ベルウッド
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日記

音楽鑑賞会 第36回 マーラー交響曲第4番

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2021年09月04日

インバル&フランクフルト放送響の演奏。



私にとってはとても愛着のあるCD。というのも、私にとって初めてのCDによるマーラーだったからです。86年当時、このCDは3300円もしました。

当時ほとんど無名に近かったインバルのマーラー交響曲全曲録音は世界を驚かせました。スコアの微細な指示を表現しつくした、作品本来の複雑な構造と繊細な情感の移ろいを見事に示した演奏は、後期ロマン派的な様式を脱した新時代のポストモダンのマーラーの嚆矢ともなったのです。

インバルのマーラーに注目した日本コロンビアのスタッフは、日フィルの客演に来日した指揮者と交渉を開始。始めは取り合わなかったインバルも、スタッフの熱心な説得により、改めてツィクルスを再び回してそれをデジタル録音として後世に残すことに意欲を示し始めます。

制作は、インバルとそのオーケストラが所属するヘッセン放送局との共同制作となりました。録音は、定期演奏会場のアルテ・オーパーでコンサート毎にセッションが組まれて進められていきます。当初の第1番や2番では、放送局側のディレクターが幅をきかせて、日本側のデジタル新時代の技術ポリシーとかみ合わずぎくしゃくします。

デジタルというフォーマットと、日本コロンビアが新しく採用したB&K社のマイクは、従来の録音技術とはまったく次元の異なるものでした。B&K社の無指向性マイク(4006 Pressure-tipe)は本来は計測用で音声用とは比較にならないほどの高感度で、恐ろしいまでの広帯域・フラットな特性。アナログ時代のように近接マイクを何十本も林立させて、それをミックスしフェーダーで音量バランスをコントロールするというものとはまったく違っていました。マイクは楽器から遠く離し、その数は極限まで減らす。個々の楽器の音は鮮明にとらえながら、しかもホールの自然な響きを立体的にとらえる。そのためにマイクの位置ぎめが徹底的に追求されました。



それが最大限の成功を収めたのがこの第4番。

このCDが「2本のマイクロフォンだけによるワン・ポイント録音」というものを初めて高らかに標榜しました。「ワン・ポイント録音」という日本人による造語は、その後、またたく間に世界中に拡がりました。その空間の大きな拡がりを感じさせる解像度の高い鮮明な録音は、繊細で天国的な浮揚感に包まれた「第4番」と見事なまでにマッチしました。

しかし、このインバルのマーラーは日本ではまったく相手にされなかったのです。

オーディオ雑誌で「優秀録音」と絶賛紹介されオーディオファンは買いました。当時、CDプレーヤーを買ったばかりだった私もそのひとり。ところが音楽雑誌などは無名のインバルなど取り合わなかった。

むしろ高い評価を与えたのがヨーロッパ。マーラー研究者として高名なアンリ=ルイ・ド・ラ・グランジュがフランスの音楽雑誌「ディアパゾン」で絶賛した。「俺はデンオンもインバルも知らないけど、このマーラーはいい」とこの4番に最高クラスの星をつけた。CDは国内販売と同時にそのまま輸出されましたが、むしろヨーロッパでどんどんと売れたのです。

やがて、そのド・ラ・グランジュが来日して、日本の音楽誌の対談記事に登場して高い評価を与えたことでようやく日本でも売れ出す。「ただ録音の良いCD」から「演奏、録音共に良いCD」となったのです。

3管編成ながらマーラーの交響曲全10曲中最も小規模な編成で、しかも、全楽器がトゥッティで鳴らされる場面がほとんどない。唯一のトゥッティは、第3楽章コーダ冒頭。ヴァイオリンのグリッサンド風の飛躍音型に続く一瞬の空白直後のfffの部分だけ。鈴の音など、その空気感と繊細極まりない弱音美のデリカシーが、この『演奏、録音共に良いCD』の真骨頂。最終楽章の終末、ハープとコントラバスによる聞こえるか聞こえないかどうかの最低音は、天使が天上へと飛翔していったあとの無限の空虚を感じさせ何とも見事です。

このCDは、中古にせよBlu-specCDにせよ容易に入手できますが、2点ほど注意すべきことがあります。

ひとつは、プリエンファシスであること。

CD初期には、プリエンファシスが多くありました。エンファシスとは、高域のSN改善のために高域を上げて記録し、再生時に逆特性で復調を行うことです。このCDも、プリエンファシスです。しかも「隠れエンファシス」でした。これは再販再カッティングでもそのままで変わらないようです。

エンファシスはCD規格なので今のプレーヤーでもビットを認識して自動で切り替わるので問題ありません。一番の問題は、リッピングしてファイル再生する場合です。そのままで再生してしまうとハイ上がりの音になってしまいます。知らずに聴くと気がつかないことが多いので、ついそういう音質の音源なのだと誤解してしまいます。

プリエファシスは、dBpowerampなどのリッピングソフトでも対応するようになりましたが、《隠れ》エンファシスに未対応なものがほとんどであることです。プリエンファシスフラグはTOC(Table Of Contents)と各トラックのサブコードで立てられますが、音源によってはTOCでフラッグを立てておらず、サブコードのみで立てているものがあるからです。これが《隠れ》エンファシスで、ソフトや再生機によっては正しく判定できない問題が生じます。いまのところTuneBrowseしか、これに対応できているリッピングソフトが見当たりません。ディスク再生であってもトランスポートとDACが分離したセパレートタイプでも怪しいところがあります。なぜならばS/PDIFはCD-DA規格に準じていますが、その他の伝送方法ではフラグ信号を伝送できているかどうかの保証はないからです。

もうひとつの注意点は、海外の超廉価盤の存在です。



このシリーズが超廉価盤全曲ボックスセットとしてブリリアント・クラシックというレーベルから売られています。このレーベルはオランダの超予算価格の全集ものを得意とするレーベルですが、もともとの音源品質をどれほど保っているのかは相当に怪しい。プレエンファシスもどう処理しているのかも不明です。どういういきさつがあったのか不明ですが、DENON(日本コロンビア)の“PCM録音”の金字塔ともいうべきこの録音をこんな形で安易に版権を売り渡してしまったことは残念でなりません。

あるコミュニティで、この名録音をさんざんにこき下ろしている御仁がいましたが、よく問いただしてみると、この廉価盤をリッピングしてPC再生で聴いていることがわかりました。もはや、こうなってしまうとすっかり刷り込まれてしまっているようで聞く耳持たずでした。

名録音こそ、正しい万全の再生環境で聴きたいものです。





マーラー:交響曲第4番ト長調《大いなる歓びへの賛歌》
ヘレン・ドナート(ソプラノ)
ディーゴ・パギン(ヴァイオリン)
エリアフ・インバル指揮 フランクフルト放送交響楽団

録音:1985年10月10日/11日 フランクフルト アルテ・オーパー
   デンオン/日本コロンビア(デジタル録音・オリジナル国内・輸出盤)

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  1. ベルウッドさん、こんばんは。
    CDのご紹介、ありがとうございます。

    実は、私はマーラーは聴かず嫌いで2枚しかCDを持っていませんが、そのうちの一枚がこの第4番と同シリーズの第5番でした。

    ベルウッドさんの解説を見ながら早速CD-Pで聴いてみましたが、デジタル録音初期?にも拘わらず凄い録音だということが分かりました。

    高性能マイクをほぼワンポイントで使っているそうで、広帯域で自然な空間表現が素晴らしく、マーラーの表現したかったものが聞こえてくるようです。

    CDに同封されている解説を見ても録音状況の説明は無かったし、販売情報も大変参考になりました。

    貴重な情報をありがとうごさいました。

    もう少し落ち着いたら、岡山オフ会も再開したいですね。

    byED at2021-09-05 22:56

  2. EDさん

    お久しぶりです。コメントありがとうございます。

    これは録音史ということでも記念すべき名盤・名シリーズですね。

    落ち着いたらぜひ岡山・音会に呼んでください。皆さんともまたお会いしたいです。

    byベルウッド at2021-09-06 10:49

  3. ベルウッドさん

    私もEDさんと同じ5番¥3,300.-を長年愛聴しています。
    ご紹介のあった4番聴いてみたくなりました。
    入れ替えスピーカが届くまでに入手してみたいと思っています。

    これからも濃い音楽情報お願いします。

    byゼロdb at2021-09-06 15:43

  4. ゼロdbさん

    レスありがとうございます。

    第5番もいいですね。ただしほんとうにペアマイク1組だけのワンポイント録音は第4番だけだそうです。どんな曲であろうとワンポイントがベストというわけにはいかないようです。とはいえポリシーは共通しています。

    4番もぜひ聴いてみて下さい。

    byベルウッド at2021-09-06 18:10

  5. ベルウッドさん、お久しぶりです~♪

    その昔は朝比奈盤(大地の歌はいまでも愛聴盤)を愛聴していましたがインバル盤を聴いて目が覚めました(笑)
    ってことで、マラ4はご紹介のインバル盤とギーレン盤を愛聴しています。
    特にインバル盤の三楽章は天上の美しさ、コレを凌ぐ演奏&録音はお目にかかったことがありません。
    ただ録音レベルが異常に低い。

    byspcjpnorg at2021-09-06 19:58

  6. spcjpnorgさん コメントありがとうございます

    >ただ録音レベルが異常に低い

    まったくその通りです。ご明察!

    クラシック音源を聴き慣れている人間にはあたりまえのことなのですが、一般にクラシックの録音レベルは低い。ところがふだんあまり聴いていないひとは大人しい音がクラシックだと思い込んだり、レベルが小さいまま再生して「つまらん音だ」とばっさり決めつけがちなのです。

    録音レベルが小さくなってしまったのは実はデジタル時代に始まったことです。デジタルは上限(-1dB)を超えることはできません。ですからダイナミックレンジ拡大のメリットはノイズフロアが下がったこと、すなわち小音量側に拡大させています。

    だから、クラシック音源は相当にボリューム位置を上げて聴くことがノーマルです。ラウドネス・ウォーに汚染されたポップス系とは大いに違う再生マナーが必要です。

    しかも、録音レベルは、ジャンルや編成などでかなりばらつきます。敬愛するコミュのKYLYNさんは、オフ会でデモ再生するに当たっては細かく再生レベルを書いたメモをあらかじめ用意されていて、ディスクをかけ直すたびに調整されていました。

    このディスク、大いに音量を上げて聴きましょう!(笑)

    byベルウッド at2021-09-06 21:29

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