日記
8bit処理の排除 -Compressor 3.5
2021年04月08日
Final Cut Studio(2009)を構成するコンポーネントの一つであるCompressor 3.5はFinal Cut Pro 7やFinal Cut Pro Xと同様にネイティブで10bitに対応します。しかし内蔵のフィルタには8bit YUV, 8bit RGB, 8bit RGBA処理となっている物も存在しています。
実は先日からYouTubeにて一般公開を行った2つの動画のマスターに実精度8bitとなっているカット, フレームがあります。
・新世紀エヴァンゲリオン TV版 予告編
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先ほど述べた8bit YUV処理のフィルタを使用する必要のあるカット, フレームがあった為です。
必要となった8bit YUV処理のフィルタはi/p-Convertに使用するデインターレースフィルタです。
Compressor 3.5のフレームコントロール機能に10bit処理が可能な遥に高度なi/p-Converterが搭載されておりますけれどこちらで行える動き補償, 動き適応, 線補正の手法では適した処理を行えないカット, フレームが存在しており、そこにデインターレースフィルタを用いブラー(二重化)の手法を用いる必要があったのです。
ブラー(二重化)の手法を用いる必要があったカット, フレームは主にSDTV時代のDVE, DMEの類いで合成を始めとした信号処理の施されたカットでありこれらインターレース表示でのフリッカー対策を予ているのかフィールド処理が行われており静止画部に通常の処理を施した場合ジャギーが生じる事となってしまうのです。
後段処理でUp-ScalingやColorSpace-Convertを行う事となるUp-Convert作業ではそこでの損失を最小限に抑える為、私はどうしても全行程10bit処理で行いたく思うのです。
況してやトランスコードやデジタルプロセッシングを一切行っていないソースをネイティブで表示する場合であっても8bit量子化の画を嫌う人間が私ですので尚の事。
他のアプリケーションやハードウェアを使用する方法や先送りにする方法も検討しましたけれど、Compressor 3.5のフレームコントロールを選択する事で解決致しました。
その方法ですけれど、フレームコントロールに備わるi/p-ConverterとFrameRate-Converterを併用する方法となります。
二重化というi/p-Convertの手法はフレーム内の両フィールドを合成する事で垂直解像度の低下を抑えつつコーミングやジャギー等のアーティファクト発生を抑えるものです。
ですから下記の手順で再現する事が可能です。
1, ラインダブリングの手法でi/p-Convertを行い片フィールドの情報のみを持つプログレッシブフレームを生成する。
2, 生成したプログレッシブフレームをフレームブレンディングの手法で合成し中間フレームを生成する。
3, 中間フレームのみを引き抜く。
上記の手順は何れもフレームコントロールから行う事がCompressor 3.5では可能です。
少々手間は掛かりますけれどこの方法であれば10bitの実精度を保持した状態での二重化をCompressor 3.5で実現可能となります。
また、この方法ではデインターレースフィルタとは異なりフレーム内の隣接フィールドの他フレーム間の隣接フィールドに対して二重化を行ったフレームも出力されますので10bitの実精度が不要な場合でも二重化の手法を用いた60p出力が必要な場合にも役立てる事が可能です。
↑ターゲットソース
↑通常の方法でのi/p-Convert
↑今回の方法でのi/p-Convert
↑前回の方法でのi/p-Convert
※上記のサンプルは何れも先日の記事(ドット妨害, クロスカラーの後処理 -Digital Archive Production System)にて紹介した方法を併用しています。
フィールド処理により合成を行われた静止画部への対処方法として他に垂直方向のフレームサイズが50%となるよう最近傍補完の手法でDown-Scalingを行った後にLanczos, Spline, Bibubicなどの手法でUp-Scalingを施す方法が考えられますけれど、こちらは垂直解像度の低下がより顕著に発生しジャギーの抑制効果も二重化の手法によるi/p-Convertに劣りよい結果を得る事は出来ませんでした。
また、当然の事ながらフィールド処理となっていない箇所への悪影響が非常に大きく各所に解像度の低下やジャギーの発生が見受けられます。
↑ターゲットソース
↑二重化手法によるi/p-Convertを応用した対処例
↑Scalingを応用した対処例
※上記のサンプルは何れも先日の記事(ドット妨害, クロスカラーの後処理 -Digital Archive Production System)にて紹介した方法を併用しています。
この様にして前回の動画における信号処理の不満点を一つ解決する事が出来ました。
今回の方法を用いて8bit処理を排除した動画は先日よりYouTubeにて一般公開しております。宜しければご覧下さい。
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