使用開始後一ヶ月以上経ちました。初カスタムIEMということで有効な比較対象を持っておらず、やや的外れな感想もあるかと思いますが、思ったことを羅列してみます。

[1]音質
■3Way・片側6ドライバですが、マルチドライバっぽさは無く、帯域のバラつきを感じさせない一体感があります。
■出音が滑らかで、"痛い音"を出しません。全帯域にわたってワックスでツヤツヤと磨いたかのような音です。そのせいで、ついボリュームを大きくしがちなのは注意すべき点でもあります。
■帯域バランスとしては、豊かで濃厚な中・低域に、明瞭だが痛くない高域が自然に積み重なっている印象です。
■中・低域は情報量も多く、響きの再現も豊かで、濃厚。音の滑らかさに任せてボリュームを大きくとると、低域をド迫力で鳴らすことが可能です。
■高域は量はきちんと出ていますが、とにかく"痛さ"がないので、出しゃばることはありません。
■音場感については、特に広いと感じることはありません。というか、あまりないと思います。
■いわゆる解像度については文句のつけようがないですが、上記の性格のため、目立って音の分離やメリハリが強調されることはありません。従って再生音量や再生環境によっては、全体に"地味"に感じる人がいるかも知れません。
■音が濃厚でよく磨かれ、響きに存在感があるというのは、反面、あまり爽やかスッキリというわけではないということです。カロリーの高い食べ物をたっぷり食べる時のような、ある種の重さを感じることもあります。個人的な感覚で言えば「しつこい」ということはありません。が、感じ方に個人差はあるでしょう。
■個人的には、ドラムスの再現に耳を奪われることが多いです。帯域問わず、素晴らしい明瞭度と迫力でドラマーのプレイを楽しめます。
■中・低域の豊かさゆえ、オーケストラの再生もたいへんな迫力で楽しめます。音場で聴かせるタイプではないので、各楽器がよく分離しつつも重なって響くのをステージの間近で楽しむ感じです。
■個人的には、真空管のThe Continental V3や、ドッシリとよく響く感じのC2410ヘッドホン出力よりも、HP-P1やm902のような、モニターライクのヘッドホン出力と相性がいいと感じました。
[2]外観や作り
■シェル、フェイスプレートは実にきれいです。申し分ありません。
■透明なシェルの中には、抵抗やらハコやらカラフルなコードやらフィルターやらが所狭しと配置されていて、見ていて楽しいです。
■クリアケーブルを注文しました。が、さっそく耳に近い部分から緑化が始まっています。
■出音の管?は片側2本です。しかし中では管が合流したり、何種類かのフィルタが組み合わされたりして複雑な配管?をしています。
[3]その他
■カナルワークスさんのメールによる対応は非常に丁寧で、かつ迅速です。初めてのカスタムゆえのいろいろな質問に対しても、懇切丁寧な説明を、あまり間をおかず返していただきました。感謝しております。
■カスタムIEMの宿命かも知れませんが、持ち運びに気を使います。突起が多くそれなりに大きいので…。しかしペリカンケースを持ち運ぶのもそれはそれで不便です。私はカバン等に収納するときは、右左互いに接触しないようにタオルハンカチに包んで仕舞いますが、それも決してスマートではありません。
[4]感想
初カスタムでしたが、今まで使ってきたユーバーサル型とは性能的に大きな開きを感じ、直接の比較対象にはできないと感じた程です。
またモニターというよりは、あくまでオーディオ機器として作り込んである印象で、滑らか&円やかであるにも関わらず、鈍さや曖昧さとは全く無縁な音作りに触れると、特にネットワークに相当工夫を凝らしているのではないかと予想します。
総体的に言って、非常に満足しています。申し分ないといったレベルです。
しかしこのようなものを持つと、今度はあっさり系に関心が向いてしまいます。世評を聴くと、同社のL05QD、WestoneのES5とかが良さそうです。またカスタムIEMの父、JHAudioの製品も聴いてみたいとも思え、物欲は鎮まるどころか刺激される一方…。