【拙宅の事情】
太陽光発電を採用したオール電化住宅ということで生活的には便利ですが、どうもこれはオーディオ的には不利なんじゃないかという思いを薄々感じていました。また何かのスイッチが入る際に飛び込む可聴的なノイズも気になっていた点でした。本機を導入して初めてわかったことでしたが、交流波形の歪み率は昼夜を問わず3~5%、通常4%強、時に5%を超え、電圧も常時100Vに達していないというかなり劣悪な電源環境でした。
【導入の意図】
電源対策は知識浅薄な素人には容易に御することができない領域です。上流に遡れば遡るほど悪化要因は多岐化し、近隣の電気使用状況にすら左右されるとあっては、C/Pの良い対策は難しくなります。しかし上流における悪化要因は多種多様であっても、どのみちオーディオ機器に入る寸前では、部屋のコンセントおよび一本の電源ケーブルに一切が集中します。このポイントで対策を施す「クリーン電源」は、その性能さえ確かなら、素人考えでも最も効率的な対策がしやすいと思われます。
PS-1220は、メーカーの説明を額面通り信じるなら、この最も効率的なポイントでノイズを拭い去ったうえ交流波形を再生成し直接オーディオ機器に送り込むわけですから、「歪みのない100V/60hzを得る」という点では理想的な手段になるはずです。私自身が仕組みに最も納得できたうえ、Accuphaseは贔屓のブランドでもあり、身の程を顧みず本機の導入に踏み切りました。
【効果】
特にこれといった電源対策をとっていなかった拙宅の状況下では、音出しして最初の数秒でその目覚ましい効果を体感できるほどの改善効果が見られました。
それは再生音全般にわたるものであり、部分部分を取り上げて説明するのは重複点もあって冗長ですが、具体的な記述の方がいいと思い箇条書きにします。
●音場全体の透明感が向上しました。よく「一枚ヴェールを剥いだ」と言いますが、私の感覚では、薄く埃の乗っていた調度品を清掃してきれいに磨いたような印象です。
●楽器で言うならシンバルの改善が著しく、たとえばエルヴィン・ジョーンズはこんなに繊細にシンバルを叩いていたのかと今更気づいて絶句するほどです。概して、パルシヴな(要素を含む)音の質向上が著しいですが、管楽器の胴の震えなど、今まで気づかなかった音にも気付かされました。反面、弦楽器、特にオケの弦楽セクションにおいては目立った変化は見られません。ピアノは音の間の立体感が鮮明になる印象で、最初は戸惑いました。
●低域の見通しがとてもよくなり、低音楽器の定位が見やすくなりました。
●全体に明瞭化・繊細化するとともに、もともと少なかった刺激的な感じがほぼなくなりました。
また、その他気が付いた音質上の点を羅列しますと
●部屋の定在波の悪影響が分かりやすくなった 泣)
●音楽の「マス(塊)」としての迫力は減退しているように思われる(これは上記の変化に対する代償であると思われるが、私には好ましい変化である。)
【使い勝手など】
これも箇条書きで羅列します。
●重い。これを一人で2Fに運ぶのは心が折れそうであった。将来これをメンテに出すようなケースもあるだろうが、今は想像したくない。
●メーター機能は見ていて面白いし役に立つ。しかしオートモニター機能は無くてもよかったか?
●接続機器の電源一括ON/OFFが可能で、取説にはそう使ってもよいと書いてあるが、特にOFFの時一斉に「バチン」といって電源が落ちるので少し心臓に悪い。接続機器への悪影響は本当にないのか?
●A級アンプのように熱くはならない。暖かいという程度。
●ケーブルの着脱については、軽くはないが特に堅いわけでもない。
●Accuphaseの取説では、無音状態で800VA程度までが推奨の負荷と書いてあります。参考までに。ちなみに拙宅では400VA程度です。
●拙宅ではときどきトランスが唸りますが、結構音が派手です。PS-1220は一種のアンプであり、この機器自体には電源対策をしていないのですから当然かも知れませんが、これの対策は今後の課題です。
【まとめ】
このレビューを見ると誉めすぎのように見えるかも知れませんが、拙宅では改善効果が著しく、基本的には誉め言葉しか出てきません。電源対策がいかに大切かを今更思い知ることになりました。しかし音質の明瞭化・繊細化、音場の透明化は、私にとっては改善としか思えないものであっても、よく考えると誰にとっても望ましい方向なのかというと、違うのかも知れません。またPS-1220自体の鳴きをいかに軽減するかという課題も残しました。