DT770PRO(80ohm)の佇まいの特徴は、その質実剛健な意匠にある。見た目、ファッション性よりも音質を重視しているのが分かるデザインコンセプトになっている。
聴き始めは中音と低音にマスクされてしまいお世辞にも良いとは言えなかったが、エイジングが進むにつれて曇りが晴れていき、美音を聴かせてくれるようになった。
ヴォーカルは聴き始めから存在感のある音を出していた。エイジングが進むにつれて他音域とのつながりがスムースになり、より一層魅力ある音に変質していった。
聴き始めはなにやらボワつき、まとまりがない低域だったが、エイジングが進むにつれて音の分離が進み、同時にクリアネスを帯び始め、魅惑的な低音域を聴かせてくれるようになった。
イアパッドの感触が大変良い。レングスは長めにも短めにも伸縮するので、頭のサイズを気にする必要はない。反則技かもしれないが、着け心地が悪いときは、ドライヴァ部が付いているスチール製のフレームを曲げることで調整が効く。ただしその際、ヘッドフォン自体を壊さないよう注意が必要である。
ドライヴァユニットはプラスティック製のカップに取り付けられていることから、ヴォリュームを絞った時、多少外部の音が聞こえる。外音を遮断しようとする設計思想ではないようだ。
密閉型とはいえ、ドライヴァ部の音はほとんどダダ漏れである。これはイアパッドの素材の感触が良いこととのトレードオフであるように思われる。
エイジングに100時間から200時間はかかると思われるが、それをクリアすれば価格以上の音質になる。そういった意味ではコストパフォーマンスは高いと言える。
音楽ジャンル的に言えば、ジャズ、クラシックとの相性は抜群である。ロックも、アーティストや楽曲、録音の状態によって多少音的に重く感じることもあるかもしれないが、良く鳴らしてくれる。
比喩的に言えば「音に貫録をつけるのがうまいヘッドフォン」である。その意味で安心感がある。インピーダンスが高い値なので鳴らすのには多少苦労するかもしれないが、一度鳴らせる環境を手に入れてしまえば、手放せなくなるだろう。
現在では取り扱っている店も少なくなる一方で、売価はこなれてきている。今の値段であれば、是非ともお薦めしたい製品である。
追伸 画像は'audio fanzine'からお借りしてきました。僕が所有するDT770-80ohmの写真を撮りましたら、再編集して自前の画像と入れ替えます。すみません……。
porcupine6 拝