Arc Acoustics
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Bowers & Wilkins 800 Seriesの物理特性は何故悪いのか? ―D4世代の発売に寄せて―

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2021年10月03日

まあタイトル通りのド直球な内容ですし,恐らく反論の余地もあまりありませんので,他社製品への買い換え予定の無いオーナーは読まない方が良いでしょう。
読んだところで更に音が悪くなる事はありませんが勿論良くなる事も無く,ただ勝手にお気持ちを害するだけに終わるでしょうから。
逆にラウドスピーカーの設計・物理特性・知覚を繋ぐ内容ですので,真面目に良いオーディオを求めている方や自作スピーカービルダーにはお薦めです。



さて,結論から簡潔に申し上げれば,現代的な観点での特性の良いラウドスピーカー(必要条件としては前回のコラムを参照)をデザインゴールの一つとするのであれば,その基本設計がまるで成立していないから,となります。
これは各ドライバの口径及びその周辺形状が齎す指向性とそれをクロスオーバーさせたときに生じる強烈な乱れという,少しでも音響が分かる人の目には火を見るよりも明らかなデザインコンセプトの欠陥に起因しています。


ラウドスピーカーの性状を捉える一つの観点が,指向性です。
より広い水平指向性はより強い側方反射音を生み,そしてより強い中高域の側方反射音はより低いIACC(両耳間相関度)を齎し,より大きな見掛け上の音源の幅や音場の展開の広さ(ASW)として知覚されます。
また,より低い指向性は直接音に対するより高いレベルの残響音を齎し,より強い音場の包まれ感(LEV)として知覚されます。
適切な反射音は音場の広がりや距離感,奥行きといった空間印象を与えますが,そのためには部屋(大きさ,形状,1次反射面の処理,吸音率,etc.),セッティング(レイアウトの広さ,1次反射面との位置関係,トー,etc.),ラウドスピーカーの指向性(特に側方反射音に相当する水平軸外40~80°やDI,トーを振った時の変化,etc.)の3要素で上手くバランスを取る必要があります。
指向性の尺度にはDirectivity index(DI; 音響パワーに対する軸上音圧周波数特性),Early reflexion directivity index(ERDI; 初期反射音に対する軸上音圧周波数特性)があり,共に高い値は高い指向性を意味します。

ラウドスピーカーにDIがあるように,部屋にはCritical distance(臨界距離; ある部屋の中で,ある指向係数を持つ放射体の軸上の直接音と間接音が統計的に等しくなる距離)という指標があります。
(例えば平均吸音率0.2の6畳間に於けるDI=6dBのラウドスピーカーのCritical distanceは1m程度となります)
中高域のCritical distance内での聴取はニアフィールドモニタリングの思想に近く,音響処理があまり施されていない部屋で直接音(先行音)優位の聴取によりなるべく正確なモニタリングを行うための基本的なセッティングです。
一般にコンシューマーラウドスピーカーの聴取距離はCritical distanceよりも長くなり,標準的な直接音の比率はパワーにして僅か12%程度,44%が初期反射音,44%が残響(Devantier 2002)とされています。
小さな部屋やライブな部屋では,聴取距離を長く取ると間接音過多に陥りやすいため,直接音と間接音の比率を改善できる高いDIがベネフィシャルでしょう。

広指向性(低指向性)と狭指向性(高指向性)のラウドスピーカーを同程度綺麗に整えた場合,私個人はそこに優劣があるとまでは言えませんが,自分自身の嗜好の存在は確実に感じます。
コンシューマー市場では広い指向性が齎す広くリラックスした音場が好まれる傾向があるように思われますが,これは先述の再生環境に加え個人の嗜好や音源(左右の相関,ドライかウエットか等)の影響も受けるものと考えられ,一概には言えないでしょう。
ですから,ご自身の再生環境が音響的にどのようなもので,その環境ではどのような指向性のラウドスピーカーの空間印象を好まれているのかを把握しておく必要があります。

そして指向性の乱れは即ち初期反射音や残響音の乱れ,初期反射音の乱れは即ち空間印象の崩壊を意味します。
ある音域の音場が広く,近い別の音域の音場が狭く知覚されれば,一貫した空間印象が得られないであろう事は想像に難くないでしょう。
吸音率や聴取距離の調整でバランスを取れるのも,指向性が滑らかに整っているという前提あってこそなのです。
バランスを無視して吸音率を上げたり近接して聴取すればましになると思われるかも知れませんが,先述の通り再生環境での初期反射音こそが空間印象を強力に補完している事から,残念乍らラウドスピーカーによる再生の大きなメリットを捨てるに等しい行為です。
(無響室で聞けばお分かりになると思います)
因みに指向性に大きな問題を抱えているラウドスピーカーは,ソースに含まれる空間情報によるマスキングを避けたモノフォニック(1本のスピーカー)での試聴により,極めて容易に馬脚を現します。


さて,Bowers & Wilkins 800 Seriesのようなオントップツイーターやタービンヘッドミッドウーファーのような形状の放射体単体は,適切に設計すれば生得的に極めて綺麗な,そしてある帯域を境に周波数の上昇に従って狭窄した指向性(チルトしたDI)を持ちます。
軸外がハイ落ちしているだけで指向性自体が綺麗なら良いと思われるかも知れませんが,しかしマルチウェイのラウドスピーカーとして各ドライバが調和するか,トータルの特性を整える上での最適解であるかは全くの別問題です。


これは単純化したオントップツイーター(右)及びタービンヘッドミッドウーファー(左)それぞれの指向性です。
(実際のスピーカーよりも理想的な分,実測値よりも幾分綺麗な指向性になっていますが,それは本筋ではありません)

注目すべきは波長(=音速/周波数)とダイアフラムの口径に依存した指向性の狭窄がかなり急である点,そしてダイアフラムの形状を除き概ね相似的と見做せるツイーターとミッドウーファーの指向性は同様の特性を,しかし帯域を異にして有している点です。

これは即ち,垂直に並べたこれらのドライバをクロスオーバーさせると,水平指向性は自ずと大きくうねった鋸歯状になる事を意味します。



この指向性の狭窄は,デザイナーの視点では決して有り難いものではありません。
高域での軸外のハイ落ちは,実際に起きる空気中の伝搬や反射に伴う損失と似ている事から問題になり難いと考えられますが,低域での広すぎる指向性は大きな問題です。
ウェイブガイドを使わずに20kHzである程度広い指向性を持たせるのであれば,理想的には3/4"以下,1"より大きなツイーターはとても使えないでしょう。
バッフルレスの1"ツイーターのDI(*)は2.5kHzで3dB,5kHzで5dB,10kHzでは7.5dB程度となるため,スコーカーはそのパスバンドで十分に低い指向性を持つサイズでない限り指向性は暴れてしまいます。
(*より厳密には,パワーを基準としたDIよりも,空間印象に強く影響する側方反射音や前半球の水平指向性のマッチングがより重要になるでしょう)
従って,このようなバッフルレスデザインはデザイナーをカルデサックへと追い込むような設計思想であり,比較的良い指向性というデザインゴールを両立させる正攻法は,ユニットのサイズを細かく繋いで低いDIを保ち,鋸歯の高さを抑えて均す構成以外にありません。

1990年代初頭,Bowers & Wilkinsでオリジナルノーチラスを設計したローレンス・ディッキーは勿論その事を良く知っていました。
だからこそ彼は1"ツイーターに続き,2"スコーカー,そして4"ミッドウーファーへと繋いでいるのです。
1"ツイーターのDIは2.5kHzで3dB,5kHzで5dB,10kHzでは7.5dB程度でしたが,相似形状の2"スコーカーは2.5kHzで5dB,5kHzでは7.5dB程度のDIを持つので,何とか繋がりそうですね。
トータルの指向性は中低域でモノポールに近く,トップ2オクターブで一気に狭まる,当時としては良く整ったものになっているでしょう。

なお,私の主観では,この現代に於いてなおオリジナルノーチラスに1千万円を超すような価値があるものとはとても感じられませんでした。
現行品とは言え30年前の設計を現在の水準で評価するのは極めてアンフェアですが,それでも30年間の月日は確実に流れており,当時は到底不可能だった計算が現代的な設計を支えている現状は否定のしようがありません。
しかし30年前の彼が追究したかった指向性制御のロマンへ思いを馳せ,それをこうして結実させられた彼は一技術者として幸せだったであろうなと少し羨ましくも思います。


他方,800シリーズの800~802に搭載される6"或いは803~804に搭載される5"ミッドウーファーは,“本物の”6インチ/5インチ ミッドウーファー,つまり振動板の直径がほぼ6インチ若しくは5インチなのです。
一般に言うフレームサイズに換算すると8"や6.5"に近い大きさです。
1"ツイーターがクロスオーバーの4kHzで4.3dB程度のDIを持つ一方,6"ミッドウーファーのDIは11dB程度にも達し,6倍若しくは5倍に相当する差をもろに受けた指向性は強烈に暴れています。

これはStereophileによる802D3の測定でも如実に表れており,水平軸外特性,特に側方反射音に相当する軸外40~80°は1kHz辺りから急激に落ち,そしてクロスを迎えると共に再び高いレベルに戻ってしまっています。


更に水平指向性を観察すると,2kHz付近の軸外90°が20dB程も落ちており,ダイアフラムの(直径だけで無く)形状が影響し出す領域とは言えやや不可解であり,クロスオーバーのアライメントが合って居らずキャンセレーションが起きているようにも見えます。
また垂直指向性に目を移すとクロスオーバー付近に於いてツイーター軸の直上に極めて深いディップを生じている事から,クロスオーバーのアライメントはまるで取れていないと見て良いでしょう。


これらは垂直軸外への放射を少しでも増やす事で水平に生じたミッドウーファーとツイーターのミスマッチを補償しようとする涙ぐましい"bodge job"とも考えられますが,何れにせよまともな設計であればこうはなりません。

興味深いのが2世代前の800Dのスペックシートで,
Dispersion: Within 2dB of reference response, Horizontal: over 60º arc / Vertical: over 10º arc (注: arcなので,Horivontal 60º arc は軸外+/-30°である)
とありますが,800Dのホワイトペーパーの図14では水平軸外15°ですら軸上から中域で2dB,高域で3dBも乖離しているという中々に絶望的な様相を露呈しています。
(reference responseが軸上周波数特性を意味しないのであればそもそも分散特性の表記になりませんし,これは1kHzでの値です!みたいなとんちなんでしょうかね?失笑)
軸上もスペックシートの+/-3dBには収まり切らず,彼等の示すスペックとやらが如何なるプロセシングを経たものなのか考えさせられます。
また同じホワイトペーパーでは1次のスロープ(そもそも普通は使わん)を採用すると軸外の上方にディップが出来ると問題提起し,挙げ句LR2では逆相(何の問題が?)になるので正相にしてツイーターを半波長分突き出す等と言う謎アライメントの優位性(馬鹿かな?)を説きますが,Stereophileによる測定では軸の直上に糞デカディップが出来ています。



さて,時は移ろい21世紀では,ウェイブガイド/ホーンによりツイーターに定指向性或いはもっと緩やかに絞った指向性を持たせ,クロスさせるドライバとのマッチングを取る設計が一つの理想と考えられています。
ウェイブガイドによる指向性制御の嚆矢となったのはフィンランドのGenelec,1985年頃から積極的な指向性制御が試みられ,恐るべき事に1990年頃には103系の基本形状に到達し現在の水準でも悪くない特性を獲得していました。
コンシューマー市場では現在でもまともなウェイブガイドを使っているのは精々RevelとJBL,そして同軸ドライバのミッドウーファーをウェイブガイドとしても設計しているKEF位しか存在しませんが,モニター市場ではGenelec,Klin+Hummel/Neumann,JBL,KALI,Presonus,PioneerDJと幅広い価格帯で浸透している技術です。

ウェイブガイドを使う事でパスバンドの下限まで適切な指向性を得られると共にロードも掛かるためより無理をせず広帯域で使用可能になり,より口径の大きなスコーカー若しくはミッドウーファー/ウーファーの採用が可能になります。
例えば低域特性に優れる6.5"や8"ウーファーと,ウーファーの指向性と滑らかに繋がるように設計したウェイブガイド/ホーンにより,比較的コンパクトな2wayでありながら優れた低域と指向性を持たせるといったアプリケーションなどがあり,そのメリットは計り知れません。

これは取りも直さずBowers & WilkinsからVivid Audioへと移籍したローレンス・ディッキーが辿った軌跡と重なります。
GIYAで1",2",4"の構成を踏襲した彼は,しかしKAYA等の機種ではウェイブガイドの採用により指向性狭窄の呪縛から解き放たれ,1"と4"を組み合わせているのです。
(尤もKAYAのウェイブガイドの設計はあまり宜しくないようですな,今後に期待です)

他方でこの20年,ローレンス・ディッキーの遺産を食い潰しながらひたすらに“悪い特性を好む選りすぐりの顧客層”を獲得してきたメーカーに残された道は,もはや彼等が育ててきた顧客と共に心中する以外には無いのかも知れません。


そして,そもそも軸上からしてフラットネスが存在しないと言っても過言では無い劣悪な特性である点も忘れてはなりません。
803D3の軸上特性のNBD_ON=0.38, SM_ON=0.45という数字は衝撃的ですらあります。
(NBDは0~1,SMは1~0の値を取る指標ですが,こういう数字を見ると一瞬0と1どちらが良いのか忘れそうになります)
評論家が異口同音に先代のヴェールを剥いだかのようにクリアだのと褒め称えている毎に尖鋭化しているように思われるその悍ましくすらある特性は,或いはその顧客層の加齢に伴う聴力低下とも関係しているのかも知れません。
ダイアフラム背面のインピーダンスの制御は,ユニットの特性を整えネットワークを簡素化するためにとても重要ですが,ここまで暴れていてはノーチラスチューブもへったくれもあったものでは無いでしょう。
ハウスサウンドと言えば聞こえは良いものの、下位機種に目を移してもその軸上は(勿論軸外も)目を覆わんばかりの特性です。
そもそもフラットネスなんてまるで気にしていないのでしょうが,スペックシートからも大きく外れているようでは気にしないにも限度というものがあります。
(せめて正直で居ろよな?)


一部の機種ではポートからの中域漏れも深刻です。(802D3では250Hz,803D3では400Hz付近,N805では900Hz付近,805Sでは1.1kHz付近に確認できます)
これはしばしばキャンセレーションによる特徴的な軸上及びDIのディップや歪み率のピークという形で現れ,マスクされ難いそのQの低さ(*)と相まって悪い部類に属しますが,奇跡的な事に軸上特性があまりにも起伏に富んでいるため目立ちません。
KEFの小型スピーカーのようにポート周りを工夫したり,KEFやRevelの3wayのようにそもそも漏れを生じる帯域をパスバンドから外すといった設計は,彼等には少し難しかったのかも知れません。
大した擁護にもなりませんが,この種の問題は極めて一般的であると申し添えておきます。
ポート周りに問題を抱えていないスピーカーは恐らくバスレフ型ラウドスピーカーの5%にも満たず,その内大半はクロスで避けているだけ,よく設計されたポートは全体の1%程度では無いでしょうか。
(*例えばJBL 7Seriesモニター等のポートは極めてQの高い強いキャンセリングディップを生じていますが,これはERBによりマスクされる事から知覚され難いものと考えられる)

尚,Bowers & Wilkinsはポートのディンプルをしきりにアピールしますが,実はディンプルが効果を発揮するのはポートコンプレッションを起こす更に先の,絶対に使うべきで無い流速域(*)です。
(* 流体の粘性力に対し慣性力の大きさを示すレイノルズ数が臨界値を越え大きくなるに従い流れが不安定になり生じた乱流が大きく成長する)
幸いにしてそんな流速域で使う設計にはなっていない筈(経験則としては常用域でマッハ0.05≒17m/sを超えないように設計するべきとされている)ですが,口径を大きくすると中域漏れを起こしやすくなるので,上記のようなダサい特性になっているわけですね。

ディンプルに馴染んだゴルフ好きのフリーメイソンへの訴求力はあるのでしょうが,その実何の意味も無いハッタリに過ぎません。(可愛いですね!)
因みに一般には寧ろディンプル付きの方が適切な流速域では僅かに悪化すると考えられ,実験でも確認されていましたが,まあポートの直径が大きければ大した差にはならないでしょう,口径とフレアは正義なのです。



これ程までにファンダメンタルな物理特性が悪ければ,ラウドスピーカーの性能はそれだけでは測れない等と言う有りがちな戯言も,最早何の意味も成さないでしょう。
これが悪い特性のラウドスピーカーである事に議論の余地は無いのです。


しかし何と言ってもBowers & Wilkins 800 Seriesの真の凄さは,理論的に考えて絶対に避けるべきと判り切っている設計上の地雷をこれでもかと言う程踏み抜き,言うまでも無く特性は無茶苦茶で,当然(少なくとも私の耳では)聴感上も酷い,ブラインドテストでは選ばれないような製品でありながら,なお売れている点です。

確かに人間の感覚はある面では極めて杜撰で,サイテッドテストでは見た目の仕上げやブランドに左右される(*)どころか,サランネットの色を変えただけで異なる印象を報告するお粗末さです。
(* 私だって見るからにまともな特性など出る筈の無いあんな設計「だから」,あんな設計をするBowers & Wilkins「だから」余計に悪く聞こえている面もあるかも知れません。)
ショールームに並べれば不自然でも目立つ音に惹かれる消費者が多いため,ショールームサウンドとも揶揄されるhypedな特性の製品が売り場の多くを占めます。
ですが,ショールームサウンドの限界を超えているようにすら思われる音の製品を売るのもまた難しい筈であり,何故これ程までの状況に至ってしまったのか理解に苦しみます。

あれが売れてしまう原因の一つとして思い当たるのは,
“ユニット突き出してバッフル無くしたらめっちゃ指向性広くて綺麗なんやろなー”
といった稚拙極まりない“ぼくのかんがえたさいきょうのスピーカー”像に最も近く,それを巧みにマーケティングに活用しているのがBowers & Wilkins 800シリーズであり,その先入観が購買層の主観に影響している可能性ぐらいでしょうか。
若しあのような設計思想では良い特性など得られよう筈が無い事を見て取れる程度の基礎的な物理の感覚を消費者が有していたならば,或いはこのような状況にはなっていなかったのかも知れません。


売れる物を作るのがデザイナーの仕事,作った物を売れるようにするのがマーケティアーの仕事であり,確かに彼等はその意味で非の打ち所の無い成果を上げていると言えましょう。
しかし,それとは別に,Bowers & Wilkinsのデザイナーがあれを良い音の良いラウドスピーカーだと考えて,或いは信じて設計しているとは,私にはどうしても信じられないのです。
良い製品を買いたいコンシューマーと,良い製品を売りたいマニュファクチャラーの利害は本質的には一致していますが,しかし現実にこうしてコンシューマーが良い製品を選べなければ,マニュファクチャラーは良い製品を作って糊口を凌ぐか,売れる程度に悪い製品を売る以外にありません。
心理音響を以てそこに挑み,コンシューマーとマニュファクチャラーの捻れを解消出来れば良いのですが,熱心に信頼出来る仕事道具を探し求めるプロ・モニタースピーカー市場とは違い,標準的オーディオファイルは兎に角楽をして信じたいものを信じる事に徹するばかりでちっともまともに学ぼうとしないので望み薄でしょう。

やや暗い締め括りとなってしまいましたが,D4がどれ位やばくなっているのか少し楽しみですね。

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レス一覧

  1. 詳細な検証恐れ入ります。
    私はクラシックCDを聴きますが、モニタースピーカーにB&W製を使っていますって書いてあるのがあるんですよね。
    そのCDがいまいち音が良くなかったりするんです

    byPlaton at2021-10-06 04:45

  2. Platon様

    コントロールルームの設計にもよりますが,概してドライで初期反射も処理する場合が多いため,(それがクリティカルリスニングであるという点を除けば,という重大な但し書き付きで)ウエットなリスニングルームよりも指向性の問題によるインパクトは幾分軽く済むと考えられます。
    またイコライザによる補正を行えば,フラットには程遠い軸上周波数特性も大きな問題にはなりません。
    何せツイーターにクリネックス1枚を被せたNS-10Mをブリッジに横置きして使っていたぐらいですから,結構何だってありなんでしょう。(笑)

    勿論,モニターラウドスピーカーと部屋は仕事のし易さに直結しますから,その物理特性に幾多の問題を抱えているB&W 800シリーズをモニターラウドスピーカーとして採用する事が好ましいとは到底思えません。
    しかし,ベテランエンジニアの適応能力は物凄く高いですし,そもそも普通は他にもモニターを置いていますので,やはり音源の問題を一組のスピーカーだけに問うのはやや無理があるかも知れませんね。

    byArc Acoustics at2021-10-06 19:29