドネオンのために作曲されました。ともかく様々な音楽家がいろいろに編曲をしています。この夜は、ピアノを入れたホセ・ブラガートの編曲版。それまでチェンバロ(*)を弾いていた大井駿さんはピアノに替わって大活躍。
(*フレンチ/タスカン・モデル マティアス・クラマー製作 2002年)

ここでも日下さんは自らのソロは、鮮明なまでに表に立って演奏し、時にメンバーのオブリガートやソロをも立ち替わるように表に押しだし自分は後に控える。そういう前後の交替のステップが、アンサンブル・リーダーとして見事。この曲では、特に遠藤真理さんの甘く飴色の音色で滔々と歌うソロが最高でした。

曲順もいろいろあって、デシャトニコフ編曲の弦楽合奏版に代表されるように春に始まり、穏やかな来たるべき季節への思いを残す冬で閉じるという曲順がポピュラーですが、日下さんは、作曲した順番に沿って夏に始まり春で閉じる。プレトークでは、水を向けられても、その曲順構成に秘めた思いを語ることはなかったのですが、情熱の爆発で終結するフィナーレを聴けば、当然に納得。客席も、どっと拍手で湧き上がりました。





読響アンサンブル・シリーズ
第31回 《日下紗矢子リーダーによる室内合奏団》
2021年7月22日(木) 19:30~
よみうり大手町ホール
(16列 4番)

ヴァイオリン=日下紗矢子(特別客演コンサートマスター)
瀧村依里(首席)、岸本萌乃加(次席)、荒川以津美、小形響、川口尭史、杉本真弓、武田桃子、外園彩香(首席代行)、山田耕司
ヴィオラ=森口恭子、冨田大輔、三浦克之、渡邉千春
チェロ=遠藤真理(ソロ・チェロ)、林一公、室野良史
コントラバス=瀬泰幸、ジョナサン・ステファニアク
チェンバロ&ピアノ=大井駿

ヴィヴァルディ:「四季」から「春」
ゴリホフ:ラスト・ラウンド
ジェミニアーニ:合奏協奏曲第12番「ラ・フォリア」
ピアソラ(ホセ・ブラガート編):ブエノスアイレスの四季

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