最近市場に出回っているサブウーファーは、ほとんどが正方形に近い箱型をしており、奥行きが長くとられているデザインになっている。良質の低音域を出そうとするのであれば、それは利に適った設計であると言える。
しかし、住宅事情や音楽を聴くスタイルから、奥行きのあるサブウーファーの筐体を設置するのが難しいケースも多々あるであろう。例えば、私の場合のように、仕事机の下に、椅子の出し入れを邪魔しないで設置したい場合、現状、選択肢は相当限られてくるのではないか。今、デスクトップ・ミュージックやニアフィールド・リスニングの環境を構築しようとすれば、低音域が不得手な小型スピーカーをチョイスしなければならない。
そこで、現代の音楽鑑賞のあり方において、このYAMAHAのYST-FSW100の存在は低音域の不足という小型スピーカーが抱える問題の改善に大いに役立つのではないだろうか。
狭い空間でのAV環境構築、特に薄型テレヴィとのマッチングを念頭にYAMAHAが開発したこのサブウーファーは、脚部を含む奥行外形寸法が157mmと極めて薄型である。サブウーファーでありながらこの奥行を実現するには音質を犠牲にしなければならないと思われる諸氏もおられるであろうが、YAMAHAは「アドバンスド・ヤマハ・アクティブサーボ・テクノロジーII」と「FD-Bassテクノロジー」を採用し音質面でも市場で競争力のある製品に仕立て上げている。また、市場希望小売価格が2万円という低廉な価格帯を設定してきたところに、YAMAHAの目の付け所の良さと販売戦略に感嘆せざるを得ない。
私はYST-FSW100をネットオークションで探して、購入するに至った。色は机上に設置しているJBL4312MIIと同系色のチェリーを運よく見つけ、手に入れることができた。仕事机やスピーカースタンドもウォールナット系の色なので色味的に統一感が出て良い感じの環境を構築できた。他にはブラックとシルヴァーがある。
ただし、奥行が短い分、やはり音質的には一枚割り引かなければならないだろう。音質面での過剰な期待は禁物である。だが、それを補って余りあるガジェットとしての魅力は十二分にあると言える。YST-FSW100が鳴っているのと鳴っていないのではやはり箱庭環境での音楽の魅力、ニアフィールドで音楽を聴くという愉しみにかなり大きく影響してくるのではないだろうか。
発売から今年で10年経つが、今の時代でこそ本格的に求められている一品と言ってよい。