ベルイマン
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2021/10/9 4本のFOCALスピーカーを同一円に乗せるまで、あと数十ミリにまで来た。調音材の配置を工夫したところ、ITURから外れたセッティングで、側壁の距離もフロントとリアでちぐはぐである…

マイルーム

マイシアター『象牙の塔』
マイシアター『象牙の塔』
持ち家(戸建) / 専用室 / オーディオルーム / ~12畳 / 防音あり / スクリーン~120型 / ~4ch
私のシアターは、ずばり、「象牙の塔」‛la Tour d'ivore'と言います。 縦5438 x 横3618 x 高3400mmの約11畳の縦長。スピーカー4本、ユニバーサルプレイヤー、AVプ…
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日記

映画 『この世界の片隅に』

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2021年09月11日

皆さん、こんばんは。

片渕須直監督、『この世界の片隅に』(2016)を今更に観ました。こうの史代の漫画を原作とし、クラウドファンディングで資金調達を賄うようなミニシアター系の映画でしたが、日本では異例のロングランとなり、世界各国で公開されたようです。スピンオフも生まれ、TVドラマも作られたようです。



家の近くのレンタルビデオ屋には一本しかなく、しかもDVDでしたが、それを嫁と観ました。5.1chを4chで出力して視聴しました。我が家はスピーカーの奥に音像定位するので、スクリーンとの一体感はとても良いです。セリフ主体の音声信号であり、さらに回転系等の特別な音声が入っているわけでなくても、センターレスだと難しい映画もあるだろうと思いますが、この『世界の片隅に』はそういう難しいところが全くなく、ほんわりとしたスズの広島弁は、私には単語の意味が判然としない箇所があるにも関わらず、センターを使ってスクリーン方向から声を出そうとする必要は感じませんでした。サラウンド音声も自然でした。

映画の出来ですが、悪くないです。一回、観たきりですが、レビューしてみます。





以下、ネタバレを含みます。ご承知ください。






オープニング。8年何月、太田川なんですかね、舟でスズが遣いにいきます。鳥瞰したとこでは青緑のドームも見えます。商店街の賑わいの片隅で、呉服屋のビルの脇のスズの顔をミディアムショットで捉えると、ビルの壁を伝って、青空を写しますが、そのままバックして後ろにずっ〜と、舟で後ろ向きに空を仰ぎ見たかのように、カメラは空を写したまま後に引いていき、淡い字でタイトル出し、です。ココリンゴが『悲しくてやりきれない』をスクリーンにじんわり広がるように歌っており、空の明るさとその歌詞のギャップにいきなり胸が痛くなっていると、丘の森の手前の片隅に咲いたタンポポで着地します。たしかに良いショットですね。何より世界の片隅に生きており、他愛のないことに微笑む少女の身に何が起ころうと、それを描くんだという決意を感じます。

、、、20年7月、20年8月、、、画面左に示される年月が何を意味するのかは、誰にとっても明らかでしょう。この映画は世界の片隅を描くし、ヒロシマの風俗を描く。例えば、ご飯をどうしていたのか、どんな経緯で恋をして、結婚を決めたのか、を描き続けるのである。ここにあるのは、反復なのです。暗喩ではなく、直喩のレベルでの繰り返し。ただただ、毎日の小さなことを映画は繰り返す。ここは、事情を知らない人たち、例えば9.11を知らない若い人たちのような、知らない人たちに向けられているのでしょう。ちょっとまったりした直喩的説明なわけです。そこが、ありきたり、という評価に繋がりやすいのだろう、と私は思います。

しかし、直喩的説明ではない系列が実は差し込まれているのです。

それは人さらいの化け物ではなくて、前半に出てくる座敷童のような少女に始まる系列なのです。映画の技法としてのフラッシュバックであるとは厳密には言えないような、特別な想像力の中で、ハルミを経て、奇跡的にスズの失われた右手、絵を描いて、あの時限爆弾が炸裂した日にハルミを握っていた、あの右手が、広島駅で拾った虱がわいた孤児が握っていた母親の右手と同一化する局面なのです。ハルミがスズの右手とともに吹き飛んだその瞬間は描写されない。その自粛こそが、名のない孤児の記憶をスズによるフラッシュバックに変えてしまい、広島の原爆とハルミと自分の右手を吹き飛ばした爆弾がショートしたことで、北条家への娘子の到来となるのは、素晴らしい想像力の発露だと私は思いました。ハルミと右手を奪った爆風も見知らぬ女を蛆で枯らせて孤児を孤児に変えた爆風も、爆風は爆風。


この映画は、世界の片隅の《全て》を写す映画である。ハルミと右手が爆裂するのを描かないのは、一つの選択なのです。このような意味での自粛が素晴らしいと言いたいのです。その沈黙が座敷童子と孤児を破裂したハルミに変えるのですから。このように、爆弾の破壊的な力とスズの死の欲動が反転し、錯覚と混同のフラッシュバックを実現するなかで前半と終盤を結束させる重層的な展開は、なかなかやるなと感じたわけです。


さて、嫁は2つのTVドラマ版を観ていたのですが、この映画は☆いくつ付けるかと尋ねると、5つ付ける、と。(^^)

このテーマに関する他の映画を紹介しておきましょう。①新藤兼人監督『原爆の子』(1952)、②関川秀雄監督『ひろしま』(1953)、③アラン・レネ監督『24時間の情事』(1959)。③の原題は”Hiroshima mon amour”で、邦題は最悪ですが、②のカットが劇中で使用されている。②は最終的に特定の政治的主題に向かっている。③の根源は①だろう。③の脚本はマルグリット・デュラスであり、新藤監督と音羽信子によるサバイバーとしての彷徨う女にどれだけ共感を覚えることになったかは、デュラスの後の作品から明らかであろうし、その文脈で①の音羽信子が演じる「白いシャツの女」も理解すべきであると思います。①、②、③の順で観ていただき、特に③はヌーベルバーグ左岸派の一本なので、何度も精神に馴染ませるように観ていただければと。(^^)
 



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  1. ベルイマンさん

     こう言う映画を語れるって人は貴重ですね。 それも ちゃんとしたシステムで視聴できるのは 評論家と言えど多くはありません。   専門誌(オーディオ系、映画系)で映画について 内容もですが 画質や音質に付いて触れていますが 画質はTV程度だったり 音質はサラウンドバーやチープなサラウンドセット程度だったりが ほとんどですから。  彼らにおいても 視聴環境を明白にして この様な評価であると言って欲しいですよ。  

     私はちょっと趣味が違うので見る事はないかな?(笑)

    待ちきれず 日本語未対応盤を買ってしまいました。  同系ではもー1枚あります。 想像をフル回転して 内容が理解出来るようにしますが 先ずは その迫力に心酔したいと思います。

     良かったら 「今日の1枚」に上げます (^-^)/
     

    byアコスの住人 at2021-09-12 09:19

  2. こんにちは

    いわくつきの映画と見えない線での繋がりに気付いたりするのも楽しみのひとつ、③の連想で脈絡なくイニャリトゥのバベルやキアロスタミのライク・サムワン・イン・ラブが浮かびました。
    偶に聞きたくなる曲がありそんな時はyoutubeにお任せですがバックの映像がアロノフスキーのブラックスワンになってました。
    https://www.youtube.com/watch?v=df_bvdyuaaM

    byぺぶるす at2021-09-12 14:26

  3. アコスさん、こんばんは。

    さては、、、音響バリバリ〜じゃないともったいないって思ってますね!(^^) 静かな映画は好きな人に任せる、自分のとこのシステムでは、バリバリ系だ〜って。(^^) 一理あります。ただ、バリバリ映画でなくても、サラウンドシステムの実力って結構問われるな、と思います。とにかく映画ソフトについて、ばんばんこれから書いていきますのでよろしくお願いします。(^^)

    今日の一枚って、何の映画なんだろうって思ってましたが、それかー!観てみよっと。(^^)

    byベルイマン at2021-09-12 20:22

  4. ぺぶるすさん、こんばんは。ぺぶるすさんはなかなか良い鼻をしてそうですね。(^^)

    しかし、挙げておられる両作品、観ておりませぬ。(爆)

    イニャリトゥは非常に尊敬していて、長編は『バベル』以外を全て観ており、好きなのは『アモーレスペロス』と『biutiful』です。『バベル』すぐ観ます。実は出演している日本人女優さんがどうも、、、(^^)

    キアロスタミは『クロースアップ』は来たー!って思いましたね。歴史的な傑作だと思いました。『ライク・サムワン・イン・ラブ』を観てみますね。

    また教えてください。

    byベルイマン at2021-09-12 21:01

  5. ベルイマンさん

    さすがの映画鑑賞日記ですね。本編もさることながら、文末にかけてさりげなく紹介される3作品の短評もさすがで、鑑賞への興味をそそります。

    このコミュでもこういう映像作品のソフト紹介や鑑賞日記がもっと増えて欲しいですね。

    byベルウッド at2021-09-13 09:59

  6. ベルウッドさん、こんばんは。

    褒めていただき、ありがとうございます。ぜひ①と③を観ていただき、ベルウッドさんの解釈を読みたいです。

    私も映像の紹介はどんどんやっていきたいと思います。私の恩師が「真理とは反復だ」と言っていました。そのこころは、繰り返すと、真理になる、と。(爆)

    byベルイマン at2021-09-13 19:10

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