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日記

G.メノッティ「領事」 (新国立劇場オペラ研修所 試演会)

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2022年08月07日

ジャン・カルロ・メノッティは、イタリア生まれのアメリカ人作曲家。

ミラノのヴェルディ音楽院に入学するも、父親に先立たれて渡米してフィラデルフィアのカーティス音楽院に進学した。1歳年上のサミュエル・バーバーとは在学中に親しくなり、長く私生活をともにする関係でした。

二十世紀アメリカオペラともいうべきジャンルの中心的作曲家。バーバーもそうですが、作風はいたって正統でかなり保守的ですが二十世紀の時代の息吹を伝えています。このオペラもとてもわかりやすく、しかも、あの時代の冷ややかな空気感に満ちています。多くの一幕オペラをてがけてきたメノッティの初の全三幕のこの作品は、初演された1950年のピュリッツァー賞を受賞しています。

1000席ほどの中劇場での上演。親密でちょっと濃密な距離感と音響空間を個人的にとても気に入っています。新国立劇場ならではの、いわば、産地直送、蔵出しの直売店とかアウトレット的なところがあって、チケットプライスもお財布に優しい。

この日も、オーケストラピットに2台のピアノが入っての上演で、舞台も中劇場ならではのセンスあふれるシンプルなセットで、左右を大きく使って歌手たちを動かす小気味の良い演出でした。

ヨーロッパのとある都市。反政府活動家のジョン・ソレルは秘密警察に追われ自宅にまで踏み込まれますが、老母と妻のマグダはしらを切り通します。国境を越えて逃亡することを決意し、マグダに、ある国の領事に面会し家族の保護を求めるようにと指示します。

マグダが領事館に行ってみると、待合室には様々な事情を抱えた人々がビザの申請に訪れています。ところが、受付の秘書は、お役所仕事の典型で繰り返し書類の提出や訂正を求めるばかりで埒があかず、誰一人ビザを受け取れずにくたびれ果てている。 マグダも秘書に領事に会わせてほしいと懇願するが、けんもほろろ。何度も領事館に通うものの、日時はむなしく過ぎていくばかり…。

反政府活動、秘密警察、亡命、立ちはだかる官僚主義…そういう時代のリアルと、いつまでもたどり着けない先の自由への渇望といったカフカ的な不条理、ヌーヴェルバーグ的な絶望と挫折といったものに、さらにアメリカ的なコミカルなエンターテイメントでほどよく味をつけたといった風のオペラはとてもなじみやすく面白い。



研修生の歌手陣はいずれも大健闘。特に秘書役の大城みなみ(第24期)の演技・歌唱は秀逸。異国の女役の冨永春菜(第25期)も静かな色気がある。ソレル役の佐藤克彦も小柄ながら活気のある明快なバリトンで大活躍。



フレッシュな歌唱力には堪能させられたのですが、残念なのは言葉。クラシックの歌手というのは、どうもあまり英語が得意ではないようで、今ひとつ音楽にのってこない。発音がどうのというのではなく、英語ならではの言葉の音楽的魅力に欠ける。作曲者と直接交流のあった指揮者の星出豊自身が、メノッティの言葉として「詩を語るがごとく」と語っているが、それがそのようになっていない。「Good-bye」が続けて三人それぞれに発声される場面でさえいずれも単調で響かない。

以前、チャイコフスキーの「イオランタ」を上演した時にはロシア語の指導者が付きっ切りだったと聞いていますが、今回の公演ではそうした語学トレーナーがいないようです。どうも英語というのは、日本人にとっては義務教育から習う最も身近な外国語ということでかえっておろそかになっているのかもしれません。ルネッサンス歌曲にしろ、ブリテンやガーシュイン、バーバーなどの近現代歌曲にしろ、英語だってクラシック歌手には大事なレパートリー。今回の公演が示唆するように今後はアメリカオペラにも関心が高まっていくでしょう。

英語…意外にこれからの日本人歌手の課題なのではないでしょうか。


この日記はこちらでもご覧いただけます。

https://bellwood-3524.blog.ss-blog.jp/archive/20220718




新国立劇場オペラ研修所試演会
オペラ「領事」/G.メノッティ

2022年7月18日(金) 14:00
東京・初台 新国立劇場中劇場
(1階12列42番)

【作曲・台本】G.メノッティ
【指 揮】星出 豊
【演 出】久恒 秀典
【照明】立田 雄士
【音響】河原田 健児
【映像】荒井 雄貴
【衣裳アドヴァイザー】増田 恵美(モマ・ワークショップ)
【ピアノ】岩渕 慶子 星 和代
【主 催】新国立劇場

出 演(7/18)
●オペラ研修所第23・24・25期生
●賛助出演
 北川 辰彦(第5期修了)、松中 哲平(第16期修了)、水野 優(第19期修了)
【マグダ・ソレル(ジョンの妻)】大竹 悠生

【秘書】大城 みなみ
【ジョン・ソレル】佐藤 克彦
【母親】前島 眞奈美
【コフナー氏】松中 哲平〈賛助出演〉
【異国の女】冨永 春菜
【魔術師(ニカ・マガドフ)】水野 優〈賛助出演〉
【アンナ・ゴメス】野口 真瑚
【ヴェラ・ボロネル 】杉山 沙織
【アッサン】長冨 将士
【秘密警察官】松浦 宗梧
【レコードの声】河田 まりか
【二人の私服刑事】松本 美音 竹村

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  1. ベルウッドさん、こんばんは。

    同じ日曜の公演を観ましたが、よくまとまっていてとても見応えのある上演だったと思います。どうせなら前日も観ておけばよかった、とちょっと後悔しました。
    良し悪しの判断がつかない、ということもありますが、私は英語については気になりませんでした。むしろ比較的身近な言語だからこそ、若い歌手達が演技なり歌唱なりに全力投球できていたのではないかな、と。(そうでなければ、いくらベテラン指揮者の元とはいえ、そうそうチャレンジできるような演目ではないでしょうし。)

    いずれにしても、National な Theaterとして意義ある取り組みでした。今後もこういった演奏機会の少ない良品に積極的にチャレンジしていってほしいものです。

    by眠り猫 at2022-08-11 00:16

  2. 眠り猫さん

    いらっしゃっていたのですね。よい公演でしたね。研修生をあまねくカバーするためにダブルキャストになっているので、公演両日を観るのが理想ですね。でも、そこまではなかなか…(笑)。

    英語の件は、気にするまでもないといえばそうなのですが、研修所試演会ということと、あまり取り上げられないアメリカ歌劇に挑戦しているということであえて申し上げました。しかもプログラムにも、同じ“Good-bye”でも発する人の思いや状況によって違ってくると言葉の大事さに触れられている。

    ただし、クラシック音楽の世界では、どうも英語がイマイチということをずっと感じていたこともあります。あえてオーラルなトレーニングをしていないということではないかと思ったからです。

    例を挙げるのはちょっと恐れ多いのですが、私も大好きな波多野睦美さんは英国に留学もしていて「サイレントヌーン」という英国歌曲集のアルバムまで出しているのですが、すばらしい声と歌唱ながらどうも英語がしっくりこないのです。そのことは、「アルフォンシーナと海」のように各国語の曲を歌っているアルバムでも感じます。最後の武満徹なんかとても素晴らしい滑舌と情感で言葉が活き活きとしてくるのに…と思ってしまうのです。あるいは、キャロリン・サンプソンのダウランド歌曲の歌唱の英語の美しさを聴いても違いが歴然としているとつくづくと思ってしまうのです。

    ドイツ歌曲なら、ドイツ人でさえそのドイツ語の美しさを絶賛する白井光子さんのような歌手もいらっしゃるし、オペラ歌手ということでも藤村実穂子さんもいらっしゃる。イタリアオペラでも特に気になるということもありません。やはり英語は、ないがしろにされているというのか軽く見られていて、取り立てての言葉のレッスンというものが無いのではないかという気がしてならないのです。

    見当違いの批判なのかもしれませんが…。

    byベルウッド at2022-08-11 11:40

  3. ベルウッドさん

    なるほど、英語の歌曲やオペラに馴染みがないので「こんなもんだろう」と思っていたのですが、そういえばダウランドあたりは英語でしたね。すっかり失念していました。
    確かにそう言われてみると、(今回の公演に限らず)日本人歌手全般として、英語歌唱において言葉に更に繊細な表現を与える余地はありそうです。

    うーむ、難しいものですね。

    by眠り猫 at2022-08-13 10:38

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