日記
Auro3D邸SonettoⅧの位相整合対策
2020年10月26日
Auro3Dさんがお使いのソナスのSonettoⅧの位相整合のために採った対策について記録しておこうと思います。
これはAuro3Dさんのこの日記についての追加資料です。
この記事はサラウンドのシステムをお使いでない方にとってはほぼ無意味な情報ですので、どうぞスルーしてください。
きっかけはAuro3Dさんが現行のマルチchサラウンドのシステムの新しいセンタースピーカーをどれにするかということだったと思います。
現在ご使用中のフロントのLRはソナスのSonettoⅧをお使いでそれに合うセンタースピーカー。
でもその過程でわかったことはSonettoⅧの各ユニットの位相の問題。
これはAuro3Dさんの日記に書かれている通り、
Woofer・・・正相
Mid・・・逆相
Tweeter・・・逆相
ということになっています。
ソナスの3wayはこのシリーズ以外のものもこうなっているものが多いようです。
WooferとMidのクロスオーバー周波数は270Hとかなり低いので、AVアンプの音響補正をかけるとスピーカー全体の位相が逆相と判断されます。
これはAVアンプの位相の判断が400Hz~1KHzくらいの中域でされるからだと思います。
この指摘に従ってSonettoⅧを逆相接続すればシステム内の2wayのスピーカーとの位相は合うので音像定位の問題はないのですが、270Hz以下の帯域で他のスピーカーとの位相関係が逆になってしまいます。
低域で位相が逆のスピーカーが組み合わさるとお互いに打ち消しあうことになるので低域の押出しや迫力の低下になります。
SonettoⅧは低域と中高域のバイワイヤ接続が可能になっているので、これを利用して中高域もしくは低域の極性を逆に接続すれば他のスピーカーとの位相整合は可能なのですが、その場合には270Hz付近に大きなディップが生じるため、聴感上の違和感が生じる可能性があります。
Auro3Dさんのこの日記にそれを試した結果が書かれています。
やはりどうも具合が悪いようです。
帯域分割のネットワークを使うとき、例えばウーファとスコーカーでは以下のような接続にします。
これはクロスオーバー周波数でディップ(落ち込み)を作らないためです。
スロープ ウーファ スコーカー
1次フィルター 6dB/oct 正相接続 正相接続
2次フィルター 12dB/oct 正相接続 逆相接続
3次フィルター 18dB/oct 正相接続 正相接続
4次フィルター 24dB/oct 正相接続 正相接続
SonettoⅧでは2次フィルターが使用されているためウーファとスコーカーで逆接続されているものと考えられます。
逆相に接続しているのには理由があるのです。
かなり深刻な状況なのですが、この問題の解決のために思いついたのが、以下の方法です。

水色の点線で囲まれた部分がAuro3Dさんが「K&Kフィルター」と名前を付けてくださったアダプターです。シンプルな1次フィルター。
パワーアンプをスピーカー1台当たり2台使うバイアンプ方式でプリの出力と2台のパワーアンプの間にこのフィルターを挿入します。
こうすることでスピーカー内の2次フィルターと組み合わせることによってトータルとして3次フィルターを構成するのです。
これでWooferとMid/Highを同相にしてもディップが生じなくなるはずというロジックです。

フィルター回路による音質劣化を少なくするためにコンデンサーにはポリプロピレン・フィルム、抵抗には非磁性のオーディオ用を使いました。
パッシブなので抵抗の値はプリのAV8805の出力インピーダンス、パワーのMX-A5200の入力インピーダンスを考慮して決めています。
AV8805にとってはかなり負荷が重くなるので少し心配でしたが、問題なく動作してくれたようです。
この結果についてはAuro3Dさんのこの日記をご覧ください。
Auro3Dさんに満足していただいたようなので提案した私としてはホッとしています。
ユニット間の位相が逆になっているスピーカーをマルチchサラウンドのシステムに組み入れたい時、もしそのスピーカーがバイワイヤー接続に対応していれば比較的簡単に位相整合できるのがこの方法のメリットだと思っています。
レス一覧
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K&Kさま:
先ほど、元住ブレーメンさんという方から、私の日記にレスをいただいたのですが、この方もソナスを使ってサラウンドオーディオを構築しておられるそうです。ソナスは、やはりB&W、JBLと並んで現代では人気のあるメーカーなので、そのような方は潜在的に多くいらっしゃると思います。
「K&Kフィルター」はこうしたソナスでマルチチャンネルシステムを組んでいる方には、「逆相です」という、心臓に悪い(笑)AVアンプからのご託宣を防げる非常に有効な手段ではないでしょうか。
この前も言いましたが、この際、製品化されてはどうですか?(笑)まあ、技術のある方は自分で作れるのかもしれませんが、私のようにはんだごても握ったことの無いような人には(特にソナス使いにはその手の方が多いような気がしません?=笑)
byAuro3D at2020-10-26 21:33
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K&Kさん
こんにちは。
最初にK&Kさんがこのアイデアを紹介された時は、「位相整合の為にネットワークのスロープ特性を変化させるのは、別の問題が発生して上手く行かない」と思ったのですが、好結果だったようですね。さすがです。
中高域だけを180度回転させるより、低域と中高域をそれぞれ90度ずつ回転させたのが良かったということでしょうか?話はそう簡単ではないのでしょうが...
byのびー at2020-10-27 04:46
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K&Kさん
こんにちは。
良い結果が出て良かったですね。
今回、バイアンプでのプリアンプとパワーアンプの間にフィルターを入れておられますが、パワーアンプとスピーカーの間に入れても可能ではないでしょうか?
その際、バイアンプではなくバイワイヤリング接続でも可能ではないでしょうか?
パワーアンプ直前挿入とスピーカー直前挿入での、メリット、デメリットがあればお教えください。
byミネルヴァ at2020-10-27 15:11
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Auro3Dさん、
スピーカー内の2次のフィルターは比較的簡単に構成できるので昔からよく使われてきました。でも、サラウンドに使おうとしたときに位相の問題が生じるのでメーカーもかなり悩んだのだと思います。
ソナスは小型の2wayとかスコーカートゥイータの間とかに使う高域のフィルターには3次を使っていますが、低域のクロスオーバーが2次なのはやはりこの帯域で音質上2次のフィルターを超えるものはできなかったのかなぁと想像します。
どのスピーカーメーカーも悩んでいると思います。
チャンデバを使えば簡単なのですが、スピーカー内で特に低域では高次フィルター組むのは難しいのです。
≻「K&Kフィルター」はこうしたソナスでマルチチャンネルシステムを組んでいる方には、「逆相です」という、心臓に悪い(笑)AVアンプからのご託宣を防げる非常に有効な手段ではないでしょうか。
そうですね。バイワイヤー接続が可能な3wayの機種にはお勧めですね。
でも、クロスオーバー周波数は機種によって違うし、プリアンプの出力インピーダンスやパワーアンプの入力インピーダンスを考慮して部品の定数を選ぶ必要があるので、オーダーメイドになると思います。
私が依頼を受けて趣味で作ることはできるでしょうが、ビジネスとしてはちょっと…(笑)
byK&K at2020-10-27 19:28
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のびーさん、
こんにちは。
≻最初にK&Kさんがこのアイデアを紹介された時は、「位相整合の為にネットワークのスロープ特性を変化させるのは、別の問題が発生して上手く行かない」と思ったのですが、好結果だったようですね。
私も心配したのはスロープを変えることでソナスの音ではなくなってしまうことでした。
メーカーが意図していないモディファイですから。
でもソナスを愛するAuro3Dさんに満足いただけたようなのでホッとしています。
音は少し変わりましたが、ソナスの魅力的なDNAは十分生きていると思います。
3次フィルターにすることで低域と中高域の位相を逆にしなくてもよくなるので理論上再生波形はこの方が原音に近くなるはずです。
「ソナスがスピーカー単体ではやろうとしてもできなかったことを外部フィルター追加で実現した」と思いたいのですが。(笑)
≻中高域だけを180度回転させるより、低域と中高域をそれぞれ90度ずつ回転させたのが良かったということでしょうか?話はそう簡単ではないのでしょうが...
エヘヘ、これ説明が結構難しいのです。Auro3Dさんには拙宅においでいただいた時にご説明したのですが…
byK&K at2020-10-27 19:59
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ミネルヴァさん、
こんばんは。
ご質問の件ですが、スピーカー直前挿入は事実上不可能なのです。
スピーカー内のネットワーク回路をご覧になるとおわかりになると思いますが、4~8Ωくらいの低インピーダンスのスピーカーの前でフィルターを組もうとすると特に低域では巨大なコイルまたはトランスと巨大なコンデンサーが必要になります。
そしてそれをスピーカーの外部に設けてフィルターとして機能させようとしてもスピーカー内部のネットワーク回路と干渉してうまくいかないのです。
私はフィルター回路のの専門家ではないのでスピーカー内で3次フィルターを構成する場合、具体的にどうやっているのかよくわかっていませんがかなり大変なはずです。
ましてやスピーカー内の2次フィルターの外側直前に何か付加して3次にする方法は私には想像できません。
、
byK&K at2020-10-27 20:34
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K&Kさん
こんにちは。
バイワイヤリングのハイ側には、Cを直列に入れてローカット、ロー側にはLを直列に入れてハイカットすれば良いと単純に考えていましたが、それではうまくいかない、ということですね。
私もフィルター回路の専門家ではないです。学生時代、空芯コイルを手巻きして、ネットワーク回路を自作した程度です。
3rd Order(-18dB/oct)のネットワーク回路図を見ると2nd Order(-12dB/oct)に対して、スピーカーユニット直前にLやCが直列に挿入されています。
下記を参照すると、JBL 4429のネットワークは、ウーファハイカットが3rd Order(-18dB/oct)になっていますが、それほど大きくない同様のコイルが二個使われています。しかし270Hzクロスでは相当大きなものになりそうですね。
http://blog.livedoor.jp/johnny_trio_lsr/archives/1334132.html
3rd Order(-18dB/oct)のネットワークはクロスオーバー周波数において位相差が270度ありますので、同相、逆相のどちらの接続にも合うようです。
byミネルヴァ at2020-10-28 16:17
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ミネルヴァさん、
こんばんは。
>バイワイヤリングのハイ側には、Cを直列に入れてローカット、ロー側にはLを直列に入れてハイカットすれば良いと単純に考えていましたが、それではうまくいかない、ということですね。
そうなんです。
スピーカー内に2次フィルターが存在する場合、ロー側の入力にはコイルが接続されているのが普通ですが、それに対しスピーカーの外にLを接続してもスロープは変わらずに単にカットオフ周波数が下がるだけです。
スピーカのネットワーク回路のように低いインピーダンスのところでパッシブの高次フィルターを構築するのは難しいのです。
2次フィルターに1次を加えるみたいな単純な考え方はできません。
LとCを組み合わせてトータルとして3次にするしかないわけで外に何か付け加えてできるわけではありません。
しかもスピーカーのボイスコイルは単純な抵抗ではなくL成分がありますからさらに複雑です。
スピーカーネットワークはスピーカーユニットの特性を熟知しているエンジニアでないと設計が難しいです。
スピーカーユニットの特性やネットワーク回路の情報がないと手も足も出ませんし、その情報がわかったとしても外から何か加えて3次のフィルターを構成することは難しいと思います。
JBLのネットワーク情報見ました。
JBLのモニターSPでもサラウンドシステムに組み入れられることを考慮して全ユニットを正相つなぎにしようとしているのでしょうか?
かなり複雑な構成ですね。
でも、あの大型ホーンスコーカーでは所詮タイムアライメントなんて揃いようがないような気がするし…
どうしてあんなネットワーク構成にしたのか理由を聞いてみたいです。
スピーカーの仕様に各ユニットの位相情報が書かれているのはあまり見ないのでサラウンドシステムのためのスピーカー選びをするユーザーにとっては難しい状況です。
byK&K at2020-10-28 19:07
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K&Kさん、
Auro3D邸での実験へのリモート参加や拙宅でのK&Kフィルターの実験について日記を書きました。ご覧いただいて、間違ったことなどあれば、レスお願いいたします。
byTomy at2020-10-30 00:45