日記
備忘録:クロスオーバーコンデンサー換装記
2021年11月15日
背景)拙宅のSPのパッシブネットワークのコンデンサーは粗方換装済みなのですが、一部音質に不満もあり、性懲りも無く、さらにグレードアップすることにしました。ファイルウェブの方々は、ハイエンドSPをお使いの方が多いので、SP内部のパーツを触っておられる方は少ないと思います。メーカーの保証も無くなりますし、高価なSPを壊してします可能性や、元々高価なSPであれば、十分良いパーツを使っているのでバランスを崩すのではと心配する(汗)こともあるかと思います。
しかし、一本数百万円を超えるコストを度外視したハイエンドSP以外では、ネットワークパーツは意外と低級な(失礼!)ものが使われています。拙宅のB&W 802MatrixS3は30年程前に数十万円の価格でしたが、使用されているコンデンサーはほとんど電解コンデンサーで、高域用に2〜3個数百円程度以下と思われる安物のフィルムコンデンサーが使われていました。見えないところなので、コストダウンに活用されていたようです。ウェブで見ると、マジコのA5でも使用しているコンデンサーはムンドルフ社の中級クラス(EVO Oil,10μFで2千円程度)のもののようで、ハイエンド品ではありません。容量によりますが、ムンドルフ社のハイエンド品だと数μFで一万円を超える価格になるので、コストバランスから、沢山使えないことは容易に理解できるところではあります。
(Magico A5のネットワーク基盤)
ですので、数十万円程度のSPでも、既設コンデンサーを1万円程度のハイエンド品に換装することで、音質アップが狙えます。そこそこの高級ケーブルのコストで、場合によっては大化けします(そこが面白いところです、笑)。私の手の届かないB&W800D3〜4クラス以上のSPでは。これは不要です(もちろん=笑)。クロスオーバーのスロープを変えたりはしませんので(容量は同じ)、音のキャラクターはそのまま、ベールを1〜2枚剥がしたような変化が生じます。あまり変わらないこともありますが、悪くなることは経験したことがありません。その点でも安心して行えるかと思います。
以下のサイトに、各社のコンデンサーの評価が詳しく記載されています。このサイトでは、20段階(1〜20)で評価して、超ハイエンド品で15、ハイエンド品10程度以上、中クラスで〜8、低級品で5〜6の評価のようです。このサイトの評価は、割と信用して良いと思っています。http://www.humblehomemadehifi.com/Cap.html
このような多種多様なコンデンサーの中に、バイパスコンデンサーと言って、小容量のもので、容量の大きなコンデンサーに並列で使用して、音質を向上させるものもあります。今回はこのバイパスコンデンサーを付加することにしました。
【Duerlundのコンデンサー】
上記のサイトで15の最高評価を得ているのは、ドイツのDuelund社のCuフォイルコンデンサーです。B&W800D3に使用されているハイエンド品はMundorfのGold/Sliver Oild(金粉、銀粉が多分入っている?)で個人が購入すると一個数万円ですが、それでも評価は〜12。Duelundのコンデンサーは超ハイエンドと言えるでしょう。値段もさることながら、デカイ!
(Dueliundのコンデンサーの例、これで3.3μF!)
しかし、バイパスコンデンサーは手頃なサイズです。0.01μFで長さが5cmくらいあるので、容量からすると馬鹿でかいですが’(笑)。これを並列で使用すると、どのコンデンサーでも評価が+2増加すると上記のサイトでは言っています(ホンマかいな?)。
(今回使用したDuelundのバイパスコンデンサー)
実はすでに何回か試していて、実際に効果があることを経験しているコンデンサーなのです。今回はこれを6個購入し(〜5000円/個)、フロントSP(B&W802)、センターSP(Polk LsiM706C),さらに背面側に設置している2chのDefinitive Technology Mythos-STL、の5本のSPに導入することにしました。下の図面が拙宅のシステムです。
(拙宅のシステム)
【導入方法、B&W802Matrixの場合】
B&WのSPはみなさん良くご存知の通り、多くは正相接続で、下記のようなクロスオーバー回路となっています。基本3次、18dB/octで結構複雑な回路です。今回はミッドレンジのSPに並列に入っている10μFのコンデンサーにDuelundのバイパスコンデンサーをパラで挿入しました。ツイーターのコンデンサーに付加することも考えましたが、敢えて、ミッドに使用しています。理由は後ほど。
(B&W802Matrixのネットワーク回路図)
SPボックスの底面を開けるとネットワーク基盤が付いています。初期は下の写真(a)のように小さな安物ののコンデンサーばかりです。
(B&WMatrix802のネットワーク基盤とパーツ)
数年前にMundorf,とJantzenのフィルムコンデンサーに全て換装しております。使っているフィルムコンの上記サイトでの評価は8.6〜11.5ですので、結構ハイエンド品です。バイパスコンを付加したのは上の写真(c)の矢印のMundorfのM-Cap EVO Oilです。付加後の写真は撮り忘れてます(笑)。
今回は全てのSPについて上記同様ミッドレンジのコンデンサーにバイパスコンデンサーを付加しました。以下の写真はMythos-STLの付加後の写真です。以前の換装による大きなコンデンサーで内部の容積が結構減少しています(汗!)。吸音材の繊維がコンデンサーに付着していたあまり綺麗じゃないですね、音には関係ないですけど(恥、汗、笑!)
(Mythos ST-Lのバイパスコンデンサー付加後のSP内部)
【音の改善効果】
これが一番気になるところです。
(1)Definitive Technology Mythos-STL
日本ではあまり知られていないメーカーのもので、100Hz以下はアクティブサブウーハーが受け持っています。ですので、ネットワークは2way用のもので、12dB/oct、上述同様ミッドレンジのコンデンサー(Jantzen Super-Z-cap, Alumen, & Myflex KPCU-01)3本並列で15μFにバイパスコンを付加しました。視聴にはMundorfのAMTスパーツイーターも上部に乗せて行いました。
(Mythos-STLの回路図)
コンデンサーの取り付けには半日掛かっていますので、前日の取り付け前の視聴の記憶との比較です。
取り付け後、SPをほぼ元の位置に設置して、何時も視聴時に聞く、上原ひろみのVoice(CD)を聞きました。ピアノの音色やベースとドラムの分離感などがチェックポインットです。最初の印象は、「ええつ、全然違う!」でした。ミッドレンジへの追加なのであまり期待していなかったので、これは意外でした。プラシーボもあったと思いますが、換装後一週間経った今でも、明らかに違いをを実感できます。ベース、ドラム、ピアのの分離が良くなり、自然で滑らかに鳴っていると感じます。クリアになった分、明るめに聞こえるかなと感じます。この点、セッッティングなどの調整が必要でした。Dirac Liiveで補正しているので、補正カーブも調整しました。今も、キースジャレットのケルンコンサートを聴いていますが、拙宅史上最上の音で鳴っています。この効果が大きかったので、他の二つもミッドレンジにバイパスコンを付けた次第です。
(2)Polk LsiM706C
Polk AudioのSPは最近日本でも販売が再開されました。PhileWebにもレビューがあります。LsiM706Cは現状販売品の一世代前のフラックシップシリーズのセンターSPです。もう既にコンデンサーはMundorfやJantzenに換装済みですが、これも同様、ミッドレンジのコンデンサー(Mundorf Evo Oil)にバイパスコンを付加しました。この場合はミッドレンジユニットに直列に入っているものと、並列に入っているもの2個に付加しました。そもそも、これを改善しがいがために、バイパスコンデンサを購入に至ったという経緯がありますので、力が入ってます(なので、これには2個(も=笑)使いました、^o^/)。
(LsiM706Cの回路図)
センターSPなので、もちろん単独ではなく、B&Wのバイパスコンデンザー追加前の状態のものなども使って5.1chで、ます視聴です。
SACD、マリーナショーのLive in Tokyoを聞きました。これも好きなアルバムですが、マリーナショーの声の抜けが今一歩足りないと感じていました。これは以前からずっと気になっていた点で、前回のコンデンサー換装でかなり改善されていたのですが、今一歩の改善を期待した次第です。効果は期待に非常に近いものでした。これまで気になっていた、喉の硬さのようなものが,すっとなくなって、気持ちよく聞けるようになりました。一週間繰り返し(何回聞いたかわからないくらい(笑))、聴いていますが、この変化は私の拙耳にも明らかです。
(3)B&W802Matrix
最後にB&Wですが、最初は、こいつは大した変化はないかなあ・・・と思って聞いていました。マルチで聞いていたこともあって・・しかし、数日してから、サブウーハーを使ったベースマネージメントを調整している時に、サブウーハーを使わない設定でも十分な低音の伸びがあるなあ・・と気がついて、サブウーハー無しで(2ch)再視聴すると、あれ、低音が力強くなっているじゃない・・と。サブウーハー無しで聞くと、あらっ、中高域も、ナチュラルに成ったじゃないか・・と。嬉しい気づきでした(笑)。
【総評]
今回は、ちょっとばかし出来過ぎ君・・でしたが、何故か予想以上でした(ほんまかいな=爆)。コンデンサーはエージングしますので、数ヶ月先にどうなるのか楽しみです(心配でもあります)。コストパフォーマンス良好でした。
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Tomyさん
いつものお礼に(笑)。
私レベルではもちろん技術的なことはわかりませんが、市販のSPのネットワークに使われている素材がハイエンド以外は劣悪なもので、それを交換することで音質が向上する、という記事の趣旨は理解したつもりです。
Tomyさんのように、このようなことが自分でできる方が羨ましいです。
関連で1つ、Tomy先生に伺いたいのですが、私も、分不相応に(笑)、チャンデバ機能のあるAVプリを入手しましたので、「理論的には」、ネットワークレスで、3Wayなどのスピーカーを制御できると聞きました。そこで疑問に思うのは、この日記にありますように、内蔵ネットワークの質を上げるのと、ネットワークをカットして、チャンデバ側で同様の機能を持たせるのと、果たしてどちらが一般的には音質的に優れているのでしょうか?
もし前者であれば、私もいつかはTomyさんに発注(笑)、もし後者であれば、ネットワークがくたびれてきた頃に、チャンデバによる運用のための改造をTomyさんかK&Kさんに発注(笑)しようかなと思わなくもありませんので、ご教示いただけますと幸いです。
byAuro3D at2021-11-16 05:50
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Auro3Dさん、おはようございます。
レス、お気遣いありがとうございます。
>内蔵ネットワークの質を上げるのと、ネットワークをカットして、チャンデバ側で同様の機能を持たせるのと、果たしてどちらが一般的には音質的に優れているのでしょうか?
これは、チャンデバによるマルチアンプが(電気回路的に)優れています。信号を選り分けるのを大きな電力を消費するSPの直前で行うのは、色んな意味で不利です。SPはインピーダンスが周波数によって変動するので、理想的なスロープを作るのが難しいですし、チェンデバだと急峻なスロープも可能です。マルチアンプの難しいところは、好みの音色のスロープを探すのに時間、経験が必要だということでしょうか。
クロスオーバーの部品を良質なものにすることの最大の利点はコストです。マルチアンプだと、良質なアンプとチャンデバをチャンネル増加分追加するので、少なくとも数十万から百万円以上もかかるでしょう。そうなると、SPを買うときにそれを加えた値段にしておいた方が良かったのでは・・・とか、現状のSPを売って、買い換える方が良いのでは?・・・という疑問も起こります。一方、クロスオーバーの部品だと、一本当たり数万円から十万も出せばハイエンドです。
なので、マルチアンプにするなら、どうせSP内部を弄ることになるので、まずクロスオーバーのハイエンド化を試してからマルチアンプへの移行を考えても良いのではと思います。その時はお手伝いしますよ(笑)。
byTomy at2021-11-16 09:45
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Tomyさん
早速にご回答、ありがとうございました。
>チャンデバによるマルチアンプが(電気回路的に)優れています
理論的な理解がある方は、答えが明確で気持ちいいですね!この方式の問題点も了解しました。
>マルチアンプだと、良質なアンプとチャンデバをチャンネル増加分追加するので、少なくとも数十万から百万円以上もかかる
これは、もしかすると図らずも(笑)、拙宅の場合、ISP MK2と6台のSTA-9(「良質」とは言えないかもしれませんが=汗)がすでにあるので、3Way×3台なら運用可能かも(ISPの追加モジュールが必要になるかな?)。
>マルチアンプにするなら、どうせSP内部を弄ることになるので、まずクロスオーバーのハイエンド化を試してからマルチアンプへの移行を考えても良いのではと思います。その時はお手伝いしますよ(笑)。<
オーディオではやったことが無いのですが、「改造」は車なら好きなので(笑)、興味が無いと言えばウソになる(笑)。でも、まだ買って2年も経たないので、もうしばらくは「ソナスオリジナル」の音を楽しんで、それに飽きたら、またご相談させていただくかもしれません(…禁断の道か…笑)。
byAuro3D at2021-11-16 11:50
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Auro3Dさん、
>これは、もしかすると図らずも(笑)、拙宅の場合、ISP MK2と6台のSTA-9
確かに、Auro邸は準備万端ですね。後は禁断の道に踏み出す勇気だけです(笑)。
byTomy at2021-11-16 13:36
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