日記
ロンバケの謎に迫る(35DH 1 131/141のプリエンファシスフラグ)
2020年07月05日
今さらながら大滝詠一 / A Long Vacation(以下ロンバケ)を集めています。
たくさんのリマスター(同品番含む)が出ていますが、ようやく35DH1の初出盤以外は入手することができました。シティポップ系は近年の海外需要増加のあおりを受けて、値上がりが著しいので、いまのうちに初出盤も何とかして手に入れたいところです。
さて、ロンバケの初出品番35DH1はマスタリング違いでバージョンが複数あることが知られています。一般には初出、マト121、マト131の3バージョンですが、Wikipediaの記述に気になるものを見つけました。
A LONG VACATION, 4. 35DH 1, Master Sound DM. 2020-07-05閲覧,
https://ja.wikipedia.org/wiki/A_LONG_VACATION#35DH_1,_Master_Sound_DM
以下引用します。
"レーベルデザインは3rdプレスと同一だが、35DH 1 141と刻印された4種類目の盤も存在する。TOCは3rdプレスと同一で、各曲演奏時間も一致するためマスターは同一であるようだが、波形を確認してみると3rdプレスよりレベルが低く設定されている。新たなマスタリングではなく、マトリックス形状が変更された際のカッティング作業で生じたものと思われる。 "
マジ?
35DH1は大抵初出盤がそれ以外かで区別されていて、ましてやレーベルデザインが同じ131と141を区別して入手するのは難しく、廉価な値段設定がされているものを片っ端から買う羽目になりました。そのせいか、最近相場が上がってるようで、何か申し訳なく思ったり…。
まあそのかいもあって131と141を入手することができました。
35DH1 131

35DH1 141

割愛しますが、この2つのディスクのデータは、完全にバイナリ一致します。はて、なぜWikipediaの編集者は違うと見たのか。まあリッピングしていたときに気づいたのですが、そう、プリエンファシスフラグの違いです。
過去のプリエンファシスフラグに関する投稿は以下です。
ストリーミング時代のプリエンファシス問題 http://community.phileweb.com/mypage/entry/2819/20190222/61845/
FLACのプリエンファシスフラグ http://community.phileweb.com/mypage/entry/2819/20190224/61859/
35DH1 131/141はどちらもプリエンファシスCDです。しかし、そのフラグの立て方に違いがあり、131はサブコードのみ、141はTOCとサブコードとなっていました。
プリエンファシスフラグはTOCとサブコードに立てることが標準的であり、131はイレギュラーです。しかしながら、CD初期時代には散見されるようです。
さて、131と141はCDリッピングソフトでどのように認識されるのでしょうか。いくつかのソフトで試してみました。
・131 EAC - プリエンファシス無し

・131 EZ CD Converter - プリエンファシス有り(ただし、手動でサブコード取得をする必要有)

・131 dBpoweramp CD Ripper - プリエンファシス無し

・141 EAC - プリエンファシス有り

・141 EZ CD Converter - プリエンファシス有り

・141 dBpoweramp CD Ripper - プリエンファシス有り

ソフトウェアによって検知結果が異なるということですね。
以下おまけ。
この手の問題は、プリエンファシスフラグだけではありません。過去に「カラヤン/BPO「オテロ」CDリリースから32年目の真実? - http://community.phileweb.com/mypage/entry/2819/20200414/64873/ ※そういえば、カウフマンのオテロは酷い録音でした」で触れましたが、そもそもCDマスターがおかしいこともあります。また、音圧競争に煽りを受け、過度にリミッティングされ、バキバキに音割れしている音源もあります。ひっくるめると、「音がおかしいと感じた音源に対して、どう処理するべきなのか?」という問題になると思います。
そもそもプリエンファシスCDを適正に処理しなくても、音がおかしいと感じなければそれで良いのです。Hi-Fi、原音忠実思想からしてみれば突っ込みが入るかもしれませんが、オーディオシステムトータルで音楽再生を考えたときに、プリエンファシスの処理程度は些細な問題になることもあります。でも、どうしてもおかしいと感じた場合はどうすればいいのか?これも各々好きなように処理すべきだと思います。
今は便利なツールがたくさんあって、その選択も色々な観点があり、正解は一つではありません。例えばバキバキに音割れした音源はiZotope RXのDe-Clipを使っても良いし、オールパスフィルタで波形を復元しても良いし、もちろんそのまま聞いても良いのです。
ちなみに、自分はプリエンファシスCDに対しては、そのまま何も処理せずリッピングして、聞いてみて、おかしいと思ったらディエンファシス特性のインパルスを畳み込んで32bitFで別途書き出しています。
ロンバケ収集は初出盤がまだ入手できていませんが、今のところ、35DH1 131/141に上記手法でディエンファシス処理をしたものが一番良いように感じています。しかし、35DH1で採用されているマスターにはデジタルドロップと思わしき欠落が各所で聞き取ることができ、この点においてベストとは言い切れません。
対してCD選書シリーズのCSCL-1661に可能性を感じています。ただし、現状は全くベストではなく、「可能性」にとどめている要因はその波形にあります。

見ての通り、Lchの下側だけクリップしています。面白いですねー。こんなのあるんだと思いました。これをいかに復元するか。悩みどころです。
レス一覧
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serierilさん
確かに、以前にもフラッグの立て方の問題をご指摘されてましたね。
使用されたdBpoweramp CD Ripperのバージョンは何でしょうか?もしかして最新のRelease17.1よりも以前のものではないでしょうか?
というのも、これはちょっと思い当たることがあったからです。
そのことは私の日記でもふれましたが、最新のR.17.1のバグ修正の記述に“Pre-emphasis was not always working”との表記があったことです。
試しに、先日、Pre-Emphasisと判定されたディスクで気になるものがあったので、以前のR.16.6にかけてみたところ、ものの見事にプリ・エンファシス無しとなってしまいました。DENONの初出盤ではなく、2001年頃の再発盤(CREST1000シリーズ)です。
↓
シェレンベルガー&イタリア合奏団 オーボエ協奏曲集
COCO-70465(COCO-75530の再発売盤)
昔にリッピングしてあったファイルを再生して、直近のリッピングバージョンと比較してみたら、明らかにハイ上がりになっていました。このアルバムは、以前からファイル再生では何となく違和感があって納得できず引っかかっていたものです。
気になるのは、この問題がCDPでも起こっている機種があるのかな??ということです。
byベルウッド at2020-07-05 11:41
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ベルウッドさん
本文で試したのはR17.1でした。
もっともソフトウェアのアップデート等により挙動が異なるのは一般的なことで、しかもこの手のマイナーな話題は、サイレントに修正/変更されることが少なくありません。
これはCDPではまず起こらない問題であると考えています。というのも、サブコードというのはプリエンファシスフラグだけではなく、CDPの表示に必要な現在の再生位置やらなんやらの重要な情報が含まれており、一緒に読んでるのではないかなと思います。だからこそ、CD初期時代やらその後の再発やらで別に問題視されていなかったとも言えます。まあ、頭の中でこうであると考えても、斜め上を行く実装の機器というのはあるもので、実際には一つ一つ当たってみないとわからないですが。
byserieril at2020-07-05 12:31
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serieriさん、初めまして。
A LONG VACATIONは私にとってオーディオ的に忘れることの出来ない一枚です。14歳のときに生まれて初めて聴いた本格的オーディオに衝撃を受けた、そのデモCDだったからです。システムはソニーのCDP1号機とセパレートアンプ、JBLの4345というものでした。
(もう40年近く経ちますが、この時の音以上に衝撃を受けたことはありません。中学生の初恋みたいなものですね)
その2年後、必死にアルバイトしたお金で、漸く自分のCDPを購入し、同時にこのアルバムを購入することが出来ました。
私の盤には35DH-1 131とだけ書いてあります。昔使用していたL-D1というプレイヤーにエンファシスが点灯した記憶があります。
懐かしくてついレスしてしまいました。
bytaketo at2020-07-06 00:04