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のびー
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ロンドンに移り住んで25年経ちました。240V環境の恩恵に浴すも、やはりオーディオは日本がおもしろい。年に数回の帰国の際の物色を何よりの楽しみとしております。

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ジャーマンフィジックスを導入しました
ジャーマンフィジックスを導入しました
持ち家(戸建) / 専用室 / オーディオルーム / 16畳~ / 防音なし / スクリーン~80型 / ~4ch
2018年3月、1986年から(32年間)一貫してJBLをメイン・スピーカーとしてきたオーディオ・ライフに別れを告げ、B&W党となりました。2015年のピアノ購入時にオーディオ部屋(約30畳)をピ…
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日記

音を語る

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2022年05月10日

私は、家のあちこちに古いステレオサウンド誌を置いていて、ちょっとした空き時間に目を通しています。最近のものは何度も繰り返し見ることはほとんどありませんが、2005年頃までの号は今読んでも結構楽しいのです。

最近、No.150(2004年春号)を読んで、あの頃のオーディオ業界とオーディオ誌の充実ぶりにあらためて感心し、同時に最近のお粗末さに落胆しました。

日本のオーディオ全盛期は、1970年代後半から80年代だとよく言われます。確かに多くのメーカーが参入、多種多様な機器が世に出ました。オーディオ誌や評論家の陣容も充実していました。一方、今の視点からは、音場や音触(テクスチュア)対する意識が希薄で、音を語るボキャブラリーも全体的に乏しかったと思います。

No.150が出た2000年代初頭は、CDが充実、SACDもそれなりの地歩を固めた頃で、記事を読むだけで音のイメージが掴めるレベルまで音のボキャブラリーが充実してきたことが分かります。記念号で特集記事が盛り沢山なのですが、「特集:世界のハイエンドスピーカー、その多彩なる音響美」が特に興味深いです。

この特集では、時代を代表する16モデルを、菅野、傅、三浦、柳沢の4氏が同時試聴し、試聴後に座談会形式でかなり真剣な議論をしています。どのスピーカーに関する話も興味深いのですが、ジャーマン・フィジクスThe Carbon IIの記事を紹介します。私自身がジャーマン・フィジクスを所有し、理解していることもあり、評論家諸氏のコメントに大いに感心し共感しました。

こんなに長く引用して大丈夫かな?まあ、出典も明記しているし良いでしょう? 相当長いです、スミマセン。

++++++++++++++++++++++++++++++++
三浦:何だかこのスピーカーはスタジオ録音のディスクでも、指定席のいいところで聴いているライブのような感じが得られるというのは、やっぱりこの設計の大きな特徴なんですね

傅:そう本当にライブ特有のよさのようなものがある。

菅野:このスピーカーには大きな二つの特徴があるわけです。それは無指向性だということと、それにこのDDDというユニットが持っている特有な音のテクスチュア。この二つの特徴がものすごくはっきりしている。とくに僕はDDDユニットのテクスチュア、これでなくては出せないテクスチュアに惚れ込んでいてね。今日はそれが完全に出し切れたとは言えないのだけど。

柳沢:振動板の面積が広いためかエイジングには敏感のようで、今日はややエイジング不足の感じもあったけど、でも特徴と魅力は十分に納得させてくれた。

三浦:音場型が音像型かと言ったらやっぱり音場型なんですけど...

菅野:それはもちろん音場型ですね。

柳沢:完全に音場型だけなのだけど、ただし音像が非常にいい。その情景にまず惹かれる。

三浦:音像が希薄にならないところが凄いですね。

柳沢:形がしっかりと出て、かつ中味がいい。

三浦:しかもイリュージョン的な、独特のちょっと半透明な雰囲気がありますね。

傅:指向性がまんべんなくて、周波数的なつながりだけじゃなく、指向性的なつながりもスムーズなんですね。これはこのユニットの凄いメリットですね。例えば横に動いて聴いても、そこにステレオがありますからね。つまり音に特有のライブネスがあるんです。だから活き活きしていて、本当に生々しい。

柳沢:よく音像がリアルと言うと、それを切り絵的なリアルさと思われかねないから、この再生には何か他の言い方をしなくては、と思ったりする。

菅野:実際の音像というのはそんな切り絵のようにエッジがシャープじゃないわけでね。

柳沢:でもオーディオでは、ついそれをリアルって言ってしまう。あれとは正反対で、しかも実在感があるんだから、何か他の言い方はないかとね。

三浦:このシステムの低域はコーン型ウーファーによるものなんですが、やはり無指向性のパターンで拡がっていて、上のDDDと非常によくつながっているんです。

柳沢:ともに無指向性であることと、それにDDDがピストニックモーションの発音ではなく、独特のベンディングウェイブでの発音であることが、何かいい結果を生んでいる感じがするんです。

菅野:ただ僕は、ウーファーを使わずにDDDだけで全帯域をシンプルに出している、ユニコーンというモデルのほうがもっと好きなんだけどね。

三浦:低域をバックロードホーンにしたフルレンジ型のモデルですね。

菅野:低音は多少足りないけど、あのほうがDDD特有のテクスチュアがもっと聴ける。

傅:でも、このウーファーも音の遅れを感じさせたりしないから...

三浦:僕がかけた「ケヴィン・マホガニー」のときのあのウッドベースも、リズムの刻みがよかった。

菅野:そうだねいい感じだった。

三浦:この音は柔らかいが硬いかと言われたらどっちでしょうね。僕は「シフ」のピアノなど心地良い硬さがあったように感じたのですけど。

菅野:柔らかいか硬いかに強いて分けたら、精巧な硬さがあります。このピアノの情報量はもの凄く多いですね。そしてタッチは精緻なんだけど、そのテクスチュアは硬くない。とにかくこのピアノはダントツだった。「シフ」のピアニストとしての天才ぶりが音になっていたし、これしかないという感じのテクスチュアが聴けたでしょう。

傅:カチッと出ながら聴こえ方は硬くない。私にとっては説明しにくい音です。例えば、エッジを利かせていないのに精密感がきれいに出ますね。とても緻密に。それから菅野先生が言われたテクスチュア。耳当たりは柔らかいのだけど凄くリアルでスピード感があるんです。

菅野:スピードはあります。それはDDDの1つの特徴でもあるから。

傅:普通スピードっていうとカチンカチンっていう感じじゃないですか。それとは全然違いますね。これは面白い。

柳沢:僕はライブ録音を聞いてみたいと思って「フォン・オッター」の歌をかけてみたけど、そのライブ感の中での声のよさ。それから菅野さんがならした「ホルツマイアー」もそうなんだけど、あの声の人肌感が独特の魅力なんだ。

菅野:そうそう。割合に至近距離で聴く人間の声にすごく近い。もう、口腔の中の...

柳沢:ええ、口の中のこもり感が出てきてね。

菅野:そういうのが全部出てくるんだ。

三浦:ある種の潤いもある感じなんですが。

柳沢:潤いはあるさ。人肌感があるんだから。

菅野:傅さんが、説明しにくい音と言ったけど、凄く分かる。表現しにくいね。

傅:説明しにくいです。
それと100Hzからちょっと上をDDD一発でカバーするというメリットも大きい。楽器や声って、どうしても帯域によって伸び縮みするじゃないですか。音像が上下に。それが全くないんです。僕がかけた「ジュリア・フォーダム」って女性はゴスペルの歌い方だから胸を鳴らすんです。だから普通のマルチウェイスピーカーでは、音声がスーッと上がったり下がったりする場合があるけど。

菅野:それから、このスピーカ-はライブな部屋で聴くと凄くいい効果が出るんだ。

柳沢:そうだろうね。ライブな部屋の特徴を効果的に活かすのも無指向性の魅力だから。

菅野:まるで変わっちゃって、本当にいい雰囲気になるんです。

傅:聴かせ方が、気持ちいいわけですか。

菅野:そういうことなんだね。

柳沢:あるいは、そういうライブな部屋で効果を出して楽しむのが、このスピーカーの最も価値のある使い方と言えるかもしれない。特有の空気感のようなものがもともとあるのだから、それをもっと効果的にね。

傅:ああ、それは言えそうですね。

菅野:だからある意味では、オーディオをちょっと離れて絶対感覚的に言うと、この音はあまりスピーカー的ではないんだな。

柳沢:そう、スピーカー的ではない。それはまたオーディオ的ではないとも言えるんだ。誤解されると困るんだけどね。

菅野:そうなんだ。僕がずっと育ってきたオーディオ歴の中で、やっぱり無意識にスピーカーの音に切り替えて聴いてきたと思う。それはいい意味でも悪い意味でもね。ところがこのスピーカーはその切り替えを必ずしも必要としない。

三浦:なるほど。

菅野:特に僕はさっきのピアノでそう感じたわけです。

柳沢:僕もピアノで感じたのだけど、傅さんがスピード感って話をしたね。普通、オーディオでスピード感というと、ピアノのタッチの立ち上がりなどのよさを言う。でもそれは、スピーカーの振動板の立ち上がりがいいっていうイメージで言ってしまう。いや、実際にそう感じさせるわけです。ところがこのスピーカーで感じる立ち上がりのよさは、振動板を意識させない、空気の立ち上がりなんです。

菅野:そう、マスレス(無質量)みたいなね。マスレス的レスポンス。

三浦:それがベンディングウェイブのメリットなのでしょうね。

柳沢:簡単にメカニズムと結びつけて言うのが好きでないけど、結局はそれと無指向性の成果かもしれない。そして、こういうのが目の前からスピーカーが消えると言う表現にふさわしい音かと...振動板の動きを意識させないのだからね。
でも、そうなってみるとこれが妙にオーディオ的ではないと思ったりするのを、どう考えるべきか。

菅野:結局、これからオーディオにとっても、いろいろ考えさせる内容を持った、きわめて興味深いスピーカーということだね。

傅:その通りだと思いますね

「ケヴィン・マホガニー」 You got what it takes : Kevin Mahogany
「シフ」 Andras Schiff in Concert - Robert Schumann : András Schiff
「フォン・オッター」 Schubert Lieder : Anne Sofie von Otter, Thomas Quasthoff
「ジュリア・フォーダム」 Julia Fordham : Julia Fordham

++++++++++++++++++++++++++++++++
如何でしょうか?
最近のオーディオ誌の音質記事と比較すると、相当レベルの高い良い議論だと思うのですが...

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  1. のびーさん こんにちは

    私は気になった号はいまでも購入していますが、言われてみると確かに落ち方が凄いかもしれません。ちなみに、吐き気をもよおす程度に個人的に気に入らない表現のオンパレードはstereosoundonlineで見る事ができます。

    以下に紹介するのは、その中からケーブルの聴き比べ記事からの切り抜きです。(なんと、持ち上げている件のケーブルの中にはファインメットコアが仕込まれているのですけど・・・)

    切り抜きここから
    ------------------------------------
    情家みえの歌を聴いたとたん、「何だこれは?!」という衝撃が、私の全身を走った。何よりピアノの質感がまったく違う。調律せずに10年放っておいたアップライトピアノと、ベテランが調律した直後のスタインウエイのフルコンサートという違いだ。音の艶、透明感、クリアーさ、輪郭のていねいさ、音の立ち……というピアノサウンドを形成する音要素が、ここまで磨かれるとは、アコリバ・ケーブルは恐ろしい。でも、それもまだ「普及ケーブル」だ。細かな質感の話から入ったが、最初に驚いたのは、実は音量。アンプボリュウム位置は変えていないのに、感覚的には2割は音が大きくなった。電気の通りがよくなったのか?

    言葉のニュアンスも明瞭になり、リズムも違った。

    「チーク・トウ・チーク」はブライトソングだが、その対極ともいえる悲哀の歌がA面最後の「YOU DON'T KNOW ME」だ。男の子が、振り向いてくれない女の子への思いを切々と訴える名曲。慟哭とも言える情家の泣き節、山本のピアノの迫り来る熱い思いを、「上級ケーブル」は見事に歌い上げていた。

    ケーブルの音の違いを確かめようという、素朴な疑問から始まったこのテストだが、ここまでの深淵な音楽性談議に発展するとは……。
    ------------------------------------
    切り抜きここまで


    音量2割は『盛り過ぎ』ですし、いくらなんでも「リズム」が変わったらアカンでしょう? 読者を馬鹿にしてる? そして高透磁率のファインメットを信号ラインに入れたら音が激変しちゃうのは不思議ではない訳でして。それにしても、のびーさんご紹介の記事と改めて比較してみて、著者自身で『ここまでの深淵な音楽性談議に発展するとは……。』と自己陶酔してしまっているところからみても、格の違いは歴然だと思います。 音楽に対して軽々に『深淵』などと言って欲しくないのです。

    参照(切り抜き元):
    https://online.stereosound.co.jp/_ct/17517376
    ,

    bynightwish_daisu at2022-05-11 04:02

  2. ちなみに、「上級ケーブル」は、
    ------------------------------------------------
    「普及ケーブル」に比べ、ボリュウム位置は同じだが、実感的に1.5割は音量が増した。
    ------------------------------------------------
    とのことです。
    [標準リファレンス]<[アコリバ普及ケーブル]<[アコリバ上級ケーブル]という構図な訳です。

    振り返ってみると、[標準リファレンス]と比較して、
    『感覚的には2割は音が大きくなった』のが[アコリバ普及ケーブル]でした。
    その2割増しの[アコリバ普及ケーブル]から更に『実感的に1.5割は音量が増した』のが[アコリバ上級ケーブル]。
    2割増しを更に1.5割増しにしたら、最初の[標準リファレンス]に比してどれだけ音量が上がるというのでしょう?
    簡単な算数ですが   1.20 x 1.15 =1.38 これは約2.8dB です。
    (参考までに、1.20倍は約1.58dB、1.15倍は約1.21dBです。)
    もっとも、これは測定値ではなくて、あくまでも個人の感覚ですからこの算数に意味はありまけん。健康食品の通販のコトワリ書きにある「※個人の感想です」と同じで、音量が2倍に聞こえても3倍に聞こえても個人の感想ならば、どうとでも言えます。そこは心得ていらっしゃる。
    感覚的に、、、実感的に、、、。
    .

    bynightwish_daisu at2022-05-11 04:43

  3. 本日はのびーさんご引用の記事を聴かせてもらいました。
    このような談話は、ともすると周波数が解像度がといった下世話な再生になりがちですけれども、のびーさんのそれにはそのような嫌味が全く聴かれませんでした。それでいて、音のイメージはジャーマン・フィジクスの所有者をもってしても共感できるもの。これは凄いことです。

    少し菅野風でした(笑)
    .

    bynightwish_daisu at2022-05-11 05:59

  4. のびーさん

    黒い塔の姿につられて思わずレスしてしまいます。

    オーディオ雑誌を全く手に取ることがないため、座談の諸先生がどういう方々か存じ上げないので、こんなことを言うと失笑を買うかもしれませんが、「本当に上手いことを仰る」と感心してしまいました。

    Gerrman Physiksの「音」を語ろうとして何時も上手くいかず、途中で音楽談義に逃げてしまうのが常でした。が、皆さんのお話を読んで、音場でありながら音像がリアル、音像がリアルだけれど輪郭型でない、精巧で硬いようでテクスチャーは柔らかい、、、等など、相反する性格が顔を見せるという話に、そういうことかと妙に感心。それでも最後の「スピーカー的ではない」というオチには、四賢人で象を撫でてもこの結論ととるべきか、禅問答で煙に巻くのが達人の智慧ととるべきか、いずれにしても、大いに楽しませて頂きました。有難うございました。

    byパグ太郎 at2022-05-11 09:35

  5. nightwish_daisuさん

    レスありがとうございます。
    ご引用の記事は酷いですね。ここまでいくと読者をバカにしているというか、著者やメディアの信頼性にも悪影響でしょう。

    それはともかく、オーディオは「音楽」や「音」を楽しむものだと言われますが、音楽を楽しむ時に音楽が理解できた方が楽しみが深くなるのと同様、音を楽しむ時にも音の理解がとても大切だと思います。音を理解するには、そのためのボキャブラリーを持つことが助けになると思っているのですが、上述の記事の評論家諸氏の豊富なボキャブラリーに感心した訳です。

    美術館で絵画を鑑賞する時、全く知識が無いと単に絵を眺めるだけですが、作者や絵画の時代背景や技法等のテクニカルな部分を少しでも知っていれば、たとえ俄か勉強であったとしても楽しみの度合いが全然違います。これと同様に、我々も音を語るボキャブラリーを持つことがオーディオのレベルアップに繋がると思いました。

    nightwishさんが上手に表現された通り、「記事を聴く」こともできる訳です。

    byのびー at2022-05-11 18:03

  6. パグ太郎さん

    ご無沙汰しています。レスありがとうございます。バージョン違いとはいえ、パグ太郎さんの愛機ですからね(笑)。

    そうなんですよ。私も愛用者となってあらためて記事を読んで、その表現力に感心しました。

    他のスピーカーの記事も非常に面白くて、B&W Signature 800が取り上げられているのですが、こちらも私の所有機の祖先ということもあり、その聴き方に感心してしまいました。

    そもそも、この特集の副題は「『無色透明』とは、じつに色彩が豊かなんだ」です。16機種のスピーカーの設計者にどんな音か訊くと、みんな「無色透明」な音と回答する、すなわち16通りのノンカラーレーションがあるわけです。

    ユーザーにとっても、自分にしっくりくる音は自分にとっての「無色透明」ということで、それを楽しもうということです。

    byのびー at2022-05-11 18:18

  7. のびーさん

    興味深い、古い記事のご紹介、ありがとうございます。内容については、後ほど伺いますが、まず、

    >記事を読むだけで音のイメージが掴めるレベルまで音のボキャブラリーが充実してきた

    という点について。これは、「プラス」「マイナス」両方の側面がありますねぇ。絵画とか音楽といった、「非言語的な表現手段」による芸術を、<言語化>するのが、いわゆる「評論家」と言われる人たちの食い扶持なのですが、その功罪については、哲学の授業で取り扱われるような古典的なテーマです。つまり、「非言語表現芸術を言語化する」ことで、「理解を深めている」のか、「真の理解からむしろ遠ざけているのか」というテーゼです。

    多くの<非言語表現芸術家>自身は、後者の立場を取る人が多く、「言語化できないから、非言語的表現形態を選んでいるのだ」として、私の取材経験からも「評論=言語化」というものに背を向けている人が多いです。一方、ロゴスがパトスに対して優位になりがちな近代人は、「言語化」されてはじめて「理解」したと考える人が多いのも事実です。引用したコメントから、のびーさんもこのようなお立場と拝察します。

    言語化のメリットは、概念を固定し、それを社会的に共有して議論の俎上に載せやすくなることです(最近で言えば、「セクハラ」とか「パワハラ」という概念の言語化が典型として社会学的には知られています)。一方のデメリットは、この場合であれば音を聴く前に「読む」ことで、本来「パトス」の部分で「理解」(感受)すべき「音」(=非言語的表現)を、先に「ロゴス」の部分で「理解」してしまうことで、ロゴス優位な近代人はその概念から自由にパトスで感受することがもはやできなくなる、ということです。絵や陶芸や音楽を作り出している芸術家に、「読む前に触れて欲しい」と主張する方が多いのはこのようなことです。

    その意味で、「オーディオ評論などは絶対に読まない」という立場を表明するオーディオファイルが存在するのは理解できるところです(私自身は半々ですね=笑)。

    byAuro3D at2022-05-12 07:27

  8. (つづき)

    さて、後段の、記事の内容についての、のびーさんへの質問です。

    それは、この記事の中で、


    菅野:それから、このスピーカ-はライブな部屋で聴くと凄くいい効果が出るんだ。
    柳沢:そうだろうね。ライブな部屋の特徴を効果的に活かすのも無指向性の魅力だから。
    (中略)
    柳沢:あるいは、そういうライブな部屋で効果を出して楽しむのが、このスピーカーの最も価値のある使い方と言えるかもしれない。特有の空気感のようなものがもともとあるのだから、それをもっと効果的にね。


    とありますが、私がGRFさんの所にお邪魔した時に、私も無指向性スピーカーに対する「ロゴス的理解」からまったく同じような質問をしたのですが、その時、確か彼は、「このスピーカーは、部屋はややDeadの方がよい」とおっしゃって驚いた記憶があります。事実、ご存知の通り、彼のメインルームは天井に吸音材をたっぷり敷き詰めていますし(私のパトス的記憶では素晴らしい音でした)、別室の「和室」(畳=Dead)にもこのスピーカーを置いてあったと思います。彼は「むしろこれは和室向き」とすらおっしゃっておられました。

    ここで、「日本で正規輸入販売が始まったら、GPを拙宅に導入してみたい」と考えているワタシとして伺いたいのは、のびーさんは、この「オーディオ評論家」(恐らく自己所有はしていない)の<言語表現>と、GRFさんという「実践家」の<言語表現>のどちらが正しいと思われますか?

    「自分で聴いて確かめろ」というのが、ロゴス否定派の立場ですが(笑)。

    byAuro3D at2022-05-12 07:42

  9. Auro3Dさん

    レスありがとうございます。

    だらだらと引用し過ぎたからか、論点がぼやけてしまったようです。私はここで、「音楽の芸術性を言葉で表現すること」の是非を議論しているのではありません。

    もう少し理系的な、しかし周波数特性やダイナミックレンジ等の測定可能な数値以外のもの、即ち音場観やテクスチュア、温度感という音の性格を表現できるボキャブラリーのことです。音やオーディオを評価する際に非常に大切な要素であるにもかかわらず、(現在の技術で)数値化できていないものとでも言いましょうか。

    そのようなボキャブラリーが充実することは良いことだと思いますが、「音の評価、鑑賞が言葉に縛られること」は勿論、本末転倒です。ただ、Auro3Dさんもご指摘の通り、その塩梅は意外と難しい。

    評論家の菅野さんは、その点を良く理解されていて、ステレオサウンド167号の「レコード演奏家訪問(278ページ)」には以下のような記述があります。

    「...ただ、それは我々オーディオジャーナリズムにも責任があるかもしれません。音を口で喋り、文章で書きすぎるからです。一部のオーディオファイルは、そういうことを通してしか、音のことを考えられなくなっているのかもしれない。」

    byのびー at2022-05-12 09:15

  10. 横から失礼します。

    >GRFさんという「実践家」の<言語表現>のどちらが正しいと思われますか?

    この質問は野暮というか、少し残念?な質問かもしれません。
    のびーさんの日記の内容読まれていないのかな?と心配になります。
    いいえ、読まれているのは分かっているのですけれど、職業柄のせいか読んだ事によって自身が何かしらの影響(心理的バイアス)を受けないための壁を感じさせるのです。それを「読まれていないのかな?」と表現しています。Auro3Dさんの引用された「読む前に触れて欲しい」ではないですが「評論ではなく普通に読んで、普通に感じて欲しい」。今回は『GPはうちの部屋ではどうでしょうかね。』と質問するのがベターだったかなと。そう思います。

    もう少し平易に書くならば、のびーさんはGPがお気に入りなのだからそれが全てです。のびーさんは他人様のGP(の言語表現)が正しいとかどうとか、そんな’’余計な事’’に言及する立場に無い。と、思います。
    のびーさんはそれこそ評論家ではなく、あくまでも一人の好事家(ご自身は倫敦音響好事家と本ページ左上と記載。)なのですから。
    .

    bynightwish_daisu at2022-05-12 09:37

  11. Auro3Dさん
    (つづきです)

    まず、GPスピーカーにとって良い部屋はライブかデッドか?という二者択一的な答えは難しいと思うし、それこそ言語化の弊害ですよね(笑)

    全方向に音が出ているわけですから、科学的、客観的に判断して横や後ろの音を上手く活かさないのはもったいないし、エネルギーの無駄です。その点である程度のライブネスは必要だしプラスです。

    一方、横にも後ろにも同等のエネルギーが出ているので、その処理は一般的なスピーカーよりも難しい。普通の部屋ではデッドといってもある程度の反射があるので、デッドな方が扱いやすく好結果が出やすい。

    以上は一般論です。

    私は、何度もGRF邸におじゃまして音を聴かせて頂いています。私の理解は、GRF邸の大きな部屋は、一般家庭の部屋と比較して、床は相当ライブ、天井は非常にデッド、壁は少しライブ、全体的には少しライブな方だと思います。ただ、部屋のサイズ対比、プレイバックの音量は余裕があり、あまりライブネスを感じません。大きな部屋の音は非常にスケール観があります。

    一方、和室の方は、全体的に少しデッドですが、部屋のサイズの限界に近いプレイバック音量で、聴取位置も近く、デッドな部屋にもかかわらずライブネスを感じます。和室の音は迫力があります。

    最後に、評論家の菅野氏はGPのトロバドール80を所有しメインスピーカー(の一つ)として愛用されています(故人ですから、今では過去形です)。私は彼の音を聴いたことはありませんが、彼のGPに関するコメントを読むと、非常に上手く鳴らされていたと推測されます。

    byのびー at2022-05-12 09:54

  12. excellent!!

    bynightwish_daisu at2022-05-12 10:13

  13. のびーさん

    拝復。

    >音やオーディオを評価する際に非常に大切な要素であるにもかかわらず、(現在の技術で)数値化できていないもの

    なるほど、そういう意味でしたか。なんとなく感じているが言語化できなかったものに、Codeを振るというのは、そのCodeが広く共有されれば多角的な視座を得ることになるのでいいことですよね。染色職人さんの持つ「色」を表すボキャブラリーが我々とは桁違いに多いのと同じです。つまり、オーディオファイルもギルドということですかね(笑)。

    それに続く、菅野さんという評論家のコメントもありがとうございました。この方は自分たちのしていることの功罪について、よく分かっているなあと思う一方で(菅野さんがGPのオーナーであったとは知らず、失礼しました)、こういう引用をさっと出せるのびーさんにも感心します(笑)。もしかしてStereo Sound誌に関する研究論文が書けるんじゃないですか?

    Nightさんとのびーさんにいただいた続きのコメントですが、伊豆の拙宅に導入するなら洋間の寝室か、和室の客間しかないので(Auro3Dシステムは無指向性SPを不可としているので)、将来の二択に際し、大変に参考になりました。ありがとうございました。

    byAuro3D at2022-05-12 19:12

  14. のびーさんこんにちは。

    記事を拝見して何か思い当たる節があるなと感じていたところなのですが、
    そういえば自分の氏宅の訪問記でこんな事を書いていました。


    『どう表現したらよいのか分かりませんが、これまで自分がやってきた「音を構築する作業」と、GRFさんの「音楽を鳴らす作業」の、わずかなようでその大きい感覚の違いに気付かされます』
    『音を聴く、あるいは聴かされている感覚が皆無です。そのくらい本当に機器の存在感が消えてしまう。スピーカーが消える感覚は分かっていても、他の機器の存在も全て気にならなくなります』


    惜しい表現はしてるみたいですが、ボキャブラリーの差は歴然です(笑)

    byにら at2022-05-13 14:52

  15. のびーさん、

    2004年の記事ですか。全く古さを感じされないどころか、今オーディオ評論家の座談会を開いてもなかなかこういう表現は出て来ないでしょうね。

    私も自分のボキャブラリーの無さを痛感してしまいますね。オーディオの経験と音を聴く感性はどんどん高めて来たつもりでいても、それを表現できるボキャブラリーが伴わないのを実感させられてしまいましたね。逆に難しいコメントをされてもその真意がよく理解できないこともあるでしょうし。(笑)

    byHarubaru at2022-05-13 16:13

  16. にらさん、

    こんにちは。音を表現することを生業にしている評論家諸氏も言葉選びに苦労するような音ですよね。
    でも「機器を意識させない音」という点で、にらさんも上手く表現されていると思います。

    GRF邸では、ヘビーローテーション盤で「音の確認」をすることもありますが、いつも私の知らない凄い演奏に出会います。やはり普段から良い音楽を聴く姿勢を持たないとあのレベルには達しないと思います。

    「音を語る」などという日記を書きましたが、結局「音は聴いて」ナンボです。

    byのびー at2022-05-13 18:52

  17. Harubaruさん

    >逆に難しいコメントをされてもその真意がよく理解できないこともあるでしょうし。

    上の座談会で話されているボキャブラリーは、言葉としてはストレートで平易です。
    芸術表現では無いので、特段の知識や教養は必要ないと思います。パグ太郎さんが書かれていた通り「上手いことを仰る」と感心したわけです。

    Harubaru邸の音は、Harubaruさんがたびたび口にされる「鮮度」や「静寂感」を十分に感じさせる音ですから、狙った通りの音を出されているのだと思っています。

    byのびー at2022-05-13 19:04

  18. のびーさん、おはようございます。

    自分のボキャブラリーの貧相さに恥ずかしくなりました。。。
    感覚として捉えた音もしくは空気の振動をそのまま伝えると、
    「サワサワ〜」とか「スーッと」とか「喉のヌハッて感じ」とか「フワっと」とかになってしまって正確には伝わらないし、強弱も読み手次第で変わるのでダメですね。笑
    もっと本を読んで語彙を溜め込みます。。。

    話は変わりますが、
    こっちがメインなのですが、
    ジュリアフォーダムが出てきたのがとても嬉しかったです。
    高校生の時にCDをジャケ買いしてからジュリアフォーダムが大好きで、今でもその時に買ったCDが一番のお気に入りなのです。
    ※私のアイコンのやつですね

    女性にしては低くて落ち着いたチェストボイスから、上へ突き抜けるヘッドボイスへの急上昇と急降下の繰り返しの歌声にうっとりしました。
    高校生の私は当時のジュリアの美貌にも惚れました。
    知的なだけでなくユーモアがあり、ショートカットが似合っていてって、
    そんな女性像が私のそれからの恋愛に大きく影響を与えたのは間違い無いです。
    現在ではだいぶお年も召していらっしゃると思いますが、ロンドン?で活動はされているのでしょうか?

    byCENYA at2022-05-14 10:11

  19. のびーさん、おはようございます。
    私は、名前が売れ始めた頃の傅さんによる、歯に衣着せぬ評論が大好きでした。音が混ざっていないトールボーイ4WAYに関して”ピアノが左に傾いている”という表現は痛快でした。
    今では、すっかり毒を抜かれたような表現が増えてしまって残念です。恐らくネットの普及で、読者と評論家の影響力の差が小さくなってしまったのでしょうね。

    ベンディングウェーブ方式、言い換えると分割振動を拒絶するのではなく、有効に鳴らす方式ですね。DDユニットの音は私も大好きです。素材のもつ個性を抑えこむのではなく、好ましい音色に変換して水平360度方向に開放させているイメージです。
    ユニットがまだ安かった頃に無理をしてでも購入しておけばよかったと少し後悔しています。

    bytaketo at2022-05-14 11:08

  20. CENYAさん

    こんにちは。ジュリア・フォーダムは傅さんが試聴によく使っていたので、私もCDを購入して一時よく聴いてました。CENYAさんのアイコンは彼女のPorcelainのジャケットですね。

    彼女のことはすっかり忘れていたのですが、チョコっと調べると、生活拠点は随分と前にカリフォルニアに移ったようです。それでも英国にはツアーで定期的に来ていて、11月にロンドンの私の自宅近くの中程度のホールでやりますね。

    このチケットサイトを見るとTears for Fearsが!彼らもまだやってるんですね。

    byのびー at2022-05-15 08:05

  21. taketoさん

    レスありがとうございます。

    傅さんは、アポジーを入れた頃からオリジナル・ノーチラスに移るころまでは時代の先端を走っているような評論でしたね。それ以前もホーンスピーカーを自作したりと色々攻めてました。アンプがJeff Rolandに替わってから機器構成もすっかり安定してしまい、面白くなくなりました。最近の素人みたいなデジタルファイル再生の記事を見ると残念です。


    ベンディングウェイブ方式の音はDDDユニットしか聴いたことが無いので、この方式に共通のものかは判断出来ませんが、好きな音色です。それより全指向性であることのメリットが大きいと感じます。

    コーン型やドーム型のユニットを上や下に向けて全指向性を謳っているスピーカーもありますが、本来、正面軸上でエネルギー最大となるユニットの横からの音を聴くのもどうかな...と思ってしまいます。DDDユニットなら360度どこでも正面です。これは凄い。

    byのびー at2022-05-15 08:36

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