日記
Auro3Dさん宅オフ会リモート参加+K&Kフィルター
2020年10月30日
【Auro3Dさん宅での実験】
Auro3Dさん宅のセンターSPとサラウンドSP選定で問題となった位相のことが発端となって、K&Kさん発案のフィルターを使った実験が10月24日にAuro3Dさん宅(伊豆の別荘)で行われました。これについては、Auro3Dさんの日記をご覧ください。
この伊豆での実験に私も、リモート参加(Zoomを使ったウェブ参加)させていただきました。Auro3Dさん、K&Kさんその節は有難うございました。その時のPC画面でも撮っておけばよかったのですが、忘れており、お見せできません(残念!)。Auro3Dさんの日記や、その際実際に訪問されたK&Kさんの日記から少し時間が経ちましたが、何故私がリモートで参加させて頂いたのかや、K&Kフィルターに関する拙宅での実験結果について、日記にすることにしました。
【実験に参加させて頂いた経緯】
参加の経緯はちょっと複雑です。Auro3Dさん宅のSonettoIIIVのウーハーが中高域のユニットと逆相接続されていたことが判明して、その時、拙宅のセンターSPも同様なので、様々テストし、日記に記しました。その時の私の結論(というほどのものではありませんが)は「300Hz程度以下のクロス周波数であれば、逆相ウーハーは大した問題ではなさそう」でした。が、そこに、K&Kさんから、Auro3Dさんへ驚く提案がありました。
【逆相ウーハーとは】
3WAYを想定すると、以下のような接続となっている場合のことです。
ツイーター(正相:+端子に+電位がかかるとコーン紙が前に動く)
スコーカー(正相:上と同様)
ウーハー (逆相::+端子に+電位がかかるとコーン紙が'後ろ'に動く)
Auro3Dさん宅では、上と全く逆の配線となっていますが、ここでは中高域を基準に話をすることとします。
ネットワークの形式が12dB/octであると、このように上下のユニットが逆相で接続されていることがほとんどです。ウーハーのコーン紙が逆方向に動くので変に思われるかもしれませんが、そのほうが周波数特性は良く繋がります。左右同じSPを使えば聴感上は全く問題ないと考えられています。拙宅のセンターSPも同様です。
しかし、このようなSPに、全ユニットが正相で接続されているSPをセンターやサラウンドSPとして組み合わせると問題が生じる可能性があります。前に動くウーハーと後ろに動くウーハーが一つのシステムに混在するのですから!
これが逆相ウーハーの問題です。
【K&Kさんの驚くべき提案:K&Kフィルター】
そこにK&Kさんが驚く提案をされました。メインアンプ2chを一つのSPに使って、ウーハーを正相接続で使う方法です。上手く行くなら、全てのユニットが正相接続になって、万事OKとなります!
でも、どうやって、そんなことをするのか???
詳細はK&Kさんの日記に詳しく書かれています。
12dB/octのネットワークでは、上下のユニットの極性を反対にしないと、上手く繋がらないことは上に書きましたが、実は18dB/octだと、上下のユニットの極性は同じ、つまり正相接続で良く繋がるのです。
そこで、12dB/octのネットワークに6dB/octのフィルターを追加してやれば、18dB/octになって、正相接続で上手く繋がるのでは????という驚きの提案なんです。
どこで追加するかというと、メインアンプの手前のライン入力のところに自作の6dB/octのフィルターを入れ、バイワイヤー端子を利用して、フィルター付きのバイアンプ駆動をするという、発想でした。びっくりですが、良く考えてみると、原理的には可能なんです!!
Auro3Dさんがこのフィルターに「K&Kフィルター」と名付けました(^o^/)。
【K&Kフィルターの効果】
Auro3D邸での実験で効果があることは報告されています。実は、リモート参加が決まった後に、拙宅でも(K&Kさんのご要望もあり)Auro3D邸での実験に先立ちテストをしておりましたので、以下その結果の報告です。Auro3Dさん宅実験へのリモート参加時は、この結果などとも比較したりしながら、楽しく拝見(拝聴?)させて頂きました。
何故先に実験できたかというと、拙宅では8chDACでサラウンドシステムを構築していおり、その空きchとROONのDSPを使ってデジタルフルターを追加することができたためです。元々バイアンプ駆動していたこともあり、追加部品も殆ど必要なく(ラインケーブルのみ追加)、テストができました。
拙宅のセンターSPは 米国のPolk Audio社のもので、ツイーターとスコーカは2.8kHで/18dB/octの正相ですが、ウーハーとスコーカーは上記のように280Hzで12dB/octの逆相接続となっています。フロントSPのウーハーは正相接続なので問題です。
以下のグラフは、下側に元々の周波数特性(ウーハーだけの場合とスコーカー+ツイータだけの場合二種)、上側にK&Kフィルター付きのバイアンプ駆動の時の周波数特性です。勿論、K&Kフィルター付きの場合は、全ユニットが正相接続になっています。

(K&Kフィルター有と無しの周波数特性の比較)
下側の元々の特性を見ると、280Hz付近でクロスオーバーとなっていることが分かります。上のフィルター付きの時の特性は、正相で接続されているのに、クロスオーバー付近の特性に全く乱ればありません。ホントにフラット!何もしていないような!。勿論、フィルター無しで正相接続にすると、クロスオーバー周波数に大きなディップができます。
驚くことに(予測通りですね(笑))K&Kフィルターは見事に働きました。
念のため、フロントSPの片方とセンターSPの二つを同時に鳴らして、周波数特性を取りました。それが以下のグラフです。

(左フロントSPとK&Kフィルター付きセンターSPを同時に鳴らしたときの特性)
ウーハーが逆相だと100Hz 以下で、少しディップができますが(以前の日記で報告しました)、K&Kフィルターで正相接続にすると、ディップ(打ち消し合い)は全く生じていません。う~ん、やはり効果がありますね!
【では、出音はというと】
周波数特性はほぼ変わりませんが、SPの音色はホンの僅か変わるかと思います。拙宅の場合は、僅かにすっきりした音になったかと思います。好みの問題の範囲ですが、適用するSPの特性によって、変化の度合いや方向性は変わるのではと思います。センターSPでの変化は私の好みの方向であったので、良かったです。
サラウンドとして、K&KフィルターをセンターSPに使った場合の出音も、私の好みでした。中低域がわずかにすっきりして、見通した良くなったと思います。Auro3D邸では、フロントSPへの適用でしたが、出音の変化には共通点があるようです。
【まとめ】
K&Kフィルターは効果ありですね(脱帽)。逆相ウーハーが組み込まれているサラウンドシステムをお持ちの方で、バイアンプ駆動を既にされている方であれば、アナログフィルターの追加のみでテストできます。一度お試しあれ(^o^/)。
Auro3D邸は凄いシステムになりつつあります(拙宅とは格が違います(泣、笑い))。そのうち、実際に訪問させていただけると幸いです。
レス一覧
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Tomyさん
我々3人で(私は実質的には何もしてませんが=笑)行った実験の、素晴らしい補足レポート、感謝です。K&Kさんのアイデアは、チャンネルディバイダ―をシステムに組み込んでいる場合は、ソフト的にも応用可能だということですね。恐らく、一連の日記は、今後ソナスをマルチチャンネルオーディオに使う方の参考になると思います。
技術面の解説は、TomyさんとK&Kさんに完全お任せ(笑)ですが、主観的な感想としては、「ふくよかな低音」(実は床鳴りしている=笑)が好みな私の、ステレオ再生で聴いた第一印象は、「ちょっと音がやせたかな?」でしたが、「本命」のマルチ(つまり「K&Kフィルター」の効果で低音の位相がそろう)にしたら、量は全く問題なく(むしろ以前よりボリュームアップした印象)、質は日記にも書きましたがすっきり、見通しが良くなりました(恐らく混濁感が減少)。質も量も、その変化はフロントとサラウンド・サラウンドバック間の低域の位相がそろったことが理由なのでしょうね。
厳密にいえば、プリとパワーの間に「夾雑物」が入ったことで、中高域でも多少なりとも音質が悪化しているのでは、という原理的な批判があり得るとは思いますが、私の「駄耳」にはその違いは指摘できるほどのものではありませんでした。これはK&Kさんが質のいい部品を使って作ってくださったお陰だと思います。さすがです。
>Auro3D邸は凄いシステムになりつつあります(拙宅とは格が違います(泣、笑い))。そのうち、実際に訪問させていただけると幸いです。
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まだ、買いそろえているだけで、まったく「使いこなし」をしていませんので、いずれ拙宅にてご教示いただければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。
byAuro3D at2020-10-30 08:09
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Tomyさん、AUROさん、K&Kさん、おはようございます。
お疲れ様です。見事に問題解決でしょうか。自分はクロスオーバーの話を聞いていたので、同一スピーカーに揃えるところからスタートしたので、なんだか傍観者として他人事のように、一連の投稿を楽しめました。(爆) 当事者でしたら病んでいたと思います。(^^) AUROさんの新システムが順風満帆のスタートを切る準備ができたのだと思います。philewebコミュニティの問題解決能力が遺憾なく発揮されたことを祝福したいと思います。
byベルイマン at2020-10-30 08:59
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ベルイマンさん
ベルイマンさんの事例は、3人で実験している時にも私が話題に出しました。正直、この「問題」を先に知っていれば、Amator IIIと最後まで迷ったSopra2にした可能性は高く、そうであれば、5chすべてを迷いなく同じSPで揃えられたのにな、という思いは「少し」あります(するとベルイマンさんと完全にかぶってましたね=笑。まあ、Amator IIIの音に魅了されてしまったので、後悔はしていません)。
といっても、先ほど「日記」で<告発>(笑)したように、このような「問題」について私のような素人が読むレベルの雑誌では、これまで情報提供があまりなかったのではないでしょうか。2chのプロショップのベテラン店員も知らなかったそうですし。かすかにAVACさんで8805を買い求めた際に、「これを機にマルチチャンネルオーディオ用のSPを一新するなら、全部Eclipseで揃えた方が無難」というアドバイスをいただいた記憶がありますが、その時はその理由までは教えていただけませんでした。今考えるとEclipseはフルレンジでネットワークすら入っていないので、位相に関しては完璧ですよね。彼は多チャンネル化に伴う位相の問題を理解していたのでしょう。
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AUROさんの新システムが順風満帆のスタートを切る準備ができたのだと思います。philewebコミュニティの問題解決能力が遺憾なく発揮されたことを祝福したいと思います。
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本当にその通りです。このコミュニティに入れていただいて、思い切って質問させていただいて良かったと思っています。皆さんの助言がありがたかったですが、特にK&KさんとTomyさんには感謝しております。
byAuro3D at2020-10-30 09:40
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Tomyさん、
こんにちは。
レポートありがとうございます。
この件では本当にお世話になりました。
大変感謝しております。
Auro3Dさんはすごく腹が座っていて今回のフィルター回路もお渡しする前に部品代を私の口座に振り込んでしまうような方ではありますが、会ったこともないどこの馬の骨ともわからぬような私の提案を試してみることにはかなり躊躇があったと思います。
私が提案を書き込んだ時にTomyさんがそれに賛同してくださったことが、Auro3Dさんの背中を押すことになったと思っています。
それともうひとつ。
Auro3Dさん用に私が用意しようとしたのはアナログのフィルター回路、ハードウェアなので部品調達や組み立てに時間がかかっていてさらにその確認はAuro3Dさんとのオフ会まで待たなければならなかったのです。それまでの間は本当に機能するか不安でした。
机上ではうまくいくとは思っていましたが、何事も試してみるまではわからないので…。
でも、Tomyさんが手持ちのDAC(?)のフィルター機能を使ってささっとデジタルでそのフィルターを構築して一足先に実験してくださったことは非常にうれしかったのです。
実験結果の報告をいただいた時には「ヤッター」と思いました。
こちらはアナログ回路なのでその時点ではまだ乗り越えないといけない壁はあったのですが、Tomyさんの実験で少なくともこの方法の考え方が間違っていないことが分かったので、すごく勇気づけられました。
Tomyさんのところはさらに全ユニットの正相化を進めるためにアナログ回路も併用されるとお聞きしましたが、うまくいきましたらまた結果をお聞かせください。
これからもよろしくお願いいたします。
byK&K at2020-10-30 13:16
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ベルイマンさん、レス有難うございます。
いつも「象牙の塔」の記事楽しく拝見しております。改築された専用室のSopra4機のサラウンドシステム凄いですね。
K&Kフィルターには私も大変驚かされましたが、K&Kさん、Auro3Dさんはじめ、このサイトの皆さんの前向きな(足を引っ張ることのない)暖かい姿勢が、成功に結び付けたのだと思います。
お気に入りユーザーに加えさせて頂きました、これからも宜しくお願いいたします。
byTomy at2020-10-30 14:58
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Auro3Dさん、K&Kさん、こんにちは、
先日は大変面白かったですし、勉強にもなりました。拙宅のシステムはまだまだ、逆相の部分が残っているので、やっと一歩踏み出した感じです。まだまだ、先があります。これからも、相談に乗ってください!
宜しくお願いいたします。
byTomy at2020-10-30 15:06
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Auro3Dさん、
>厳密にいえば、プリとパワーの間に「夾雑物」が入ったことで、中高域でも多少なりとも音質が悪化しているのでは、という原理的な批判があり得る
その通りだと思います。しかし、低域の位相が揃った効果が、それを越えてプラスの効果を奏するのではと思います。後は、音質の変化がどうしてもあるので、それを気に入るかどうかでしょうか?
メールで知らせしたように、逆相ツイータへの応用は、耳に敏感な音域でもあり、音質の変化が悪い方向へ行ったようで、今はあきらめています。その点300Hz以下の低域は、音質の変化も少ないので、K&Kフィルターの効果が発揮され易いのではないでしょうか?
byTomy at2020-10-30 15:14
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K&Kさん、
>Tomyさんのところはさらに全ユニットの正相化を進めるためにアナログ回路も併用されるとお聞きしましたが、うまくいきましたらまた結果をお聞かせください。
上にも書きましたように、フロントのツイーターへの応用が、上手く行っていないので、当面センターSPだけK&Kフィルターを使う予定です。そうすると、DACの残り2chの内1ch使うだけで賄えます。フロント二本に、DAC2chを使い、センターSPをアナログフィルターにしようかと思っていたのですが(汗)
なので、次は、サラウンドSPの逆相ウーハーの正相化になります。そうすると、DACの残り1chでは賄えずに、アナログフィルターの登場となります。ただ、サラウンドSPはバイアンプ駆動にはしていないので、メインアンプの強化(2ch分追加)が必要です。少し先にはなりますが、ハイ、その際はレポートいたします。
フロントSPの逆相ツイーターは、ひょっとすると、完全なマルチアンプにするかもしれません。その際はご相談させてください。どちらを先にするかなあ~(笑)。費用的にはフロントSPのマルチアンプ化が圧倒的に安いのですが。
byTomy at2020-10-30 15:33
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Tomyさん、
高域のフィルターの結果がよくなかったことが少し気になっています。
裏付けデータが何もないので強くお勧めすることはできないのですが、一度アナログのフィルター回路を高域のクロスオーバーに試してみませんか?
特にトゥイータへの信号レベルはかなり低いし周波数が高いのでデジタルの不得意な領域になりそうな気がして…
はずれたら申し訳ないのですが。
byK&K at2020-10-30 21:24
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K&Kさん、
そうかもしれませんね。簡単にあきらめるのは性分ではないので、もう一度デジタルフィルターでも条件を替えて試すなど、試みで見ます。アナログフィルターを使うときは相談させていただきますので、宜しくお願いいたします。
byTomy at2020-10-31 09:56