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日記

第一次大戦と音楽 (佐藤俊介 小菅優 デュオ・リサイタル)

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2022年07月17日

佐藤俊介と小菅優のデュオ。



大ファンである二人のデュオということで、どうしても聴きたいリサイタル公演でした。

もともとはベートーヴェンイヤーにナチュラルホルンのトゥーニス・ファン・デァ・ズヴァールトとのトリオを予定していたものが、コロナ禍の入国規制で中止に追い込まれてしまったことのリベンジなんだそうです。

おそらく水戸での新ダヴィッド同盟の流れで、二人のスケジュールをうまく合わせることができたのでしょう。このデュオは、7月6日に東京・銀座ヤマハホールでも予定されています。



東京在住なのに、あえてこのホールまで足を運んだのは、先日のプラジャーク・クァルテットとのセット券だからでした。このひまわりの郷は、駅ビルの最上階にある区の文化施設で、その音楽ホール。380席ほどの小さめのホールで室内楽向きのとてもよい雰囲気の音楽専用ホールです。

音楽専用ホールといっても客席の一部やステージ後部が可動式になっていて、オーケストラピットも可能で演劇や講演会など多目的ホールとしても使用可能。



そういうことで予算制約もあったのか、けっこう安普請。ホール壁面は、下半分こそ木張りになっていますが、上半分の灰色の部分はよく見てみたら何と鋼矢板。矢板というのは港湾・河川の土木工事に使う杭打ち型の土留め板のこと。拳で叩くとやはり鉄板の響きがします。バルコニー席の手すりも一般的なステンレスパイプ。

それなのに音響は、意外なほどバランスがよい。ライブなアコースティックですが、空間容量が小さめでステージが近く壁面一次反射が短いので、演奏者の直接音がしっかりと聞こえホールの間接音とのバランスがとてもよいのです。けっこう気に入っています。

プログラムは、いかにも佐藤さんらしい時代観を基軸においたもので、「第一次大戦と音楽」というメッセージ性が高い構成。

確かに、第一次大戦は、ヨーロッパの音楽家に大きな心理的な影響を与えましたし、対戦前のモダニズムに大きな変質的作用ともたらしたのだと感じました。後に前衛とナチズム、双方からの批判にさらされたヒンデミットが従軍中に作曲されたソナタは、のっけから緊張と厳粛な慨嘆に満ちています。

この日は、ちょっとした演出が。

古い録音を会場に流して、それを引き継ぐという形で演奏を始めます。イザイの「子どもの夢」を取り上げたのは、おそらく、このイザイ自身による録音が1913年という対戦直前のものだったからでしょう。

この趣向は、後半のクライスラーでも繰り返されます。アメリカに移住したクライスラーも大戦に従軍し母国オーストリーと戦うことになります。戦後、ヨーロッパ楽壇に復帰しますが、ユダヤ系ゆえにナチス台頭でドイツを去ることになるなど戦争に翻弄された音楽家でもあります。そのことはコルンゴルトも同じ。

それにしても、SP時代の録音とぴたりとピッチを合わせて引き継ぐところは見事でした。ピッチを自在に調整できるデジタル再生ならではの演出なのでしょう。

同じように第一次大戦の時代に生きた作曲家といっても、その技法や様式は様々。ロマン派の終末、モダニズムの台頭、古典への回帰…と、様々な芸術志向が交錯した時代。そういう多様な音楽を躊躇なく取り上げて弾き分ける佐藤の力量はさすが。それ以上に、どんな難曲であれ、技巧様式の転換であれぱきぱきと弾きこなす木島にもいつもながら感嘆してしまいます。本当にこのピアニストはアンサンブルの名手です。

前半はいささか戦争を間近に感じさせる哀切と緊張のプログラムでしたが、その最後、プログラムの中核となったドビュッシーが、そういう二人の名演でした。病気が進行し困窮していたドビュッシーにとって、その晩年は大戦による物資不足が追い打ちをかけ暖炉の燃料にも事欠く絶望的な冬を過ごしたとか。そのドビュッシーの白鳥の歌。

佐藤のヴァイオリンから、これほど艶やかであでやかな音色が聴けることは意外でさえあったのですが、小菅の見事なタッチと雄弁なまでのアーティキュレーションも相まって、フランス没落の哀感と切実なまでの亡滅の美意識にさいなまれるドビュッシーの傑作に感動しました。レコードやCDも含めて、いままで聴いたドビュッシーのソナタのなかでも白眉でした。


この日記はこちらでもご覧いただけます。ぜひご訪問ください。






ひまわりの郷コンサート・シリーズ
佐藤俊介 小菅優 デュオ・リサイタル
第一次大戦と音楽 ~作曲家に想いを馳せて~
2022年7月3日(日)14:00
(2階L列-24)

佐藤俊介 Vn
小菅優  Pf

ヒンデミット:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品11-1
イザイ:子どもの夢 作品14
ラヴェル:クープランの墓~フーガ/フォルラーヌ (ピアノ・ソロ)
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ

コルンゴルト:空騒ぎ 作品11 ~ドグベリーとヴァージェス(夜警の行進)
グラナドス(クライスラー編):スペイン舞曲集 作品37 ~アンダルーサ(祈り)
エルガー:ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 作品82

(アンコール)
ファリャ:7つのスペイン民謡より
  ホタ
  ナナ(子守唄)

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