日記
バルエコのギター
2012年09月06日
全盛期のセゴビアの芸術は凄まじいの一言です。
指揮者トスカニーニはアメリカに来ていたアンドレス・セゴビアに
シャコンヌを演奏してもらいその表現の豊かさに大興奮をしたと語られています。
ギターという楽器の許容範囲を超えるような豊かな音、セゴビアの全盛期は恐らく
製作者のヘルマンハウザーも意図していなかっただろう、豊かな音量と音色を有していました。このセゴビアが強く愛した「ハウザー」は多くの名演を残した後、高音弦に原因不明の「ビビリ」が発生してしまい、それは製作者のハウザーによっても治せなかった。代わりの選りすぐられた他のどのハウザーを渡されても結局セゴビアは首を縦に振ることなく、以後、ホセ・ラミレスのギターに持ち替える事となりました。
一般的には言われていませんが私はこのハウザーの故障はセゴビアの多彩で強靭すぎるタッチこれが大きな原因なのではないかと考えています。私も多くのギタリストと同じようにセゴビアのタッチを研究をしてきました。
ギター製作者はプレイアビリティの為に軽いタッチで良く遠くまで響く(遠達性ある)楽器を作ります。セゴビアは勿論軽いタッチも使いますが、非常に短く切りそろえた爪と豊富な指先の肉、がっちりとした手(骨)の重みを駆使して誰よりも多様なタッチで豊かで多彩な音質を紡ぎます。
時に製作者も意図しない弾き方の事もあるでしょう。
それはまた楽器にとって強いストレスをかける弾き方に成り得てしまいます。
何れにしてもセゴヴィアの芸術の独自性はクラシックギターを学ぶ者の多くに多大な影響を与え続けています。
(キャサリンバトルとのブラジル風バッハ、他南米物)
マヌエル・バルエコはキューバ出身のギタリストです。
国際コンクールにバルエコ青年が出たときにはセンセーショナルだったようです。
奏法は一言で言えば端正、力みは丁寧に排除され、無理をしない中の等身大の表現、切れ込み良い音質、正確な音価は演奏者の人格を示します。
セゴビアをまったく感じさせない奏法でいながら完成された高い芸術性にきっと
多くのギターファンがバルエコの登場を新しい風が吹いた様に感じたのではないでしょうか・・
攻めに行く奏法ではないかもしれませんが、端正な美しさ、繊細さに心安堵する。
私はそのような感想です。前に攻めていないからこそ出る自然で繊細な表現もあると教えられます。
演奏家のスタイルは年とともに少し変わりますが恐らくバルエコはこの先も殆ど変わらないと想像します・・。

バルエコの演奏を聴いているとそのようなタッチになっていき半日も聴き
レッスンでも行こうものなら師匠にバルエコ聞いてたろ!?と窘められることになります。
生は聴いた事ないのですが恐らく(聴いた人達によると)音量は小さ目です。
またギター独特の演奏技法(アポヤンドなど)を使わないので物足りない、
面白みがかけるというのが従来型のクラシックギターを学んでいる者の順当な考え方でしょう。
ギタリストにとってバルエコの評価はセゴビアと同じように許容(受諾)、
拒絶と大きく二分します。イエペスもそうです。
そういった事は言ってみれば一流の証しなのかも知れません・・
只、ニュートラルな音楽ファンであればバルエコの素直な音楽に自然に満たされ感動できる様に思います。
キューバ人のバルエコですが強い思いを持ってアメリカに暮しています。
バルエコは同じキューバ人の鬼才、ギタリスト兼作曲家のレオ・ブローウェルに強く憧れを持ち育ちました、「私の全てだった」とまで語るほどでした。しかし、ブローウェルがアメリカに亡命するために船をのっとったキューバ人を死刑にすることに署名した事を知り、バルエコは深く傷つき、決して癒えぬ大きな傷を胸に作ったようです。
抑圧された母国、暗い少年時代の思い出、愛着・・
言い知れぬ傷がバルエコの心には刻まれているのでしょう。
「僕はもう戻らないよ」
愛する兄弟のいる土地へ戻らない心境、境遇を思うと人事ながら胸が詰まります・・
その奥ゆかしく繊細な優しさ、離れた母国への愛がバルエコのギターの真髄ではないでしょうかね・・。
レス一覧
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EVAさんこんばんは!ありがとうございます。
「ギターは小さなオーケストラ」とても懐かしい響きです。
パガニーニが学び、ショパン、ベートーヴェン、ベルリオーズ、
多くの名立たる楽聖達が魅せられたギターはホンと奥深い魅力に溢れています。
そうですね、人生に無駄なんてこと絶対ありませんね。
短い人生の中で巡り廻っていつの間にか何かの役に立っている、
そんなことが多いですね。心持ちはホンと大切ですね。
byナポリの6 at2012-09-06 18:48
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またまたギターですか!!
以前ご紹介頂いたAtahualpa Yupanquiですが、先程見てみると再生回数が20回を超えていました。カンタータ全集の再生回数が概ね200回を超えていますからまだまだですが、聴けば聴くほど味が出てくるのは名曲、名演、さまさまというところですね。
ナポリさんがご紹介なさったCDソースの一覧表が欲しくてたまらないマーサでした。
(笑)
byマーサ君 at2012-09-06 22:26
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ナポリ6さんこんばんは
バルエコさんは良く知りませんが、セゴヴィアはレコード数枚とCDもあります、聖母の御子という曲が好きでした。短い曲ですが美しいと思い何度も聴きましたね。随分と昔の話ですが…
byくにお at2012-09-06 23:06
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マーサ君さんおはようございます!そうです!またギターw
最近やっと身締めて練習できてるのでギターのCD聴く事が多くなってます。
次もギターかも知れませよ^^ハズレと思わないでくださいね(涙)
一覧wwマーサ君さん俺の事好きでしょ?(笑)あはは♪
今まで紹介した中でヴァイオリンでしたらシゲティのバッハが一番好きですよ。シゲティは音を僅か低くしたり高くしたりと、要所要所アウトさせて音楽を作ります。正確な音から巧みに外す事で得られる表情が何とも言えない深みを感じます。
是非手に入れてお聴きくださいませ。
いやーそれにしてもユパンキ俺より聞いてますね(笑)
byナポリの6 at2012-09-07 08:41
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くにおさんおはようございます。
聖母の御子良いですね!朝からセゴビアの演奏聴きましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=ZHwL6wzMskA
この曲はホセルイスの演奏の方が心に残っています・・
残念ながら映像は見当らなかったです。
byナポリの6 at2012-09-07 08:51
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ナポリの6 さん
残暑厳しいですね。
ギター音楽大好きです。大家セゴビア、イエペス本当に素晴らしい芸術家ですね。
ポップス系パコ・デ・ルシア、バーデン・パウエル等も良く聴きます。
異色盤として、ビセンテ・ゴメスがオーケストラをバックに弾いたラテンの名曲集がありますが、クラッシック系のギター奏者が奏でると煩くなく、気品さえ感じられますね。
bymakotya at2012-09-07 11:43
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makotyaさんこんばんは!
朝晩は過ごし易くなりましたがまだまだ暑いですね><
makotyaさんもギター音楽がお好きなのですね、よかった♪
たまに書くんで見てやって下さい。
一瞬ビセンテ・アミーゴが頭に浮かんでしまいましたが
ゴメスさんもいらっしゃいましたね。
ゴメスさん私は企画物の1,2枚しか持ってないかもしれませんね。
オケをバックにという編曲物は私はラゴヤのものを聴いたりしましたが中々美しいですね、ギター+○○というのも実は大変美しい録音物がちらほらとあります。
レス頂いてバーデンパウエルも書きたいなと思いました・・
byナポリの6 at2012-09-07 19:56
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ナポリさん、こんばんは(^o^)
ナポリファンですよ。
いつもソースのご紹介がとてもステキで渋いですから♪( ´▽`)。
シゲティですか!
了解です。
Amazonだとヴァンガードコレクションが出ていますね。あるいは手始めにパルティータか。
迷います。
byマーサ君 at2012-09-07 20:54
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マーサ君さんこんばんは!
さっき検索しました。
バンガードコレクションの方が色々あって良いですね。
ドビュッシーとか私も聞きたいですね。
モノですがお値段の以上の聴き応えあると思います。
何しろ一生聴けますから・・
シゲティならどれでも間違いないです、これぞ音楽です。
byナポリの6 at2012-09-08 00:19
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ナポリさま、おはようございます。
調べて頂き有難うございます。
そうですか! 了解です。
早速堪能してみます。
♪( ´▽`)
byマーサ君 at2012-09-08 07:36
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するめの如く(英雄さん節)噛むほどに味わいが広がります。
ご堪能下さいませ。間違いなく無人島行きです。
byナポリの6 at2012-09-08 22:37
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ナポリ様、有り難うございます。
スルメですか(笑)大好物ですが、最近避けております、食べ過ぎになるため(爆
ヴァイオリンも食べ過ぎになら無い程度、末永く堪能し続けようと思います。
とは言え、気がつくとアマゾンから「ご注文頂き有り難うございました」メールが17件も(超爆。
しかも各メールにズラズラと並ぶヴァイオリン曲のCD。合計何枚買ったかは知りません。数えていません(驚異)
そんなに聴く暇あるの?って。
また届きましたらご連絡致します
\(^_^)/
byマーサ君 at2012-09-08 23:24
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マーサ君さん今晩は
はい~楽しみにしております~。
ご利用は計画的に。ナポリ
byナポリの6 at2012-09-12 20:25
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