日記
フルトヴェングラー指揮の「エロイカ」(2021年リマスター版)は疑似ステレオ?
2021年09月23日
この録音(管弦楽:VPO、1952年 旧・EMI)は昔から余りにも有名なものですが、その「2021年リマスター音源」なるものを最近入手しました。
この音源は、今年10月(?)のCD発売前に、LP盤で先行発売されていて、DLサイトでも扱いがあります。

●これを拙宅で聴いたところ、「ステレオ的(?)」に聞えるのです。
それも、その昔(1960年から1970年代)聴いた「ブライトクランク方式の疑似ステレオ」(音の拡がりを付加、楽器群の方向感は無し。「お風呂場状態」)とは違い、明瞭な響きの豊かさとともに、楽器の定位・方向感が聞き取れるのです。
Vn群の奏でる主旋律は左方向、低弦群は右方向、管楽器群は中央、といった具合です。大変高音質なうえに、楽器群の方向感まであって、改めてこの演奏に引き込まれました。
●このステレオ感の正体は、いったい何なんでしょう?
(付記)
この2021年リマスターのクレジットは下記のとおりです。
2009年頃(?)、「ブライトクランク方式」とは別物(「ステレオ・ワイド化」?)の音源が出ているようです。また、近時、「モノラル音源のステレオ化」はデジタル技術を駆使して様々なものが出ていますから、下記もその類なのかも知れません。
(記)
ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調Op.55『英雄』
[録音]24-25.XI.1952, Grosser Saal, Musikverein, Wien
〈演奏〉ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
〈音源〉Parlophone Records (Warner Classics)
New remastering 2021 in 192kHz/24-bit
from original tapes by Art & Son Studio, Annecy
コメントなど頂戴できれば幸いです。
レス一覧
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初めまして。フルトヴェングラーの研究をしている田井竜一ともうします。
共同研究者の末廣輝男氏と共に、本日CD全集で発売になる、「フルトヴェングラー正規レコード用録音集大成」用に作成された、この音源を既にきいています。しかし、聴感上は、お申し越しのようなことはなく、モノーラルの音源だとおもいます。
また、末廣氏による、波形編集ソフトを使用しての分析でも、リサージュでみれば全くの縦一本線となり、 L = R 、つまり完全モノーラルであると断言できます。
失礼ながら、そちらの再生環境に依存する問題ではないでしょうか。
bytairyu at2021-09-24 22:24
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tairyu さん
レス
ありがとうございました。
本日(9/24)はCD全集の発売日ですが、その音源はモノーラルなのですね。
私には、旧EMI盤のブライトクランク式の疑似ステレオ(「お風呂場状態」「方向感無し」)の記憶が強く残っています。
今回(e-onkyoのハイレゾ)は、それとの相違(明瞭な音場感)に驚き、方向感まで感じたものですから、「新手の疑似ステレオか?」と思った次第です。
byシェルティーのパパ at2021-09-24 23:12
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シェルティーのパパさん こんにちは
e-onkyoの96kHz/24bitをダウンロードして軽く聴いてみました。
リサージュにかけてみるとtairyuさんの言うように、斜め45°の直線が現れる典型的なモノーラルではあるのですが、その実、聴こえ方は異なります。
理屈上は全ての音が左右のスピーカーのセンターの1点に集中した『点』の定位になるはずなのですが、音が広がります。
楽器と楽器はなんと分離して聴こえました。1箇所だけから聞こえるはずが複数個所から音が聞こえるのです。チェックのつもりがついつい聴き入ってしましました。
とにかく「生の演奏会場ってこんな感じだよなぁ・・・」という印象が凄い。(私は一般のステレオ音場は作り物で、生の演奏とはかけ離れたものという意見の持ち主です。演奏会場で目を瞑ってみれば楽器の1個1個の定位などまず分かりません。うるさいくらいに箱の反響音がします。)
モノラルではあるものの、楽器の距離感、リッチな反射音、そして何よりその楽器と反射音が混濁せずに共存しているところは、実際の演奏会場以上とも思える良い仕上がりに感じました。(実際の演奏会場で混濁を感じて不快に思った経験があります。席が悪かったか?)
エロイカはその昔、夏休みの学校の課題で「何でもいいからクラシックを聴いて感想文を書け」という題目があって、エロイカの演奏を3~4種類聴いて生意気にもそれぞれの批評めいた事を書いて提出したら、音楽教師にバカ受けした思い出がありました。
その時代にLPレコードで聴いていた正統派カラヤンやら何やらのエロイカよりも良く聴こえる。クラシックマニアさんやオーディオマニアさんからすると、素人向けのマスタリングだと揶揄される可能性すらありますが多くの人に愛されてこその音楽。これはこれで私は大いにアリだと思います。ダイナミックレンジが狭いので音に厚みがあって、近年ベルリンフィルが出している24ビット96kHzのハイレゾのベートヴェン全集よりも、実物に近く聴こえる程です。
長々と書きましたが「新手の疑似ステレオか?」と感じられるのも無理はなかろうと思います。本当に生の演奏っぽく聴こえるので。
良いものを紹介してもらいました。お陰様で昔も思い出してマッタリできています。自分史上最高のエロイカ、情報ありがとうございました(^ー^。感じたことを書くって勇気が要る事ですが、よく言ってくれました。
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bynightwish_daisu at2021-09-26 02:07
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nightwish_daisu さん
懇切なレス、大変ありがとうございます。
e-onkyoで本音源(ハイレゾ)をDLし、実際に聴いて下さったことは嬉しい限りです。
●この日記は、識者の方から批判を浴びることは覚悟の上でした。
この年齢(60代後半)になると、忖度や空気を読むことは止めており、今回の日記も、拙宅の装置で感じたままを記しました。
●因みにこの「方向感」は、ヘッドフォンでは感知できないのではないでしょうか。拙宅はハイエンドとは程遠い装置ですが、一定レベル以上のスピーカーを中心とする装置で聴取することが必要ではないかと思います。
●改めて、旧来の典型的なモノーラル音源(フルトヴェングラー/VPO、カラヤン/Ph管の旧EMI盤)を聴きましたが、左右SPの中心に音場が小さく纏まり、楽器群の方向感など皆無でした。
一方、本音源は「明瞭で素直な音場」が拡がり、そのうえ「ステレオもどきの方向感」を感じるのが大変不思議です。
最新のデジタル技術を駆使しているせいでしょうか。
確かに近年、デジタル技術を使った新手の疑似ステレオが出ている(らしい)ことはネットで散見しました。
だとしたら、この「方向感」をセールスポイントにするところでしょうが、現時点では、販売元サイトにはそうした言及はないようです。
byシェルティーのパパ at2021-09-26 11:40
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皆様
この件は、当初環境に依存するお話かとおもいました。しかし、複数の方々が同じような印象をもたれたとなると、別の要因によるものかもしれません。いずれにしても、大変興味深い事柄ですね。
なお、末廣輝男氏が、次のような見解を寄せられましたので、皆様にもご披露いたします。
「これは現象として大変興味深い、錯視ならぬ「錯聴」現象の一種かな、と思いました。「錯視」の世界では、平面に描いた絵が立体に見える、という現象が近年話題になって、いろいろと実用化もされているようですが、「錯聴」の方は殆ど知られていないのではないかと思います。聴覚心理学の面白い課題と感じます。
鍵となるのはお二方ともLP時代にフルトヴェングラーを聴いていた、また実際のオーケストラ演奏をたびたびお聴きになっている、ということにあるのではないでしょうか。
今回のハイレゾ版は、やはりLPを当時の並みのプレーヤ・アンプで再生した場合に較べ、格段に音の分離がよい、つまり第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、金管木管など各楽器の音がはっきりと分離して聞こえます。それらの音を脳内で、過去の実演を聴いたときなどでの聴体験と結び合わせて再構成(音場の)をする、ということが無意識的に進行するのではないでしょうか。
おそらく分離の悪い、団子状の音からはこのような「錯聴」は起こらないのでは、と推察します。」
bytairyu at2021-09-26 13:42
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ご参考までに、私の使用環境をお知らせしておきます。
・PCオーディオ
Host PC:EGLOBAL ファンレス・ミニPC(intel core i7 8565U 1.80GHz (4.6GHz) クアッドコア 250GB SSD 16GB Windows 10 Pro、エルサウンド ノートパソコン用アナログ電源使用)。
Target PC:Diretta(エルサウンド 特注アナログ電源使用)。
DDC・DAC:Singxer DDC SU-2+同 DAC SDA-2C(HDMI LVDS I2S/DSD接続)
電源:スター電器製造 アイソレーション電源トランス(100・115V出力)
音楽再生ソフトウェア:Bug head Nontallion・Album Player Mini 2.112(WAVファイル用)、Audirvana Studio(TIDAL用)。ジッターレス・ユーティリティー MinorityClean x64を併用。
・オーディオ・メインシステム
SACD・CD:marantz SA-14S1
ブルーレイ:Pioneer BDPL-X88
アンプ:Luxman L-570X's
スピーカー:HARBETH HL Compact
・オーディオ・サブシステム
TANNOY GOLD5
エルサウンド ボリューム・コントローラー(特注品)
bytairyu at2021-09-26 14:25
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皆さん こんにちは
専門家の方の見解まで登場して気後れしそうですが、Phile-webコミュニティですからざっくばらんにレスしてみます。
まず再生機器についてですが大型スピーカーでも小型スピーカーでも私が先に書いたような印象は変わる事はありませんでした。つまり、誰でも同じ体験ができそうな予感なのです。ただ、少しコツが要るかもなのでそれを書いてみます。
(24bit/96kHz再生ソフトは JriverMediaCenter28からのASIO出力、Audirvana3.5.46からのWASAPI出力を試しました。)
●音量:
部屋が飽和する辺りから2割引き程度が良さそう
Thomann S-150mk2のレベルメーターは普段は光らないのですが
この音源は曲に合わせてぴかぴか光っていた。
出力の割にウルサク感じないので、音量を上げ過ぎていたのか?
●視聴位置:
最初は、通常のリスニングポイント、前後の奥行きに驚く。
本領発揮は、リスニングポイントからズレたとき。
<ズレると、一気にステージが眼前に?>
わたしは再生したままトイレに行ったのですが、
部屋の外に出てもさらに驚きました。隣の部屋でいったい何が起きているだ?
つまり、どこでもいい(笑)
●スピーカー:
モノラル音源だからスピーカー1台再生がよかろうと、ステレオの
片chの出力をOFFした。そうしたらツマラナイ音になった。
理屈はわからないが、これはステレオ ”2台で” 聴くべき。
センター含めて3台にできるなら、その方が更に良さそう。
1台よりも2台、2台よりも3台!?
●AVアンプによる5.1ch Upmix はダメだった。
音源にサラウンド成分が隠されていれば後ろから音が出たりします
が、そういう小細工はされていないようです。
すべての音が、センターchに割り当てられて広がりも何も
あったものではなかったです。(DTS:NeuralXで試行)
昨日に続き、今日も聴きましたが、プチパチいわないレコードのようで非常に好ましい。マニアの方々は、カッチリキッカリセンターに陣取って視聴されているかと思いますが、この音源ばかりは騙されたと思って人間一人分くらい ”視聴位置からズレて” 聴いてみて下さい。爆音で鳴らして別の部屋に行ってみて下さい。きっと驚きます。
そんな事は もーやっておるよ ふぉふぉふぉ でしたら、
行き違い失礼しました m(_ _)m
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bynightwish_daisu at2021-09-26 15:36
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ハイレゾ版の収録レベルは一般的な音源に比べて低かったです。
拙宅ではボリュームを2時の位置まで上げる必要がありました。
(普段は9時の辺りです)
もしも件のエロイカのCDが、ボリュームを0時よりも右側まで上げる必要があるようでしたら、16ビットのCDでは心許ない。その場合はe-Onkyoの24ビットが生きてくると思われます。
(CDの収録レベルが低い場合です。ボリュームが9時~10時の位置で大音量なら、24ビットは必ずしも必要がでないと想像します。)
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bynightwish_daisu at2021-09-26 16:47
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皆様
ありがとうございます。
こんなにレスを頂戴出来るとは。
●この「ステレオ感のナゾ」については、音源元(ワーナー様)のコメントを頂きたいところですが、無理筋でしょうね。
byシェルティーのパパ at2021-09-26 17:54
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たまたま、この曲をspotifyで見つけて聞いてみて、当時としては音質が優秀であることに驚いて検索してみたところ、ここにたどり着きました。楽しい話題をご提供いただき、ありがとうございます。私は全くの素人なのですが、お役に立てれば幸いと思います。
オシロは、今はPCのソフトとして簡単に利用できます。例えば、PCをお持ちでしたら、以下からオシロスコープのソフトウエアがダウンロードできます。
https://www.zeitnitz.eu/scope_en
利用条件等もご確認の上、ダウンロードしてください。英語が苦手な方は、https://www.deepl.com/translatorで翻訳をお試しください。
このソフトウエアで左右チャンネルの周波数特性などを時間経過とともに表示させてみましたが、左右で全く違いがありません。デジタル音源の状態では、完全に左右のチャンネルとも同じ音です。アナログ信号に直し、スピーカで聞くと、左右で多少位相がずれたり、音質も異なる音が耳に入ることになりそうです。また、スピーカからの音を聞く場合には、家具など部屋の構造物からの不均等な反射波も耳に入ってくると思います。末廣先生のおっしゃる「錯聴」は、この微妙な違いが関係があるのかもしれません。nightwish_daisuさんの仰る、たとえモノラル音源でも、スピーカ一台よりも2台のほうが臨場感がでるという話も同じ原因かもしれません。
USB接続でデジタル入力可能なマイクロホンも購入できますので、実際にお聴きの環境で左右両方のスピーカーの音をPCに入力し、上のソフトで左右チャンネルを比較してみると、面白いかもしれませんね。音源に対して、どの程度の再現性があるのかも確認できそうです。
ヘッドホンの方が部屋にある家具などからの音の反射の影響も受けにくいと思います。ヘッドホンでお聴きになったときの感想をぜひ伺いたいと思います。
完全を期するのであれば、左右の信号をデジタルの段階でビットパタンを比較すれば、さらに明らかになるでしょう。CDを持っていれば、割と簡単にできるので、ツワモノのチャレンジを期待します。
ちなみにspotifyにも、Furtwängler作品が充実していますよ。Spotify Premiumを契約すれば、最高320 Kbit/秒程度の音質と謳っています。
良い音楽の前には、モノラルもステレオも関係なしと叫んで終わりにいたします。
byとおりすがるアスペン at2021-10-11 03:12
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