日記
G Ride Audio GEM-1 初期感想
2012年08月07日
G Ride Audio GEM-1が届いて、いろいろと試しています。
まだ、鳴らし始めて一週間ほどの印象に過ぎませんが、最初から、イイ音、してますよ。
気に入った?と問われたら、すかさずイエスです。
購入直後にありがちな硬さはありますが、トゲトゲしさまでは感じられず、適度な柔軟性もあり、細部の表現もハイレベル。
ボーカルレンジの明瞭な再現力は特に魅力的で、そこばかりに耳を奪われがちですが、楽器音の実体感も好印象です。
音の立ち上がりは素早い方、消え方はわずかに余韻のある減衰をしています。
音のまとめ方には、センスと『Gのポリシー』を感じます。
ギャングスターであることの自覚とでも言いましょうか。
ノリが良く、ゴキゲン、パワフル、エネルギッシュで勢いがある音です。
逆に、穏やか、お上品、清楚などのニュアンスは、今のところほとんど感じ取れません。
少なくとも、私には。
接続しているLINN DS自体、上品さを漂わせているはずですが、アンプとしての支配力が強いのかもしれません。
ですから、勇壮、雄大に、大ホールでの、大編成オーケストラなどを聴くのには、私は、最優先に使う機器ではなさそうです。
もっとも、私がこういう曲を聴く際には、真空管式アンプを使うことが多いからで、全く適していないわけではありません。
それでも、音楽が、無心に心地よく聴け、まどろむ環境、とは少し違います。
同じ無心でも、無意識に聴いていて、自然と指先がリズムを刻み、首を振っている。
そんな感じ。
実は、この無意識にリズムを刻む動作は、私は滅多にしません。
多数の機器を使ってきて、アンプで言えば、過去には、AT-DHA3000と、特注品のHPA-20CTGとHPA-30CTGで経験しただけです。
果たして、GEM-1は?
くやしいですが、ついついやってしまいました。
DSに同時に接続しているHPA-30CTGと交互に聴いている最中に、『似てるとこもあるなー』とか考えながら。
くどいですが、無意識にです。
音調の基本は、陽気なアメリカンサウンド。
ポップス系の明るさと楽しさは、ストレートに伝わります。
ジャズボーカルも立体感があり、味わい深くて良いのですが、バラード系より、リズミカルな楽曲の方が好ましいです。
R&Bやゴスペルなども、哀愁より、訴求といった趣き。
個人的には、ロックが、かなりツボでした。
国内に目を向けて、具体的に書いてみます。
GEM-1試作機の感想をお見かけした時に、数名から名前が出ていたPerfumeさん。
到着前から、他の機器で予習がてらいろいろ聴いていましたが、面白い曲も多くて、最近、再生頻度が高めです。
楽器の生音ではなく、電子音ベースで、音があちこち飛び回り、音の高低も意図的に極端にしているので、トロい機器では、もたつき感が出てしまいますが、テキパキ歯切れよく鳴らし切っています。
また、無感情な歌唱を義務付けられているそうですが、GEM-1で聴くと、やや人間味を帯びるのが不思議な現象でした。
あと、以前に、どこかで話題になっていた手嶌葵さん。
ゲド戦記のSACDは発売時から持っていましたが、いくつかCDを買い足しました。
特徴は、個人で捉え方は様々でしょうが、私には、デビュー時の印象が強く、たどたどしさを残し、やや元気がないような儚げな雰囲気が魅力だと思っていました。
少なくとも、肉食系でも、体育会系でもない。
その後のアルバムをいくつか聴いてみると、確かに大人の女性として成長されていかれていることに気付きます。
GEM-1で聴くと、他の機器での印象より、健康的で、血色が良くなったようです。
生命力が増し、活性化されたようで、試作機での、どこかで見掛けた評価と真逆すぎて驚きます。
これが、その後の機器改善の影響なのか、その方と私の捉え方が正反対なのか不明ですが、興味深い結果です。
ここまで、なんだか褒めすぎのようですが、それだけのポテンシャルの高さは確実に伝わります。
もちろん、気になる点もあります。
先日も書いたように、アッテネータの切り替え段階が粗く、細かい音量調節は苦手であること。
PCや可変出力付きDAC経由とかなら、気にならないかもしれません。
また、本体側が軽すぎて、ジャックの抜き差し時にしっかりと押さえていないといけません。
もっと言うと、リスニング中にも、ケーブルに少し圧力がかかっただけで、本体がすべって動いてしまいます。
応急の対策として、ソルボのシートを使っているのも、先日書いたとおりです。
音では、曲によっては、明瞭で分離が良すぎるため、各楽器音がバラけて聞こえることもあり、一体感に欠けるとの印象を持つ方もいそうです。
試作機での試聴の感想でも、似たようなことを言われていた方がおられましたが、その点は理解できました。
私自身は、各楽器の演奏者のテクニックを堪能する聴き方をすることもあり、こういう高分解能の音は歓迎なので、不満点ではありませんが。
マスタリングスタジオでのモニタリング時は、スピーカーで鳴らした時に、渾然一体となる状況を逆算しているそうなので、少しその性格が強調されているのかもしれません。
また、溌剌としているため、刺激が強く、他の機器に比べると相対的に聴き疲れしやすいのは避けられません。
このアンプの性能を活かそうとして、同じような高分解能なヘッドホンを充てると、どうしてもその傾向が強まります。
ステップドアッテネータのヘッドホンアンプは、4機種、5台目で、どれも音量の大小にかかわらず、くっきり、はっきりなのは良いのですが、全般的に、リラックスできる音とは逆方向です。
海外での高級アンプに、アッテネータと真空管の組み合わせが多いのも、日本に比べ、比較的ヘッドホンファンの年齢層が高く、クラシックやジャズをリラックスして聴く人が多いらしいことと、無関係ではなさそうです。
最近まで、『アッテネータと真空管とか、どーなのよ?』と思っていましたが、GEM-1での音を聴いて、ちょっと考えを改めました。
また、そこで、推奨ヘッドホンである、ゼンハイザーHD600+CARDAS Clearケーブルの狙いが掴めた気がします。
HD600は、昨今の最新ヘッドホンからすると、ナローレンジ気味です。
スペック上の話ではなく、聴かせ方が。
良かれと思って最近のヘッドホンでひとしきり聴いた後に、HD600+Clearで聴くと、すごく刺激が減り、聴きやすく、穏やかで落ち着く感じがします。
これが、Clearの効力か、音情報を削るわけでなく、物足りないと感じるギリギリのところで踏みとどまる、絶妙なバランスを保っています。
実際、試しにHD600標準ケーブルで聴くと、さすがに多少よどんで、ヌルく思えてしまうので、Clearが活きているのでしょう。
相性が良いとか、帯域バランスが優れているとか表現するより、私には、GEM-1の勢いが良すぎるのを中和させる効果と言った方がしっくりきます。
トップクラスの装着感の良好さも、快適さに寄与しているのも疑いようがないです。
なんだか以前にも覚えのある感覚でしたが、過去に、ここの他の方の日記にコメントするため、久しぶりにATH-A900を引っ張り出して聴いたときもそうでした。
これみよがしな高音質とは違い、中庸さが心地よかったのです。
これも、装着感が良い機種ですし、HD600同様、ロングランの定番商品になった理由がわかります。
まだ、結論を出すほど聴き込んでも、機器が馴染んでもいないですが、乱暴な意見を承知で言うと、こういう元気なアンプこそ、本来、私のような老化しだしたオッサンではなく、若い世代にこそ楽しんでもらえたらと思えるサウンドです。
もちろん、現実には価格の問題が立ちはだかり、生産台数も限られていて、中古市場も含め、出回るようなものではないのが、つくづく残念です。
今後、もっとプレーヤーや音源を変えて聴き、気付いたことがあれば日記にまとめていこうとは思っています。
お一人でも、たった一行分でも、何か参考になる方がおられるとしたら本望と思うことにしました。
それでも、あくまでも『個人の日記』なので、わざわざ見に来ておいての、しょーもない揚げ足取りやセンスのないツッコミは、ほどほどに願います。
結局は、何も書かなくなるのが、一番、ラクチンなのですから。
●Agara AGH-1000
GEM-1登場からやや遅れて、Agara AGH-1000という、高級アンプも発表されました。
試作機からは、筐体の強化やアッテネータが48接点に変わるなど、さらなる高音質化もなされ、9月から一般販売とのことです。
写真で見るに、ざっと12kgくらいはありそうですね。
価格も当初の予定価格からも上昇していますが、それだけの価値のある改善なのでしょう。
この発表より10ヶ月先に、左右別調節のアッテネータ搭載アンプを特注品で依頼し、完成後、すでに5ヶ月ほど使っている立場からすると、この方式は、正直言って、かなーり不便で面倒です。
しかし、セパレーションに対しての効果も絶大なので、後悔どころか納得して大満足しているので、期待しています。
たまたま偶然ではありますが、同じ視点での高音質化へのアプローチだったので、勝手に共感しているのです。
すでに、かなりの仮予約もあるようで、このクラスの機器に興味があるだけでなく、現実に導入される方が大勢いると知り、面白くなってきました。
実物と接するのが楽しみです。