日記
青葉市子LIVEとBandcamp
2021年09月25日

少々前の話ですが、8月10日、渋谷WWWXで行われた「Meditation for Japanese Summer」LIVEに出かけてきました。このLIVEは元々4月下旬に予定されていたものですが、コロナ禍により順延が繰り返され、4か月近くも遅れて開催されました。
言い訳になりますが、チケットを購入したタイミングでは“緊急事態宣言が明ける”と見越されていました。残念ながら、この最終順延のタイミングも感染者数的には楽観視できるものではなく、主催者も開催を悩んだのだと思います。かといって私の方もキャンセルする勇気は持てず、後ろめたさで職場と家族に嘘をついて、18時からの開演に間に合うよう午後に半休をとり、こっそりと一人で行ってきたわけです。
LIVEなんてどのくらいぶりでしょう。一番最近でクラシックなら東京オペラシティー(音が良かった)、ジャズならBlueNote東京に行きましたけれど、もうどちらも5~6年は過ぎています。ポップス系は山下達郎以来で、こちらの方は間違いなく10年は過ぎています。
秘密のお出かけ&久しぶりのLIVE&初めての“生”青葉市子ということで、最初からアドレナリンが半端なかったです。
WWWXは渋谷スペイン坂にあるLIVEハウスです。客席のサイズは横幅約13m、奥行約10mですから小中規模といえるでしょう(以前紹介した、「機械仕掛乃宇宙」の動画もここで収録されています)。
厳重な数々のチェックのあと入場してみると、全壁面が真っ黒のホームシアターのような部屋でした。
ただ、天井が高く開放感があります。
適当なところに置いてあるIKEAの丸椅子を好きな隙間に動かして座る、本当の意味でのFREE席。少し早く到着したせいか、そこまで混んでいなかったので前の方に座りました。演奏者席までは意外と近くて、教室でいうと教卓と一番後ろの席くらいしか離れていなかったです。
開演直前に見回してみると、客層は予想していたよりも若く20代~30代中心のようでした。男女比は半々、私のように一人で来ている客が多かったです。カップルもチラホラ。全部で50名程度が来場していたようです。
このLIVEは当初オープニングのDJをCOMPUMA氏が勤め、その後、青葉市子と冥丁氏が演奏を行う構成でした。しかし、冥丁氏が直前に演奏を辞退され、結果的には青葉市子単独LIVEの形となりました。
開演時間前からCOMPUMA氏の心地よい不思議な浮遊感のあるBGMが流れていて、開演時間が過ぎてもそれが続きます。開演のアナウンスや演出は皆無。私は開演のタイミングがはっきりしないLIVEは初めてだったので少々驚きました。
開演時間後、10分か、15分くらいからでしょうか、青葉市子がふんわりと現れて、10曲程度を演奏し、アンコールも行い、無事LIVEが終了しました。思っていたよりも曲数が多かったので、冥丁氏が休まれた分、当初の予定よりも数多く演奏されたのではないかと思います。
クラシックではないので、ボーカルも、ギターも、マイクで拾った音がPAを通して再生されるわけです。音はレンジも広く解像度も高く、平均的なLIVEハウスよりもPAの質が高かったようには思いますが、もちろんクラシックにおける生演奏の音とは異なります。
それじゃ、ちょっと贅沢な部屋のオーディオマニアの出す音と全然変わらないのかと言われたら、でもそれは多分、全く違います。鮮度感とスケール感が素晴らしく、やはり普通のオーディオ再生とは次元の異なる音体験でした。
そして、初めて実物を見る青葉市子。ゆったりとした優雅な仕草と、ギターの音色と歌声が非常に美しく、一言で表現すると“神々しい”という表現がぴったりでした。
そう、拍手ができないのです。
正確に表現すると、拍手というリスナーの評価が、与えられた価値に対して釣り合わないような気がして申し訳ないというか。”何か別の表現がある気がする。でも思い浮かばないから、ノーリアクションも違うし、仕方なく拍手しておくか”みたいな感じでした。
各曲の演奏が終わったとき、もちろん客席から拍手は出るのですが、なんだか皆が遠慮がちで、立ち上がりの遅い、パラパラとした拍手だったように思います。多分、私と同じような気持ちだったのではないかと思います(Twitterで似たような意見も見つけましたし)。
それほどまでに凄いパフォーマンスでした。
私はユーミンも好きで、ただユーミンのコンサートには1度も行ったことがありません。それは、私がユーミンの曲を聴くようになった頃には、彼女の声が既にピークを過ぎていたのが分かっていて、がっかりしたくなかったからです。
ただ、先日の青葉市子のLIVEを聴き、この人の場合は、今このときが、あるいは今から数年が、歌声におけるキャリアハイなのではないかという感触を持ちました。
時間と予算があれば、できる限り彼女のLIVEには訪れたいと思っています。
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Bandcampをご存知でしょうか。簡単に言うと音楽配信アプリ(HP)の名称です。世の中では音楽鑑賞の中心がストリーミングになりつつありますが、Bandcampではダウンロードがメインです。有名なOTOTOYやe-onkyoなどと何が違うのかというと、Bandcampの場合は、売り方が“路上販売的”なのです。
つまり、リスナーがアーティストからダイレクトに音源を購入するイメージです。路上販売ですから、価格はアーティストが自由に設定することができます。マイナーな音源も簡単に売ることができます。
リスナーは決められた最低価格“以上”の金額を振込むこともできます。
例えば、ストリーミングの場合、1曲の再生におけるアーティストへの対価は「0.01円」と言われています。これは1万円を稼ぐためには100万回再生される必要があることを示しています。アーティストにとっては非常に厳しい数字です。
ところが、Bandcampにおけるアーティストの利益はなんと80%と言われています。3000円のアルバムを4,5人がダウンロードすれば、ストリーミングで100万回再生されるのと同額の収入をアーティストは得ることができるのです。

Bandcampでは、青葉市子の「Live at Ginza Sony Park(July3-2020)」(全10曲、48/24、FLAC)を最低価格設定なし、つまり“無料以上”で購入することができます。歌はもちろん、冒頭と最後のシンセサイザー、ギター、電子ピアノ全て彼女一人で演奏しており、内容が素晴らしいのですが、録音もYoutubeで同じ音源を聴くのとは比べ物にならないくらい良いです。深いリバーブがかけてある他は変にいじっていないように聴こえます。個人的には曲の冒頭に「銀河鉄道の夜」の一節が組み込まれた「アンディーヴと眠って」が好きです。※CENYA邸オフ会でも聴かせてもらいました
なんだか販促みたいな雰囲気になってしまいましたが、Bandcampは詐欺サイトではないので、ご興味があれば(もちろんどのようなアーティストであっても)使用してみて下さいませ。お気に入りのアーティストを支援するためにも。
音楽鑑賞もオーディオも人生の潤いとなるような素晴らしい趣味であり、やれる範囲でこれからも楽しんでいきたいと考えています。