最近各社から様々なネットワークプレイヤーが発表・発売され、選択肢もそれなりに広がってきました。早くからこの種のものには興味があり、安くて高音質でかつこちらが望む条件を満たす機器はないものかと待ってきましたが、結局現時点(2010年11月)で私の希望を満たすのは、老舗のLINNだけでした。

私の思うに、LINNの他社より有利に見える点は、
①商品づくりのコンセプトが明確でブレがない。リッピング・データ管理はPC、音源の読み出しはNAS、オーディオコンポーネントへの直結はレンダラー以降のみという基本構成は、高音質志向のコンポ構成の王道と思われる。一機に多様な機能をつければ便利だが、私の望むのはその方向ではない。
②老舗としての実績がある。具体的には、ファームウェアのアップデートで機能向上を実際に継続的に実現してきた。他メーカーだと、売れ行き次第では今後アップデートなしという可能性が十分ありうる。
③iTunesによる音源管理をほぼそのまま反映できる。現状、ALACなどApple独自の可逆圧縮・無圧縮形式でもちゃんと対応できている機種は限られている。PCでの音源管理でおそらく最大のシェアを持っているiTunesと親和性がなければ、新しいユーザの広がりも期待できず市場的にじり貧になる恐れがあるが、今のところ他メーカーの対応は鈍い。
一方不利に見える点は…割高なことです(笑)。これをメインプレイヤーとして使う場合はよしとしても、私のようにトランスポート使用がハナから目的だと話は別です。まあLINNはあくまでプレイヤーとしてのパッケージにこだわり、安売り圧力を高めるであろうトランスポート単独機の生産には傾かないでしょう。
LINNに限らないと思いますが、ネットワークプレイヤーを快適に使うには、LAN環境の整備以上に、ライブラリ管理をいかに上手にするかが重要です。iPod touchなどをコントローラとして使う場合、検索のしやすさを考慮したタグ情報管理を行うと使い勝手が格段に向上します。クラシックの場合特にそうですが、[トラック名][アルバム名][アーチスト名]の3項目中に必要な情報を不足なく含むようにしておくと有利です。こうしたことも含め、最も役に立った文献はLINN JAPANに掲載される以下の文です。未完成ですし多少古い部分もありますが、内容が適切であり論理的です。この種のものに付きまといがちなオカルトめいた説明はありません。
http://www.linn.jp/ds/voice/02.html
AppleのiOS機で操作する場合のコントローラソフトですが、高いがSongbook DSはやはりおススメです。複数のメディアサーバの使いこなしが便利な点(私は一機で使っているが)、クラシックにありがちな長い曲名の圧縮表示や横倒し使用による長尺表示が可能な点もよいです。ただしばしばレイアウトが崩れる点、何かあるといちいちメディアツリーの最上位ディレクトリまで戻らないと曲選択ができなくなり、いちいちアルバムデータも読み直していく点など、細かい弱点もあります。これらが気になる方はChorus DSがおススメです。使用にストレスやひっかかりがなく特に欠点らしいところがありません。以上二つは検索機能も優れており、タグ情報さえしっかり入っていれば「Scriabin」の作品だけ抜き出したり、ハイドン交響曲全集から「No.83」だけ抜き出したりというのが大変容易にできます。もうこれに慣れるともとの操作系に戻れなくなりますね。DSの操作に限って言えば、定評あるPlug Playerを使う意義は私はあまり感じませんでした。
さて肝心の音質ですが、私には評価にもう少し時間が必要ですのでここでは割愛します。添付品として非常に立派なリモコンがついていて、DS使用だけならほとんど使わないボタンばかりですが、いったんプレイリストの再生に入ればiPhoneをスリープさせといてもこれで一通りの操作ができるので便利です。
音楽を聴くとき、「この曲・この演奏を聴きたい!」というときと、コレクション(特にジャケ)をつらつら眺めて「これ聴こうかな」と誘われて聴くときの二種類が(私には)あります。後者から曲の魅力を改めて発見することが多々あり、私にしてみれば非常に大切な聴き方です。しかしCDの数が多くなりすぎるとそれが難しくなるし、iPod等を介していても明示的に曲を選択転送する作業が入ります。さりとてPCはうるさいし…このような悩みを決定的な解決に導くのがネットワーク再生の醍醐味であると思います。仕組みはいろいろ面倒もありますが、音楽好きの心性にピッタリ合ったオーディオソリューションであると私は思います。