日記
16bitと24bitの違いについて 補足
2015年07月13日
16bit素材と24bit素材の再生音質の違い(前々回の日記をご覧下さい)について、言葉で説明するのはなかなか難しいのです。
どなたかの日記に「16bitと24bitの音の違いについてブラインドテストをしたが、一般には『全く聴き分けられない』という実験結果レポートがある」というのがありました(記憶が曖昧ですが概ねそのような内容)が、そもそもテスト主催者がきちんと音の違いを理解していたかどうか? 理解していたとして、その違いがわかるシステムでテスト素材を被験者に提供できていたかどうか? 私は疑問です。
その実験は、オーディオ装置の評価などによく採用され、学問的に認められているダブル・ブラインド・テスト(2重盲検法)だそうです。2重の意味は、被験者のみならず施験者も内容を知らないという意味で、良否を当てるわけでなく両者の間に差があるかどうかのみに注目する方法らしいです。
一般通念のように「24bitになれば音のつながりがなめらかになる」などと主催者自身が勘違いし、違いの出ないテストマシーンを使用し、かつ、被験者に予めこのような間違った概念を植え付けていた(つまり、なめらかさの差は?などと最初問うていた)としたら、どの被験者も方向音痴になり路頭に迷うのは当然のことです。
そこで、丁度良い材料を見つけましたので、これを使って「音質の違い」を説明したいと思います。
元ネタは、レコード芸術(2014年9月号 175頁)の連載記事(エイベックス・クラシックス『プレミアム・ライン』を聴く)です。

ここに、某評論家と同誌編集部員二人の試聴記が載っています。その中から、本論に関係すると思われる部分を抜粋します。この記事は特定商品の宣伝記事という一面も否定できませんので、そこは捨象して読んでください(笑)。
以下、抜粋です。
きりりと引き締まるピアノの音とフォーカス
編集部員B 私はSACDはCDに比べてフォーカスがより合ったように思いました。それに音の余韻も、SACDのほうがより整理されて見通しがよく、音が干渉し合わずに、きれいに聴けたように思いました。
編集部員A CDは、どこか親しみやすい音作りといいますか、フォーカスが少し甘くて音像が大きい傾向があると思いました。ところがSACDは、フォーカスが引き締まって、肥大せず、音がきれいに球面波のように広がっていくのが聴き取れるようになります。ピアノの音そのものの質感も、密度が高くなって、よりクリアになったと思います。
評論家 たしかに音の質に関しては、SACDがより引き締まった音になっていますね。アンダンテのところなど、SACDのほうがより雰囲気が豊かです。
音場が見事に整理され質感も大幅アップ
編集部員A さきほどのピアノ同様、SACDは、きちんと残響までも整理されて、全体の重心が下がります。音像も密度が高くなって、フォーカスが定まり、ステレオならではの音場感が出て来ます。
評論家 これはもうマスタリング云々の違いではなくて、中から出て来る情報が相当に違いますね。
編集部員B 低域の解像度がすごく上がりました。
評論家 SACDは、弦もつややかです。SN比がよくなって、ノイズフロアが下がった分、マスクされていた音が出てきたのでしょうね。全体の印象も大きく変わりました。
SN比の大幅アップでさらに豊かな雰囲気に
評論家 とてもいいです。いい演奏を、よく音楽のわかっている人が録っているという当たり前のことがストレートに伝わってきます。SACDだとよりクリアになるし、声と器楽の距離感も、もともととてもいいのですが、SACDになるとよりはっきりわかります。それから、声の質感も抜群。臨場感もたっぷりとして、これは非常によかった。
編集部員B ヘンデルを聴いて、最初に出てきた瞬間、やっぱりSACDのほうが音が落ちついている印象でした。くらべればCDは、どこか器の中に無理に音を詰め込んだような感じで、その分すこし音にきつさがあったように思いますが、SACDは、そこから解き放たれたようです。とても聴きやすくなりました。
評論家 《オンブラ・マイ・フ》の最初の声は、どこか楽器っぽい音で始まります。CDでは最初驚いたのですが、でもSACDでは明らかに人間の声だということがわかる。そういう質感表現の違いはとてもありますね。
編集部員B あと、SACDのほうが楽々と音が出てくる感じがします。
評論家 ふわっと音が広がる感じがしますね。SACD化の効果は、こういう録音だと、とても顕著ですね。
以上、かなり長い抜粋の引用になりましたが、どうですか?
上記の引用部分を「WORD」や「メモ帳」などにコピペして頂き、CDを16bit音質、SACDを24bit音質にそれぞれ置き換えて、もう一度、読んでみてください。それが、まさに「16bit素材と24bit素材の再生音質の違い」なんです。
冒頭のブラインドテストで施験者がこのことをきちんと理解していれば、テスト結果がまるで違ったはずだと思うのは、私だけでしょうか?
それにしても、yohineさんの記事が 2012/4、K&Kさんのブログが2013/2(「量子化の精度つまり16bitと24bitの違いなのだと思います」)、私の問題意識が芽生えたのが2015/2ですから、いやはや、先達の皆さんに改めて敬意を表します。
レス一覧
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yamamoto2002 さん、こんばんは。
レスどうもです。内容拝承しました。
丁度、NHK FM放送で放送されたピアノ協奏曲でCD音源のもの(24bit/48kHz)がありますから、それを聴いてみてください(委細はメールで)。「違い」が分かるには、その同じCDをリッピングして、そのファイル再生と聴き比べて頂くのが一番ですが、ま、それは別の機会に。
ただ、この違いが分かるにはそれなりの再生システム性能が必要です。そのことも別途ということで。まず、聴いて頂いて、そのご感想をここのレスにお書き頂ければと思います。
何だか私のIEやChrome(Win7)では、Philewebでの書込みがメチャ遅いのでまずはここまでとします。
byかもん! at2015-07-13 21:57
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はじめまして
http://natuch.com/2014/12/23/quantization_bit/
参考になるかもしれません
byKurashiki at2015-07-13 23:11
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yamamoto2002 さん、
後学のためにzipファイルをDLさせて頂きました。
ありがとうございました。
byかもん! at2015-07-13 23:46
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Kurashiki さん、はじめまして。
と同時に情報ありがとうございました。
早速、訪れてみました。このURL頁しかみていませんが、この方は非常に的確にポイントを指摘しておられますね。特に次の箇所。
「もっと顕著に現れるのがオーケストラの演奏です。オーケストラの場合、音量の大きいところと、小さいところの差が非常に激しいのが一般的です。ピアニッシモで演奏される部分など耳を澄まさないと聴こえないくらいの場面が沢山あります。
こういった場面の場合、量子化ビット数が大きいほど有利といえます。たとえば、オーケストラがフォルテッシモで演奏する場面とピアニッシモで演奏する場面の音量差が200倍(46dB)くらいあったとすると16ビットのCDの場合、ピアニシモの部分は見かけ上の量子化ビット数が半分の8ビットになってしまいます。
これがハイレゾ音源の場合は、24ビットから200倍(46dB)音量が下がったとしても、まだ16ビット分の量子化ビット数が確保されていますので、音が悪くなったと感じることがありません。」
更に、「ただし、まとも録音のものに限るということは忘れないでくださいね」とありますが、私なら「まともな再生システムも必要です」と付記させて頂きます。
ともあれ、一昨日来、私がここに書いてきていることが、それほど的外れでないことが分かり、大安心です(笑)。
とくに、「弱音」こそは、(特にクラシック)音楽の命、音楽の神の宿るところだと思いますので、その一番のところが自然に現わせる、というのがエッセンスですね。
今後とも、よろしくお願いします。
byかもん! at2015-07-13 23:48
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ストラさん、こんちは。
今さらレコード盤再生はないでしゅ。
交響曲全曲を聴くために、席を立つ、ビニール盤を裏返す、ちりやほこり払いの掃除をする、静電気を除去する、それでも再生再開したところで「チリチリ」と雑音が入る、ダイナミックレンジはあのダメCDより遙かに劣る、これではじっくり「音楽」に没頭する訳には行かないです。
デジタル技術がここまで進めば、ビニール盤は、音楽性を無視したお遊びでしかないと思いますよ。
byかもん! at2015-07-14 11:15
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かもんさん、こんにちは。
仰るようなアナログレコードの問題点により、もう25年ほどレコード再生は行っておりません。
アナログレコードとCDの歪特性は正反対で、アナログレコードは小さな音では歪が少なく、大きな音では非直線性歪が発生します。
逆にCDでは大きな音では歪が少なく、小さな音では量子化歪が発生します。
アナログレコードを、磁性体特有のヒステレシス歪の無い空芯型MCカートリッジで、柔らかい塩化ビニルの音溝をくぼませることの無いよう、針圧0.25gで再生した微小音のくっきり感は、ルビジウムクロック使用の24bitDACの音に匹敵するように思います。
byミネルヴァ at2015-07-14 15:52
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ミネルヴァさん、こんにちは。
レス、ありがとうございます。
そうですね。線型歪、非線型歪、ターンテーブルの回転ムラ、レコードのソリや、偏心、渦巻き型の音溝の湾曲、再生針が外周にあるときと内周にあるときの音溝と再生針の接触角度の違い、高域特性を維持するための針先の状態コントロール、再生するたびに摩耗するレコードの音溝、それによる高域特性の悪化、などなどきりがないですね。
これで「音楽性」を引き出すのは、まるで一発芸ですから、そのストレスも考えると、何のために「音楽」を聴くの? ストレスを増やすため? ということになりかねないです(笑)。
クロックによる低ジッタ確保、それが24bitの弱音再生音を支える、なるほどです。Oppo社は近々、新製品発売予定のようですが、仲間内で話しているのは、L/R独立DACチップ採用と外部クロック導入があればなあ、ということです。そちらも楽しみです。
byかもん! at2015-07-14 16:16
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こんばんわ
OPPOの新型、まだ情報が出ませんねぇ。
ライバル越えには、LR独立DACと電源・筐体の強化は欠かせませんね。ただ、アナログ5ch出力の多機能性で買っているユーザーも居ますから、私の予想は一個DACを増やしたトリプルDACです(笑)。
私はファイル再生とディスク再生、アナログ、どれも捨てられない派です。いえ、オーディオに限らず捨てられないんですけど・・・。
「手段が目的化するのを趣味という」という名言もありますので、アナログの手間がかかるのは趣味としては悪くないと思います。特性が多少悪くても、手間次第で自分好みの音に近づけやすいというメリットもありますし。
我が家的には、オケ・ピアノ・ブラス・民族音楽なら断然CDやSACD、弦楽器・室内楽ならアナログが快適に聴けます。ツボにはまったアナログのヴァイオリンの音は、いまでも素晴らしいと思いますよ。
byOrisuke at2015-07-14 21:07
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Orisukeさん、こんばんは。
当たり前のこととして他人様のご趣味についてとやかく申すつもりはないのです。
「デジタル技術がここまで進めば、ビニール盤は音楽性を無視したお遊び」だけれども、それぞれお好みのところです。お好きな方はどうぞ。
「ストレスも考えると、何のために『音楽』を聴くの? ストレスを増やすため? ということになりかねない」ので私には馬鹿馬鹿しいが、それが楽しい人には楽しい、それだけのことです。これもわかりきったことです。
ただ、ビニール盤まわしでなければ音楽性が出てこないように言われるとそうではないし、自分の信条として、無垢な若い人に『骨董趣味』に無駄金を使わせるような無責任な言辞はさけたい、ということはありますね。
このコミュをみていると、そのような言辞につられた「犠牲者」とみられる人が幾人もいるのは、お分かりのハズですが・・・。
byかもん! at2015-07-14 22:27
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かもん!さん、こんばんは
記事の転載をして頂いていたにも関わらずコメントが全く出来ておらずすみません。いくつかまとめてコメントしたいと思います。
16bitと24bitの違いが完成音源において見えにくいパターンはいくつか考えられます。まずはDACなどの機材のSNがそもそも良くない場合は違いを感じるのは難しそうです。StereoPhileの測定例を見るとわかりますが実測で-140dB以下のノイズフロアを実現できていない機材も多いです。これでは実際の音質で大きな違いがわからない可能性があります。
もうひとつ違いをわかりにくくしている要因はディザの存在です。図と合わせた解説はこちらがわかりやすいと思います。
http://ecaps.exblog.jp/21557645/
24bitのマスタリングから16bitに落とす際、このディザを使えば16bitでも24bitとはいきませんが数ビット拡張した情報量を表現することが出来ます。こうなると16bitでもなかなか侮れない音質になります。ますます再生機材によっては16bitと24bitの違いは聞き取りにくくなるというわけです。
ディザの種類によってもノイズフロアの分布は異なり、種類ごとの測定例はこんなものもあります。
http://innerportalstudio.com/new-dither-examples/
以上何らかのご参考になれば幸いです。
byyohine at2015-07-14 23:26
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yohine さん、こんにちは。
わざわざレスを頂き、かたじけないです。さらに追加情報までご開示頂いてありがとうございます。
>もうひとつ違いをわかりにくくしている要因はディザの存在
>http://ecaps.exblog.jp/21557645/
「量子化される前の信号に±0.5を超えない大きさのランダムな雑音を加えると、量子化雑音全体の量は減らないが目立った量子化雑音のピークがなくなり、量子化雑音が広い周波数帯域にわたり均等に分散されるという現象があり、この加えられる雑音のことをディザという」ということはモノの本で勉強していましたが、ご紹介頂いたURLに掲載の図形で見事にこの現象が理解できました。
「24bit素材を16bit素材に落とし込む(16bitのCDの器に入れる)」というのがこのディザを使った一連の作業のことを指すことも、本日、改めて理解できました。
>ディザの種類によってもノイズフロアの分布は異なり
>http://innerportalstudio.com/new-dither-examples/
最初の素人疑問は、そのように落とし込まれたCDに収まったデータからディザを取り除いて、元の24bit素材を取り出せないか、もし取り出せるなら、そのソフトを開発して、多くのCD資源を蘇らせることができるのではないかと思っていましたが、「Each manufacturer has what they consider the ideal way of doing this」ということなので、これは無理そうですね。
おかげさまでますます私の理解が深まりました。改めてご教授頂き、ありがとうございました。
今後とも、よろしくお願い致します。
byかもん! at2015-07-15 04:06
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他人の趣味にとやかく言うつもりがないという言葉とは裏腹にボロカスにかいてあるのはいかがなものかと思います。
異なる文化にたいして敬意をもてとまではいいませんが、投稿する前にご自分の書いた文章を反芻してみてはいかがですか?
byecho at2015-07-16 09:59
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