「PHILE WEBコミュニティ」サービス終了のお知らせ
ベルウッド
ベルウッド
クラシック音楽ファン:よい演奏会があると知れば遠征もいといません。オーディオシステムは、音楽そのものを楽しむのが本来というモットーのもとにコストパファーマンス重視で小ぶりな装置を目指します。正統オーデ…

マイルーム

メインシステム
メインシステム
持ち家(戸建) / リビング兼用 / オーディオルーム / 16畳~ / 防音なし / スクリーンなし / ~2ch
スピーカー:    PSD T4 Limited Special-ネットワークレス・マルチアンプ駆動 調音パネル:    Escart Ventoスクエア           オーディオリプラ…
所有製品

レビュー/コメント

レビュー/コメントはありません

カレンダー

            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

最新のレス

お気に入り製品

お気に入り製品はありません

日記

ピノックと室内オーケストラの幸福な邂逅 (紀尾井ホール管弦楽団定期)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年10月03日

第132回の定期は、トレヴァー・ピノックの第3代首席指揮者としての初の登場。コロナ禍やピノック自身の体調不良で遅れ遅れになっていたもの。高齢のこともあって不安に思っていましたが、それを吹き飛ばす素晴らしい演奏でした。



ピノックの持ち味がとてもよく出ていたのが、ショパンの協奏曲。素晴らしくフレッシュな演奏。

彼の指揮は、紀尾井ホール室内管の美質を最大限に引き出したもので、小編成ならではの透明な響きと音色の鮮やかさで、その分、ピアノの繊細なディナミークでの素直で清新な歌いまわしが引き立っていました。

この協奏曲が書かれた時、ショパンは20歳前、ほんの少し前までベートーヴェンもシューベルトもまだ生きていました。そういう素朴な古典的編成で書かれた曲ですが、その後のピアノという楽器の進化とコンサートホールの巨大化と商業化もあいまって二十世紀の巨匠たちは思い切り肥大したロマンチシズムをこの曲に求めてきました。そのことでオーケストラとのバランスを崩し、そこからくる不満がショパンのオーケストレーションへの批判や管楽器を増強するなどの改変を招いたのだと思います。同時に、ショパンのカンティレーナの手法を思い切り抒情的歌謡的に強調し、高音のきらめきや細かい指の動きでクリスマスツリーのように飾り上げていきます。

音楽評論家の吉田秀和は、ショパンについて「協奏曲にしても、どうせ通俗的な名曲とわりきってしまえば…」と厳しい言辞を投げつけていました。それは、肥大化したショパンという風潮の真っ只中にあったからなのだと思います。

この10年ほど、そういうショパンに新しい風が吹いています。

ショパンの時代は大きな演奏会の機会は少なく、協奏曲でさえ、むしろサロンで室内楽として弾かれる機会が多かったのだとか。それが作曲家自身が室内楽として演奏可能なようにスコアへの添え書きとして残されています。そういう室内楽版が盛んに演奏されるようになりました。エラールやプレイエルの歴史的楽器の演奏も盛んです。その室内楽版のほうが、二十世紀の巨匠たちの演奏よりもずっと面白いし、しっとりと楽しめます。今回のピノックとドヴガンの演奏は、編成が小さいというだけでなく音響バランスも奏法の綾もこれによほど近い。しかも、今回の演奏は、管楽器群の演奏も冴え渡っていました。パンと弾けるようなトゥッティの強奏は、室内楽では得られない。冒頭のトゥッティのアタック、読響首席・武田厚志のティンパニは見事でした。これこそ二十歳のショパンが書いた逸品の本当の姿だという説得力に満ちています。日本デビューというドヴガンは、ピアニシモが美しく素直でディナミークを抑え気味、飾らない歌が出色の魅力。なるほどピノックのお気に入りだと納得です。背も高く大人びた表情なので、拍手に応えてペコッと挨拶する幼い仕草でようやく15歳だということに気づくほど。大変なポテンシャルの持ち主です。



ドヴガンは、現在スペイン在住とのことですが、アンコールではジロティのバッハを弾いて、自分がロシアピアニズムの正統であることをしっかりと誇示していました。



翻って、プログラム最初のワグナーが、初演時の弦楽五重奏ではなく複数プルトの弦楽アンサンブルへの拡大版というのが、これまた室内オーケストラの妙でした。弦楽アンサンブルの響きにはむしろ厚みがあって、室内楽版の演奏にあるような夢見るようなソロの線の艶やかさではなくて、厚みのある至福の響きが馥郁と香り立つ。オーボエに久々に正団員の池田昭子が登場し美しい音色が聴けたのがうれしいし、クラリネットに東響首席のエマニュエル・ヌヴーが参加するなども木管楽器が刷新されて見事な演奏を聴かせてくれる。その音色の鮮度が高いのも室内オーケストラの妙であるわけです。

ピリオド奏法的なピュアトーンと正統古典派編成がもたらす若々しいシューベルトのすがすがしさ。晩年の長大な歌の変成転成とは違って、短いモチーフを展開させていく古典的手法がかえって清新なイメージを与えてくれる。特に音の透明度、旋律線が明快なことは、やはり、イングリッシュ・コンソート以来、長く培ってきたピノックの美点なのだと思います。実は、以前にピノックが客演したときのモーツァルトにはすっかり落胆させられたのです。今回、見違えるように美音が凝縮した生気あふれる演奏となったのは、やはり、コンサートマスターに久々にバラホフスキーが帰ってきてくれたからだと思います。もちろん紀尾井ホール室内管の成長もあったからこそとは思いますが、バラホフスキーの個々の指揮者の個性に対する追随力とそれを楽団員に伝えて統率する力には抜きん出たものがあると感じます。

ピノックが新たな首席指揮者として素晴らしいスタートを切ってくれたことはうれしい限りです。


この日記はこちらでもご覧いただけます。

https://bellwood-3524.blog.ss-blog.jp/archive/20220924




紀尾井ホール室内管弦楽団 第132回定期演奏会
トレヴァー・ピノック第3代首席指揮者 就任記念コンサート
2022年9月24日(土) 14:00
東京・四谷 紀尾井ホール
(2階センター 2列13番)

トレヴァー・ピノック 指揮
アレクサンドラ・ドヴガン ピアノ
アントン・バラホフスキー コンサートマスター
紀尾井ホール室内管弦楽団

ワーグナー:ジークフリート牧歌
ショパン:ピアノ協奏曲 第2番ヘ短調 op.21
(アンコール)
J.S.バッハ:ジロティ編:前奏曲第10番ロ短調 BWV855a

シューベルト:交響曲第5番変ロ長調 D485

(アンコール)
シューベルト:ロザムンデより間奏曲第3番

次回の日記→

←前回の日記

レス一覧

  1. ベルウッドさん、こんばんは。

    紀尾井ホール管弦楽団、ショパンのピアノ協奏曲、シューベルトのロザムンデ、聴いてみて〜。

    もし上記の曲ならば、適当な推測でよいのですが、私の場合は紀尾井ホールのどの席に座って聴くのが良いだろうと思われますか?また、このオケはベートーヴェンの今風のsym5番は良いけど、9番は違うかっていう認識で良いのですか?5番も違う?モーツァルトのグランパルティータくらいとか?

    すいません、直近でもゲルバーのソニックシティー大ホールでのベートーヴェンのソナタです。真ん中の席で満足できませんでした。

    byベルイマン at2022-10-03 17:55

  2. ベルイマンさん

    ホール音響の良し悪しは一概には言えません。紀尾井ホールは、どの席で聴いても良い音がするという点で最上のホールだと思っていますが、聴く位置によってその良さが違います。例えば、私の定席は2階正面バルコニー2列目中央ですが、バランスの良さと音響・視覚両面でのパースペクティブが自慢。1階の中央(評論家招待シート)は、響きと直接音の良バランス。1階席最後列左右隅(いわゆる庇の下)は、他のホールと違って重厚な低音体感があって心地よい。それぞれの利点があって、ジャンルや聴く人の好み次第だと思います。

    今回の演奏は、より室内楽に近い貴族邸宅の広間での演奏という歴史感覚があったので1階席最前列がよかったのではないかと勝手に思いました。

    紀尾井ホールでは、第九はやっていないはずですが、ベートーヴェンの交響曲は何回かやったことがあります。なかでも亡きヴァイオリンの巨匠、ゲヴァントハウスのコンマス、同弦楽四重奏団の第一ヴァイオリンを務めたゲルハルト・ボッセさんの指揮した「英雄交響曲」は感動的でした。

    この800席ほどのホールのステージに、ブラームスのピアノ協奏曲を載せた時は驚きましたが、これまた素晴らしい演奏でした。その後、マーラーの交響曲第4番などもやっています。

    私は、ピアノソロリサイタルは、絶対に大ホールでは聴きません。あれはぼったくり興業です。

    ただし、一度、チケットをもらったので初台オペラシティのステージ真上の3階でラド・ルプーを聴きましたが、不思議と音がよく届き、感動的な演奏でした。そういうこともあるのでコンサートホールの席選びは怖いですね。

    byベルウッド at2022-10-03 19:08

  3. 嫁がヴィヴァルディが聴きたいというので、新イタリア合奏団で、ベルウッド席で予約しました!(ほんとは紀尾井ホールの人たちが良かったけど!)

    byベルイマン at2022-10-03 20:07

  4. ベルイマンさん

    新イタリア合奏団いいですねぇ。ピアソラの「四季」も組み合わせてくれたら行ったのに。最前列は正解だと思いますよ。ましてやクラシックギターは絶対ですよ。…と思ったら、弟クンの代演になっちゃったのね。

    byベルウッド at2022-10-04 06:23

  5. ベルイマンさん

    新イタリア合奏団いいですねぇ。ピアソラの「四季」も組み合わせてくれたら行ったのに。最前列は正解だと思いますよ。ましてやクラシックギターは絶対ですよ。…と思ったら、弟クンの代演になっちゃったのね。

    byベルウッド at2022-10-04 06:23

  6. こんにちは。
    私は先月、1週間に3回ショパンの1番を聴いてきました。
    19日:武蔵野音大ベートーヴェンホール
    21日:東京オペラシティホール
    24日:神奈川県立音楽堂(シェーナークライスフィル)
    19日と21日のソリストは武蔵野音大ヴィルトーゾコースの学生さん。
    24日は簡潔にいえば、オーケストラのコンマス!です。

    ショパンの1番はピアノ協奏曲の中で一番好きな曲です。
    よく、オーケストレーションが貧弱云々とかいわれていますが、素人の私には何処がそうなのかさっぱり分かりません。
    例えば、2番の協奏曲1楽章中間部のオケだけのところなどは、ブルッフのヴァイオリン協奏曲1番のそれと並んでめちゃめちゃカッコいいと思っています。

    先月聴いた3人ですが、音大ホールでの女性ピアニストの演奏が、一番良かったです。
    オケ前奏の時からじっと目を瞑って体を微妙に揺らし、出だしの力強さにもビックリしましたが、とにかく演奏姿が様になる。ピアノコンチェルトを聴いた!という満足感ありありです。
    逆にオペラシティでの男性は、そつなく弾いたという印象。私は演奏中の動きや表情等が結構気になり、弾く前のオケの前奏から逝っちゃっている内田さんとか、演奏中やたら首を振る辻井さんとかは勘弁です。が、あまりに無表情に弾かれても、、、。

    県立音楽堂でのアマオケコンサートのソリスト。
    プロフィールを見ても、北大卒くらいしか分からない。
    演奏が始まって、あまりに平然と弾くので??と思っていたら、
    1楽章途中で混乱して支離滅裂となってついに演奏中断後、演奏再開。
    しかし2、3楽章はまた平然と弾き切りました。
    演奏中私は!?の思いが錯綜しきり。因みにこの方、後半のドヴォルザーク7番ではコンマスでした。

    byジュン at2022-10-04 12:07

  7. ジュンさん

    昨日も同じ演奏を聴いた友人と話したのですが、オーケストラが弱いなんて思えないねって。

    子供の頃、協奏曲第一番のオーケストラだけの提示部分が大好きで、よく聴いてました。ルービンシュタインのピアノが出てくると、プックアップを上げて、また、最初に戻す(笑)。そうやって繰り返し聴いてました。ウォーレンスタイン指揮のロスフィルでした。

    アマチュアオケというのは、スリリングでプロとは違った面白さがありますね。それにしてもヴァイオリンを弾いているコンマスが、コンチェルトのピアノソロですか?なんともはやですが、他にひとがいなかったんですかねぇ(笑)。

    byベルウッド at2022-10-05 10:10

レスを書く

レスを書くにはログインする必要があります
ログインする